「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」
このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。
賃貸業界に近付く、完全オンライン契約の時代
22年5月に完全オンライン契約実現 デジタル改革関連法成立 社会実験の停滞が課題
不動産取引における完全オンライン契約がついに実現する。12日に国会で「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」(以下、デジタル改革関連法)が成立、その中には宅地建物取引業法の改正も含まれる。重説・契約の電子交付が可能となり、賃貸ビジネスにおいても契約業務のデジタル化が急激に進む可能性がある一方、社会実験の件数が伸び悩み、電子契約書の交付要件が定めにくい状況だ。
(全国賃貸住宅新聞 2021年5月24日より抜粋)
電子契約の動向に注目集まる
皆さんこんにちは。コンサルタントの山城です。
デジタル庁の設立が決まり、5月12日には国会で「デジタル改革関連法案」が可決しました。不動産業界では電子契約に向けた今後の変化にますます目が離せないですね。
記事にもありますが、賃貸仲介で2017年からIT重説の本格運用が始まり、2021年までに電子契約の社会実験が3回にわたって実施されています。
ですが、うち2回の社会実験はそもそも充分なサンプルが集まらないという結果に。
その理由は、「契約書の印刷」「事前の書面交付」といったアナログ業務が残ったままの電子契約が、不動産会社にとって非常に負担だったためです。電子契約は契約業務の効率化と高速化を叶えるための方法ですが、現行の社会実験の方法ではかえって手間のかかるものになっていたのです。
また、2019年当時は電子契約を希望する消費者ニーズ自体がそこまで高くなかったことも、サンプル数が伸び悩んでいる原因の一つと考えられます。
しかし最近は、コロナ禍の長期化で消費者ニーズに変化が見られ、良くも悪くも非対面を求める声が拡大しました。そして消費者ニーズに押し上げられる形で、賃貸業界のデジタル化が思いがけず加速する事態となっています。去年の4月以降、非対面接客や電子契約のツールを導入したという企業も多いのではないでしょうか。
まだまだ課題の残る電子契約ですが、今後急速に普及していくことも考えられます。これからの動向を注意深く追っていきたいものですね。
定期借家契約の完全電子化に道筋
また、デジタル改革関連法の成立で個人的に嬉しかったのは、「定期借家契約」についても電子契約の利用解禁がほぼ確実になった点です。
私が以前勤務していた管理会社もそうですし、兄弟会社のアートアベニューに至っては定期借家契約を全面的に取り入れています。身近であり、かつメリットも多い定期借家契約が電子化され、今より便利になるのは非常に楽しみです。
さらに「38条2項」の再契約に関する項目についても気になっていましたが、こちらも無事電子化されたようで一安心ですね。
というのも、これまでの定期借家契約では、再契約のたびに入居者に毎回事務所に来てもらって手続きを行なう必要があったからです。この対面処理の手間を減らせるのは管理会社としても朗報でしょう。
電子化で利便性が増せば、定期借家契約を新たに取り入れる企業も増えることでしょう。
普通借家契約と比べて、不良借家人からほかの入居者の住環境や物件を保護しやすいなどのメリットもありますので、実現化すれば賃貸業界全体の健全化にも繋がるのではないかと思います。
余談ですが、私としては定期借家契約とは別に「管理委託契約」も電子化してほしいところ。ただ、ご存じのとおり、こちらは賃貸住宅管理業法が成立したばかり。電子化にはもう少し時間がかかりそうですね。
電子化の流れは今後も加速
賃貸業界では、依然としてさまざまな契約が紙媒体で締結されています。伸び代は充分ですので、現存の契約からペーパーレス化を実現できれば、印刷費用の削減にはじまり、税金対策や業務の効率化を一挙に進めることができるでしょう。
この先、賃貸業界に電子契約が浸透していくと、入居申込みの電子化(オンライン化)も当たり前になることが予想されます。さらには申込みから契約までをワンストップでできるプラットフォームや、便利なデジタルツールも急速に普及するかもしれません。
そうなれば管理会社の社内からは紙が消え、パソコン一台で仕事ができるようになり、業務負荷も軽減されるでしょう。オーナーに対しても今より手厚い対応が可能になるかもしれません。そんな未来が早く来てくれると良いですね。