質問
管理戸数を増やすために、営業力を強化したいのですがなかなかうまくいきません。
どのようにしたら営業スタッフのモチベーションを高め、営業力を高めることができますか。
回答
営業力を上げるためには、「ロールプレイング」で営業スキルを測りましょう。
採点方式でスキルを「見える化」し、客観的にレベル診断することで自主的に「カイゼン」へと意識づけしやすくなります。
提案力と主体性を備えるロールプレイング
閑散期になると、繁忙期中に決めきれなかった、空室で困っているオーナーから空室対策や管理会社変更の相談が増える。オーナーとの接点が増え、管理戸数を増やすせっかくのチャンスだが、オーナーの望む「提案力」や「主体性」が営業スタッフに備わっていなければ、受託まで至らないことになる。
そこで営業スキルを高める必要があるのだが、当社では「ロールプレイング」という手法を取り入れている。ロールプレイングとは、接客やオーナーへのプレゼン
などの実践を想定して行う、いわば「実践型予行演習」であり、その内容は実際のプレゼンテーションと、終了後のフィードバック(アドバイス)に構成が分かれている。
通常、ベテランの先輩がお客様(オーナー)役で、経験の浅い後輩が営業スタッフという設定で行われる。このロールプレイングを実施する中で、成果を出すためには2つの大切なポイントがある。それは「事前準備」と「フィードバックの方法」である。
ヒアリングシートを作って事前準備をする
まず、現実性のあるロールプレイングでなければ、緊張感が生まれず、ただ時間を無駄に使うことになってしまう。営業機会を最大限成果に結びつけるための予行演習なのだから、事前準備こそ重要であり、それを怠ってはならない。
そこで現実性を持たせるために、「事前ヒアリングシート」(資料1)を作成して、営業マンは実際に提案をするオーナーの顧客情報を埋めていく。現状の問題点、改善しなければならない理由と背景、いつまでにその改善が必要かなど、現時点でわかっている内容を埋めていく。
ロールプレイングでは、オーナー役となる人に事前にこのシートに目を通してもらい、オーナーになりきって演じてもらう必要がある。これくらいの事前準備は、1時間程度あれば埋められるので必ず行う。
良いところを褒める潜在能力を引き出す
次に、ロールプレイング終了後のフィードバックの方法には特に気をつけなければならない。ベテランから見たら経験の浅い後輩は改善点ばかり目につくのは仕方ないが、そこばかりフォーカスしては自信をなくしてしまい、むしろ個性や伸びしろをなくしてしまうことになる。もっと良いところを見つけて伸ばすアドバイスがあったほうが、自信を持って本番にのぞめる。
そもそもロールプレイングは、営業スタッフのスキルアップのための教育であるのに、良いところも褒めず自信を喪失させては、本来ある潜在能力も引き出すことができないのだ。
改善点は具体的方法を一緒に考える
そこでフィードバックに活用したいのが、「チェックリスト」(資料2)である。これがあれば、ざっくりと感覚で伝えてしまいがちなフィードバックを、より具体的に説明するのに役立つ。プレゼンの内容、話の進め方、立居振舞いなど数十種類の項目を、5段階で採点できるようにして、できている部分とそうでないところを数値化する。さらに「良い点」と「改善点」をそれぞれ書き出して、1つずつ丁寧にフィードバックして理解を促す。
ここでのポイントは「良い点」をできるだけ見つけ出して、“褒めてあげる”ことである。伝える順序としては、①良い点を褒める→②改善点を伝える→③良い点を褒める、という順序で行う。誰しも自分自身を否定されることは、あまり気持ちの良いものではないが、このやり方であれば、認めてもらった喜びがある分、素直に改善点を飲み込んでもらうことができる。
また改善点においては、どうしたら良くなるのかという具体的方法を、ベテランの先輩が「一緒に考える姿勢」が重要だ。さらに、実際のプレゼンテーションをビデオカメラで撮影して、終了後に各自に見てもらうことも効果が高い。例えばゴルフのスイングの悪いところはいくら人に言われても、わかったようでわかっていないような感覚に陥る。しかし自分自身の姿を動画で見れば、言われている問題点が一発でわかる。人は他人からいろいろと「カイゼン」されるよりも、主体的に自分自身で気づきたいのだ。
このように、何となく行ってしまいがちなロールプレイングも、ちょっとした工夫で成果へと近づけることができるので、ぜひチャレンジをしてもらいたい。
今回のポイント
- 管理物件を受託するためには、営業スタッフのスキルとして、オーナーが望む「提案力」や「主体性」を備えられるように、実践型予行演習である「ロールプレイング」を取り入れるとよい。
- 「ロールプレイング」での設定は、ベテランの先輩がオーナー役で、経験の浅い後輩が営業スタッフになる。
- 実施前には、オーナーの情報、問題点、改善点などを記載した「事前ヒアリングシート」をオーナー役に見せて、オーナーになりきって演じてもらう。
- 実施後は、オーナー役がチェックリストに、プレゼンの内容、話の進め方、立居振舞いなど数十種類の項目を、5段階で数値化し、①良い点を褒める→②改善点を伝える→③良い点を褒める、という順序で行う。
(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2018.7月号掲載)