「高家賃&高稼働率」を叶える防音マンション
YouTuber向け賃貸としても好評
防音マンションのミュージションシリーズを展開するリブラン(東京都板橋区)では、防音性を強化した配信者向け物件の入居者募集を2021年9月に開始し、2ヶ月で満室となった。同社で調査し家賃は周辺相場より3割高いと判断した12万8500円〜〜19万4000円で設定。
(全国賃貸住宅新聞2022年4月18日発行分より)
「防音性の高さ」が未来のスタンダードに?
皆さんこんにちは。コンサルタントの山城です。
最近はYouTuber向け賃貸が好調ということですが、上記の全賃新聞でも、株式会社リブランの防音マンション「ミュージション」が大きく取り上げられていました。
コロナ禍を機にテレワークが普及した今、賃貸住宅の「防音性」は業界で最も注目されているポイントだと私は感じています。
ご存じのとおり、騒音クレームはコロナ前に比べて格段に多くなっています。落ち着いた静かな環境を求めて郊外に移住する入居者も増えてきていますよね。
私自身、最近引っ越しをする機会があったのですが、内見時に重視したのはやはり防音性でした。当社でも在宅ワークが当たり前になってきているので、自宅にはしっかりと集中できる環境が欲しかったのです。
しかしそうなると、住民の話し声や物音、ドアや折れ戸収納の開閉音など、生活騒音が響きやすい木造アパートでは満足できません。家賃が多少高くても、RC造など防音性能を備えた物件がメインの選択肢となってきます。
そしてこの心理こそ、今の賃貸市場における防音ニーズのカラクリでしょう。「どこに住むか」よりも、「借りた部屋で何をするか」に価値が置かれたとき、仕事をするにしても楽器を弾くにしても、まずクリアしたい条件として「防音」が挙がってくるのです。
ですが一方で、個人的にはこの「防音性が高ければ安泰」みたいな状況が今後も長く続く…とは言えないかもしれないな、と最近ちょっと思っています。
なぜなら、集合住宅でも戸建でも、最近の新築物件においては「防音性の高さ」がもはやスタンダードになりつつあるからです。防音性に優れた住宅が多くなると、入居者にとって一定の防音性能が確保されていることは「当たり前のこと」になってきますよね。
すると防音性能は、アピールポイントではなく、むしろ入居の最低条件になってきます。今後も壁の薄い建物が嫌われるのはもちろんですが、優れた防音性能を備える物件でも今のような大きな反響は望めなくなるかもしれません。
オーナーに通りにくい防音リフォーム提案
このように新築物件で防音性の高さがスタンダードになっていくと、既存物件でもリーシングのテコ入れのため防音性を高める動きが加速していくと予想されます。
しかし、既存物件で防音性を高めようとしても、なかなか難しいですよね。そもそも防音性能の大部分は建築時に決まってしまいます。そのため、既存物件では限られた伸びしろの中でリフォームすることになるのですが、工事には相当のコストが必要になってきます。
コストが高くなると、たとえオーナーに防音対策の提案をしたとしても「予算的に難しい」と断られる可能性は高くなってしまいます。皆さんもご経験があるかもしれませんが、見積書の金額を見て、頑なに首を縦に振らないオーナーはいっぱいいるものですよね。
そうなると、いつまで経っても防音リフォームはできず、やがて入居者も離れていき、競合物件にはどんどん差を付けられることになります。問題の原因がわかっているにもかかわらずです。
管理会社負担で「騒音問題」解決を図るのも手
もちろん、ここで上手にオーナーを説得し、賃貸経営を助けていくのが管理会社の腕の見せ所。しかし、現実はそう上手くはいきません。そればかりか、たび重なる騒音クレームに追われるスタッフの方も多いのではないでしょうか。入居者対応で日々忙殺されていると、とてもオーナーに会って難しい提案するのは現実的ではないですよね。
そこで別のアプローチとして、いっそのこと管理会社でその騒音問題を買い取ってみてはいかがでしょうか。
そう、買い取りです。オーナーが動かないことで問題が解決せず、管理会社の皆さんばかりが苦労する=余計な管理コストを払い続ける状況が続くのなら、思い切って管理会社で問題を買い取ってしまい、管理会社主導で問題を解決するという発想もできるはずです。
具体的には、管理会社がリフォーム費用を立て替えて防音対策をしてもいいですし、部屋を借り上げて防音リフォームをした後に転貸するでもいいと思います。
ほかにも、管理会社が賃貸用の防音商品の代理店になり、商品を入居者にレンタルすることで騒音問題を解決しながら利益を上げることもできるかもしれません。
騒音問題が長引くと管理コストはかさむ一方です。オーナーへの提案が通らないことで稼働率が上がらなかったり、騒音問題に悩んだりするのであれば、思い切って賃貸経営への関わり方そのものを変えてみるのもひとつでしょう。