収益アップを目指すなら、まず基盤づくりから
企業の成果は「従業員のモチベーション」に比例する
近年、異業種からの参入が相次ぎ、ますます競争が激化している賃貸管理業界。着実に収益アップを図るための競争戦略として5つのステップをご紹介していますが、今回、深掘りするのは①「モチベーションを高める」について。
《収益アップの5つのステップ》
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「企業は人なり」という格言があるように、企業の主体はやはり従業員です。実際にサービスを提供する従業員の意欲が充実していなければ、企業も期待以上の業績は得られないでしょう。従業員のモチベーションが高く、自ら進んで「仕事をしたい」と思えるようなマネジメントがあってこそ、顧客の満足、ひいては企業の成果が見えてきます。
「従業員満足度」が与える会社への影響
そうした従業員のモチベーションを表す考え方のひとつとして、「従業員満足度」(ES:Employee Satisfaction)があります。従業員満足度とは、仕事内容をはじめ、福利厚生や職場環境などに従業員がどれだけ満足しているか、あるいは不満かを表す指標です。
従業員満足度はスタッフ一人ひとりの状態を表すものですが、それが高まることで会社全体にもプラスの影響が広がり、サービス品質の安定化・生産性の向上・離職率の低下といった企業メリットに結び付くと言われています。確かに、従業員が元気でやる気があれば、会社の雰囲気も売上も上向いていきそうな気がしますよね。
逆に従業員満足度の低下は、スタッフ個人の問題を超え、会社全体のサービスにもリスクをもたらすことが知られています。
《低い従業員満足度によるリスク》
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このように従業員満足度が下がってしまうと、めぐりめぐって経営そのものを揺るがす大問題へとつながっていきます。「結局は一人ひとりの気持ちの持ちようだ」などと自己責任で終わらせず、会社全体で従業員のモチベーションアップを図る姿勢が大切です。
では、実際に何をすれば良いのでしょうか。
ここではモチベーションアップに必要な5つの施策について解説していきます。
モチベーションアップに必要な5つの施策
会社の目標・方向性を共有する
従業員のモチベーションを高める際、まず基本となるのが「何をがんばればいいのか」会社として力を注ぐべき業務を明らかにすることです。いくらモチベーションを高めようにも、がんばる対象が不透明だと従業員は努力のしようがありませんよね。
会社の将来像を従業員に示すためには、「会社がどのような目標を掲げているのか」「具体的にどうなりたいのか」経営理念や経営方針と呼ばれるものを分かりやすく言語化し、従業員と共有することが必要です。会社の代表者が、会社の目指す方向についてのメッセージを社内外に発信できるとより効果的です。会社の目標が明らかになれば、従業員にとっても、自分の業務が何の役に立っているのか、どのような意味があるのかが分かるようになり、仕事へのやりがいも感じやすくなるでしょう。
「会社の目標・方向性を共有する」例一覧
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会社としての方向性が定まれば、従業員にとっても、どの業務に注力すべきか優先順位が見えてきます。優先順位が低く、社員のモチベーション低下につながりそうな業務については、必要に応じてアウトソーシングし、社内体制を整えるのも選択肢のひとつです。
従業員が納得できる人事評価をする
会社として目指す方向が固まれば、その方向に沿った人事評価制度を設けることが大切です。目標に対して従業員それぞれがどのくらい貢献しているか、という視点で人事評価を行ない、昇格や昇給に反映していきます。業務に対する評価が明確であれば、評価に対する従業員の納得感も高まり、不満も生まれにくいでしょう。
また、人事評価制度が明確であれば、立場ごとに従業員に求められる能力やスキルも明らかになります。「昇格するにはこの資格を取らなければならない」とか、「次の役職に必要なスキルはこれだ」というように、従業員に具体的なキャリアプランを提示できればモチベーションは一層高まるでしょう。
「従業員が納得できる人事評価をする」例一覧
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従業員の待遇を見直す
人事評価制度が固まれば、従業員の「待遇改善」にも目を向けたいものです。とりわけ給料の見直しは、改善すべき待遇の最たるものと言えるでしょう。
大多数の従業員は生活の糧を稼ぐために働いている以上、会社に貢献したものの、その大前提が叶えられないようでは転職も時間の問題。あたり前のことですが、基本給を上げる、残業代を適切に支払うといった、待遇改善の基本をしっかりと押さえることが重要です。
また、給料見直しと合わせて検討したいのが、長時間労働の見直しと有給休暇の取得促進。給料を上げたとしても、従業員にいつまでも激務を強いる職場環境では、モチベーションも体力も長続きしないですよね。人員を増やしたり、アウトソーシングを活用したりして業務改善を行ない、従業員の負担軽減を図ることも必要です。
「従業員の待遇を見直す」例一覧
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業務に付加価値を持たせる
従業員が給与という対価を求めて働くことは前述の通りです。ですが、人が働く理由はそれだけではありません。仕事を通して得られる充実感や満足感も、モチベーションアップには無視できないポイントです。
そこで考えたいのが、従業員一人ひとりの業務に付加価値を持たせる取り組みです。
例えば、オーナーへの貢献度の可視化は従業員にとっても意味があります。日々の管理業がオーナーの賃貸経営にどう貢献できているかがひと目で分かれば、従業員の業務にも張りが生まれるでしょう。オーナーにアンケートを配って、業務の改善点だけでなく、感謝の声を拾ってみるのも一案です。
また、地域社会とは切っても切れない賃貸管理だけに、自社の売上だけでなく、地域の課題解決に目を向けるのもいいかもしれません。行政と協力して空き家問題に取り組んだり、地元商店街と連携したキャンペーンを打ち出したりと、外に目を向ければ可能性は無限大。管理会社の中には、企業として「まちづくり」を目標に掲げている企業もありますので、各社の先進的な取り組みをマネしてみるのもいいでしょう。
そのほか、「陰に隠れがちな個人・チームの努力」を表彰する社内表彰制度の取り組みも、従業員のモチベーションアップに役立ちます。事務や総務など普段のがんばりが見えにくい職種にも光を当てられれば、従業員同士の理解も深まり、職場の風通しもいっそう良くなるかもしれませんね。
「業務に付加価値をつける」例一覧
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社内コミュニケーションを活性化する
従業員のモチベーションは、従業員を取り巻く社内環境も大きく影響します。人間関係を理由とした離職は、どの業界でも珍しくないですよね。
そこで検討したいのが、社内コミュニケーションを活性化するための社内イベントの実施です。社内の飲み会やレクリエーション、社員旅行などを企画して、従業員同士が交流を深めやすい機会をつくってあげるのです。
ただし、注意したいのは、そうした社内イベントを嫌う従業員もいるということ。催し自体は楽しくても、企画者側が「業務後の飲み会に無理やりつき合わせる」「休日のイベントに強制参加させる」といった姿勢では、かえって従業員の心は離れていってしまうでしょう。企画の際は、「業務の一部であり参加必須のイベント」と「参加自由のイベント」とをきちんと分けて考えるとともに、参加自由としたイベントは「参加しなくてもいい」という選択を従業員が選びやすいように工夫し、従業員の自由意思を尊重できるようにしたいものです。
そういう当社でも、従業員同士の交流機会を増やすため、社内に部活動制度を設けています。部活動への参加・立ち上げは従業員の判断に委ねており、会社としては部費を援助するだけ。今では、ゴルフ部、映画部、お笑い部、日本酒部、ワイン部、スイーツ部などなど、多くの部活動が活動しており、従業員の横のつながりを強めるのに一役買っています。
「社内コミュニケーションを活性化する」例一覧
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繰り返しになりますが、「企業は人なり」です。従業員のモチベーションに気を配り、社内で一致団結して収益アップを目指していきましょう。