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公開日:2022年3月25日

外泊で家賃が下がる、ホテルライクな賃貸住宅。東急の「リレントレジデンス」とは?

外泊で家賃が下がる、ホテルライクな賃貸住宅。東急の「リレントレジデンス」とは?
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多様性の時代を捉えた「新たな賃貸住宅」

外出時はホテルに転用、第2弾は押上

東急(株)は16日に、多拠点生活者向け賃貸住宅「Re-rent Residence 押上」(東京都墨田区、総戸数8戸)を開業する。

「Re-rent Residence」とは、入居者が外泊時に自身の部屋をホテルとして貸し出すことにより、その日数に応じて賃料の支払いが割引される「リレント機能」を持つ賃貸住宅。入居者は浮いた家賃でほかの場所での居住・宿泊が可能となる。

入居者が外泊する際は、自己所有物を鍵付き収納に保管。運営スタッフが清掃を行なった上で、部屋を貸し出す。宿泊者は通常のホテル同様に宿泊ができる。運営は(株)Unitoが行なう。2021年6月に賃貸を開始した初弾の「Re-rent Residence渋谷」は募集6部屋に対し32件の問い合わせがあった。

なお第2弾物件は、物件オーナーから賃貸住宅・ホテルアセットを借り上げ、物件オーナーに安定家賃保証、空室保証を提供するサブリース事業による形態で出店する。「押上」は、東武鉄道伊勢崎線「とうきょうスカイツリー」駅徒歩4分に立地。募集室数は8室。専有面積は19~20平方メートル。賃料は11万2,000円~。外泊1日につき3,000円が割引される(1月当たりの割引上限4万5,000円)。

最新不動産ニュースサイト「R.E.port」2022年3月15日掲載記事より)

コロナ禍で後押し、住まいの多拠点化ニーズ

皆さんこんにちは。コンサルタントの引地です。

新型コロナウイルスが流行し始めてから早2年、私たちを取り巻く環境や常識が大きく変わってきています。

外出自粛要請やまん延防止措置で窮屈な生活を余儀なくされた一方、多くの企業がテレワークを通じて「会社にいなくても仕事ができてしまう」ことに気づけたのは、コロナ禍の唯一の利点だったかもしれません。

弊社でも、テレワークに加えてフレックス制度の導入もあり、働き方がますます変化してきています。世間でも、働く場所も時間も自分で自由に決められるようになったことから、「住居」に関しても一拠点である必要がないという方も少しずつ増え始めているようです。

 

こうした時代の変化もあり、東急株式会社が手掛けた多拠点生活者向け賃貸住宅「リレントレジデンス」(Re-rent Residence)のニュースはとても興味深いものでした。このリレントレジデンスとは一体どういう賃貸なのか、多様性の時代を捉えた新しい物件の貸し方について見ていきます。

リレントレジデンスとは?

リレントレジデンスは「家賃減額制」を取り入れた賃貸住宅で、入居者が外泊で留守にすると、家を空けた日数分だけ家賃が減額される「リレント」という料金システムを導入しています。外泊中は運営会社や施設側が室内清掃を行ない、ホテルとして短期宿泊客に貸し出します。

同物件は家具家電付きで、ホテルと同様にタオルやボディソープ類などのアメニティも充実しているとのこと。また、Wi-Fiや水道・電気も別途固定料金を支払うことで利用できるシステムらしく、つまり、そもそも主契約者(賃借人)からして「ホテルライクな暮らし」ができる賃貸住宅となっているわけですね。

そして、だからこそ「主契約者の外泊による空き部屋」を、運営業者はさほどの手間なく「ホテルとしての貸し出し」へと回せるのでしょう。

主契約者は必要最小限の荷物で入居し、ホテルライクな暮らしを楽しみ、別拠点に外泊する際は誰かに貸し出して家賃を下げる。自分の荷物は鍵付きロッカーに収納しておくだけでいいようです。拠点維持費を「リレント」で節約しつつ、好立地の物件で気軽に多拠点生活を満喫できる、新しいかたちの賃貸住宅です。

低迷するホテル業界と賃貸住宅の共生

昨今では新型コロナウイルスの蔓延により、マンスリープランを開始するホテルも増えてきました。かの有名な帝国ホテルでも「HOTELiving」(ホテルに住まう)という発想で客室を使ったサービスアパートメントの提供を始めたりと、ホテルと賃貸住宅の垣根が曖昧になってきています。

しかし、収益面ではまだまだ課題があるようで、ホテルのマンスリープランの場合、1名集客できれば、1ヶ月分の月間稼働率は100%を維持できるものの、客室平均単価は極限まで下げる必要が出てきます。

 

それに対してリレントレジデンスでは、1ヶ月に平均22日滞在(居住)の長期利用者を集客することで稼働率のベースを担保。長期利用者が外出する際は、宿泊費を1泊あたりの金額に上げて短期宿泊者を集客することで客室平均単価も担保でき、おおよその稼働率を85%程度で維持できるとしています。

リレントで短期宿泊客へ貸し出しできる最大の日数は、民泊新法で規定されている年間180日以内(自治体により異なる)です。実際、ホテル利用希望者の集客は、公式サイト(unito:https://start.unito.life/)のほか、一般的な民泊事業と同様に民泊検索サイト等でも行なうようです。

その一方で、リレントレジデンスのサイトを訪れた約88%が、並行してSUUMOやLIFULLといった賃貸物件検索サイトを閲覧しており、リレントレジデンスが賃貸住宅としても認知されていることが分かります。まさにホテル・民泊事業・賃貸住宅がかけ合わさったハイブリッドなビジネスモデルと言えるでしょう。

押上はサブリースで。「リレント」でリスク低減

今回、東急株式会社と株式会社unitoの共同事業となる「Re-rent Residence 押上」は、空室保証を提供するサブリース事業として展開されます。

サブリースで物件を借り上げる点はOYO LIFEのビジネスモデルと近い部分がありますが、OYO LIFEが短期滞在ユーザー(旅行客など)をターゲットに借り上げを行ない、コロナ禍による旅行客の激減によって大きな痛手を負った一方、リレントレジデンスは居住+宿泊という仕組みによって半月の賃料を確保し、保証賃料との「逆ザヤ」になるリスクを抑えます。

実際に「Re-rent Residence 押上」の賃料を試算してみると下記のように考えられます。

【Re-rent Residence 押上】

  • Aタイプ:19.09㎡(1K・バストイレ別)112,000円
  • リレント可能日数15日(1泊当たりの割引額3,000円)

112,000円 –(3,000円×15日)= 67,000円

※家賃収入として上記金額を毎月確保できる。

押上の一般賃貸住宅の家賃相場は「20㎡以下、バストイレ別」のマンションタイプで85,000円〜90,000円ほど。このエリアで通常の賃貸物件として90%で借上げた場合、家賃保証される金額は76,500円〜81,000円ほどとなります。

通常の賃貸住宅としての家賃保証額より9,000円〜14,000円ほど低い金額ですが、リレントの宿泊代を1日当たりの賃料より高く設定すれば差額も補えますので、サブリースでの破綻リスクは抑えられそうです。

 

とはいえ、これまでの住まい選びや賃貸住宅の常識とは違った新しい仕組みのため、シェア拡大を期待する反面、今後の利用者のニーズや動向には注目でしょう

多様性に富んだ現代では、住まいを最適化・合理化できるリレントの仕組みは大変魅力的で、とても面白く、興味深いものです。しかし、賃貸管理会社がいきなり方向転換をして、自由な発想で新しいモノを生み出したり提供したりということはなかなか難しく、課題も多いでしょう。

しかし、現代のニーズを研究して、小さな取り組みでも何か“面白いコト”にチャレンジしていくことは、新たな価値を生み出すきっかけにもなるかもしれません。私たちも固定概念に捉われず、柔軟なサービスや商品を提供できようにしていきたいですね。


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