ニュースにヒトコト

公開日:2021年6月18日

「残置物の処理等に関するモデル契約条項」発表! 賃貸住宅の高齢者受け入れの後押しとなるか

「残置物の処理等に関するモデル契約条項」発表! 賃貸住宅の高齢者受け入れの後押しとなるか
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「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」

このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。

「受任者」を設定して処理を円滑化。国交省と法務省が示した「万一の備え」

2021年6月7日 残置物が円滑に処理できる契約条項が策定

単身高齢者の居住の安定確保を図る観点から、国土交通省及び法務省において、死後事務委任契約を締結する方法について検討を行い、単身高齢者の死亡後に、契約関係及び残置物を円滑に処理できるように「残置物の処理等に関するモデル契約条項」(ひな形)を策定しました。

 

(国土交通省報道発表資料 残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定についてより抜粋)

単身高齢者の「部屋の借りにくさ」解消を目指す

皆さんこんにちは。コンサルタントの萩原です。

2021年6月7日、国土交通省から「残置物の処理等に関するモデル契約条項(ひな形)の策定」が発表されましたね。

少子高齢化を見据えた入居者確保策として、高齢者へのターゲット拡大を狙っているオーナー・管理会社にとっては、大きな助けとなり得る発表だったのではないでしょうか。

 

今回のモデル条項策定の目的は、単身高齢者の賃貸住宅入居の難易度を下げることにあります。

賃借人が死亡した場合に備えて、あらかじめ契約で「受任者」という役割を定めておくことで、万一の際の「賃貸借契約の解除」や「残置物の廃棄や処理」を円滑に進められるようにするのです。

残置物リスクを軽減し、賃貸用建物の所有者の不安感を払拭できれば、賃貸住宅への入居を断られがちな単身高齢者の受け入れ先増加も期待できます。

 

背景には、今後の単身高齢者増加の問題があります。

65才以上の単独世帯数は少なくとも2040年まで増加傾向とされ、65歳以上の4人に1人は独居になると予測されています(内閣府・高齢社会白書)。

実は、単身高齢者の住居確保・部屋の借りにくさの解消は喫緊の課題なのです。

65歳以上の一人暮らしの者の動向

手続きの負担を軽減!管理会社が受任者となれれば単身高齢者受け入れもスムーズに

通常、賃借人が死亡すると、賃借権や残置物の所有権は相続人に承継されます。

しかし、その相続人の有無や所在が分からない、連絡を全く取ることができないとなると、途端に面倒なことになります。相続人不在では、契約自体の解除や残置物の処理が進められなくなってしまうからです。

 

賃貸人としては、勝手に荷物撤去や原状回復工事をするわけにもいかない以上、次の募集活動ができない状況に陥ってしまいますよね。

家庭裁判所の相続財産管理人に依頼し、弁護士を通じて明渡訴訟・強制執行を進めるのが正規の流れですが、時間的にも費用的にも大きな痛手。結果的に、これまでは単身高齢者の受け入れに対して賃貸人が躊躇したり、管理会社が審査基準を厳しくしたりするケースが出てきてしまっていました。

 

しかし、今回のモデル条項を採用し、あらかじめ「受任者」の設定を行なうことができれば、こうした不安をある程度軽減できるようになります。

賃借人死亡後の処理が「受任者」のおかげでスムーズに進行し、早期のリーシング再開が叶うのであれば、高齢者受け入れのリスクがひとつ解消されるからです。

受任者になれるのは「推定相続人、もしくは居住支援法人や居住支援を行う社会福祉法人のような第三者が望ましい」とされていますが、管理会社が受任者になれる可能性もあり、そうなれば万一の際も管理会社主導で案件を進行できます。審査やリーシングにおいても、高齢者の扱いを変えられるのではないでしょうか。

⇒ 参考:残置物の処理等に関する契約の活用手引き

実務で運用を始めるにはややハードルを感じる部分も。

ただし、今回のモデル条項、懸念材料がまったくないわけでもないでしょう。たとえば…、

  • 受任者の第一候補は推定相続人とされているが、個人の保証人がはっきりしている場合には使えないとなっており、選定の基準が少しむずかしい。
  • 受任者は財産について3ヶ月の保管を推奨されているが、量によってはそのスペースの確保が必要となり、期間も長め。
  • 契約時に委任者(高齢者)に死亡時に残したい財産、破棄していい財産を選んでもらうということが人情的にできるのか。また、仮に選んでもらえるとしても、方法として示されている「破棄してほしくない物のリスト作成」「指標(シール)貼付」「特定の金庫に入れる」などが高齢者に実施できるのか。もし該当の単身高齢者が80才だとしたら?

…などなど、実務を考えるとところどころツッコミどころが見つかります。

それでも、今回の条項によって、賃貸人や管理会社の不安が解消され、今後の単身高齢者受け入れの第一歩となることは期待できるところでしょう。

上記の懸念点は運用でカバーできる部分もおおいにあります。まずは今回の件を機に高齢者に対する向き合い方の意識を変え、条項活用の中で工夫を凝らしながら、高齢者入居対策をより良いものへと進化させていきましょう。

今回のヒトコトはこの人・・・


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