週刊住宅

公開日:2016年9月5日

第88回 人工知能が仕事を奪う?

第88回 人工知能が仕事を奪う?
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生産性高い業務を強化

我々人類は、今後急激な進化の波にさらされると言われている。人工知能研究の世界的権威であり、現在GoogleでAI開発の総指揮を執っているレイ・カーツワイルは2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)が起こると予言している。

コンピュータが全人類の知能を超える地点のことだ。孫正義氏はその地点はもっと早く来ると言っている。これをホーキング博士のように悲観的に考える人もいるが、これまで人類はいつも進化によって生活を豊かにしてきたはずだ。前向きに捉えたい。(藤澤雅義) 

 

「10年後になくなる仕事」というものが以前話題になった。

野村総合研究所が発表した研究成果によると、今後10年から20年後には日本で働いている人の49%の職業が、機械や人工知能によって代替される可能性が高いというのだ。

特別な知識やスキルが求められない職業や、決められた作業をひたすら行うような職業については、機械や人工知能等で代替できる可能性が高い傾向にある一方、他の人間との交渉や協調が必要な職業というのは代替が難しい傾向にあるようだ。

 

人間が行う仕事の約半分が機械に奪われる−−−これは大変衝撃的な内容だが、当社の兄弟企業である管理会社、アートアベニューではまさにこの事象が起こった。

 

不動産管理会社では日々、客付業者から物件の空室確認の電話が頻繁にかかってくる。アートアベニューでは、この空室確認の電話応対を複数の派遣スタッフが対応しているのだが、今年の春から、機械による自動音声で空室確認を対応するシステムを導入した。機械がスタッフに代わって、営業時間外、定休日関わらず24時間いつでも空室確認の入電対応をしてくれるのだ。

 

そのシステムを導入した結果、客付業者からかかってくる電話のうち、約6割近くが機械の自動音声システムで削減することが出来た。残りの約4割の電話の内容は、空室確認以外の情報が知りたい場合などで、これらは機械による音声システムではなく、スタッフに電話が繋がる仕組みなのだが、この対応がなかなか難しい。

 

空室確認は機械による自動音声で対応出来ているのだから、スタッフへ直接かかってくる客付業者からの電話というのはそれ以外の内容、具体的には「募集条件の交渉」「審査結果の進捗確認」「類似物件の照会」といった内容が多くを占めるようになった。こういった内容の電話は、派遣スタッフの知識レベルだけでは対応出来にくい。

 

事実、業務を担当している派遣スタッフからは「かかってくる電話内容の難易度が上がって、業務が難しくなった」と音を上げている。まさに機械が人間の仕事を奪った瞬間である。

機械に仕事を奪われたスタッフは、電話対応以外の業務−−−例えば機械が自動音声対応した各物件の問い合わせ数、空室確認をしてきた客付業者情報、時間毎の反響分布などのデータを分析して、機械には出来ないリーシング活動をするといったような、単純作業以外のスキルを身につけるべきである。

 

我々不動産会社は、機械に仕事を奪われることを恐れるのではなく、より生産性の高い業務に注力していくために機械とうまく共存・活用し、時代の変化に柔軟に対応できる力を備え、新しいことにチャレンジしていくべきだろう。

(筆:原田亮/週刊住宅2016.09.05 掲載)


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