ニュースにヒトコト

公開日:2021年6月25日

民法改正から1年。賃貸住宅の設備トラブルの「家賃減額」はどう変わった? これからの影響と対策を考える

民法改正から1年。賃貸住宅の設備トラブルの「家賃減額」はどう変わった? これからの影響と対策を考える
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「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」

このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。

家賃減額の規定は「請求できる」から「減額される」へ

民法改正から1年、設備故障対応の実態は?

2020年4月1日に改正民法が施行されてから1年がたった。改正内容の中でも賃貸住宅ビジネスに関連する改正として注目を集めたうちの一つが、設備故障などにともなう家賃減額の規定だ。実際の管理会社の対応事例とともに、家賃減額の予防になるような設備延長保証サービスの情報も伝えていく。

 

全国賃貸住宅新聞 2021年6月21日より抜粋)

「家賃が減額される」影響はまだ拡大傾向。不具合を起こさない賃貸経営を。

皆さんこんにちは。コンサルタントの山城です。

改正民法が施行されてから1年以上が経過しましたね。全賃新聞でも特集記事が組まれましたが、皆さん読まれましたか? 管理会社にとって設備トラブルは日常茶飯事。賃料減額の要求に発展することもしばしばです。

 

ご存じのとおり、民法改正で設備不具合における賃料減額請求が「請求できる」から「減額される」に変わりました。ただし、現状ではこの意味を理解している入居者はあまり多くないでしょう。

全賃新聞の調査でも、減額要求の発生率は0.04%とのことでした。あまり高い数字でないのは、まだこの改正点の認知度が高くないためだと思われます。

しかしこの先、認知が上がり、「基準に該当すれば当然に減額される」ことが世間に知れわたるにつれ、相談・要望の件数は増えていくはずです。数字の低さにホッとするのはまだ早いでしょう。

減額要求の増加は「交渉が難しい案件」を増やすことに

もちろん、改正がよくなかったと言うつもりはありません。

今回のことを機に、減額の基準となるガイドラインを日本賃貸住宅管理協会が作成してくれたことで、今までより減額を要求するトラブルは交渉しやすくなりました。信頼できる協会が示しているガイドラインだけに、入居者から減額金額に納得いただける案件も多くなったと思います。

 

一方で、設備トラブルは大きく炎上するケースも存在します。

ひとたび炎上すると、ガイドラインに沿った対応だけでは交渉が難航することも考えられますよね。これからは家賃減額要求の件数自体が増える可能性があるわけですから、交渉が難しくなる件数もますます増えるはずです。

そこで管理会社が考えなければならないのは、家賃減額を要求されるような「設備不具合を予防すること」

家賃減額を要求される件数が多くなると、交渉が難航するケースも自然と増えていきます。そして、交渉が難しい案件が増えると、スタッフはそれだけ対応に手を取られることに。

さらに炎上となると、巻き込まれるスタッフが消費する時間や精神的な疲労は相当なものになるでしょう。スタッフを守るためにも、家賃減額に発展させない「予防保全」の意識を持つことが大切です。

夏場のエアコン故障。入居者対応で疲れ切った思い出

私自身、沖縄で管理業務に携わっていましたが、夏場にエアコンの不具合が発生したときは、その対応で時間も精神も大いにすり減らしたことがありました。

猛暑のなか、お部屋のエアコンが使えなくなってしまうと地獄ですよね。それが沖縄だとなおさらです。なにしろ気温35度以上が当たり前のように続くわけですから。しかも、暑い時期ほどエアコン業者はオンシーズン。予定が詰まっているため、依頼しても交換までにかなりの時間を要してしまいます。

 

そのときも業者対手配には最低2週間はかかるとのこと。入居者は怒り心頭です。なんとか入居者をなだめようと、私が手に取ったのは「扇風機」でした。それを車に載せて、入居者宅までひとっ走り。

ですが、もちろん気休めにしかなりません。「申し訳ありません!どうかこれで!」と扇風機を差し出したものの、汗びっしょりの入居者は「これじゃ意味ねーよ!」「暑すぎて寝れないんだよ!」と火が付いたような怒りよう。

結局、問題が落ち着くまでかなりの時間がかかってしまいました。

まあ、管理会社あるあるですよね(笑)

こんなふうに問題が炎上すると、ガイドラインにある家賃減額の基準では、入居者に納得してもらえないケースも出てきてしまいます。

また、無理に鎮火させようとすると、お部屋の解約や、管理の対応が悪いなどの悪評が立ってしまう恐れもあります。私の経験したエアコン騒動でも、結局は「ガイドラインよりもけっこう多い額」をオーナーにお支払いしてもらう結果となりました。

こうした設備トラブルの泥沼化を避けるためにも、管理会社はいま以上に、オーナーに対して劣化設備の交換提案を行なうべきです。不具合が発生すればオーナーも減額請求を受ける可能性が高く、管理会社としても大きくリソースを消費してしまいます。

 

そこで予防策として、あらかじめ社内で設備ごとの「交換提案年数」を決めて、その年数を超えた設備は積極的にオーナーに交換を提案しなければならない、という社内ルールを作るのはいかがでしょうか。

たとえば、エアコンだと、10年経過しているものは遅かれ早かれ不具合が起きてしまいますよね。であれば、「10年経過したエアコンで不具合が起こった際は、それがどんな軽微な不具合であれ一度オーナーに交換を提案する」という社内ルールを設けてしまうのです。

ルールを定めれば、たとえ新入社員であっても交換の判断・提案ができるようになります。管理物件から老朽設備を減らし、設備トラブルのリスクを低減できるようになるのです。

連絡手段の工夫で不具合をスピード解決

2つ目の予防策は、オーナーとのコミュニケーションを円滑にする「仕組み」を考えることです。

ガイドラインに準拠するなら、減額するか否かのカギは「免責期間」です。設備不具合が起ころうと、修理までの時間を短時間に押さえることができれば「十分に短時間で対処をした/減額する必要はない」と主張しやすくなるからです。

だからこそ、「オーナーと連絡がつかない」という理由で修繕ができず、免責期間を超えてしまうのはもったいないことです。電話やメールだけでなく、SNSやアプリなど、オーナーと連絡が取りやすいコミュニケーションツールを導入し、すぐに承諾をとれる環境を整えることは、すべてにおける前提条件でしょう。

決裁をもらうスピードを上げることができれば、入居者に不便をかけることなく対応を終えることができるはずです。

管理会社が独自対応できる「○万円ルール」

予防策として最後に紹介したいのが、一定額の修理を管理会社判断で進められるようオーナーと取り決めてしまう「〇万円ルール」の活用です。

前段でもお伝えした通り、設備トラブルが起きたときボトルネックとなりがちなのが「オーナーの承諾」というステップです。そこで、修繕費が事前に設定した金額内におさまる場合は、オーナーの許可を待たずに管理会社が独自判断で業者を手配できるというルールを、オーナーと取り決めてしまうのです。

小さな修繕すべてについてオーナーの承諾を取っていては、業務が煩雑になりすぎますし、案件一つひとつの対応時間も長くなってしまいます。またオーナーとしても、支出はきちんとコントロールしたいと考える一方で、「いちいち承諾しなきゃいけなくて面倒くさい」という不満を抱えがちです。

 

それならいっそのこと、管理委託契約のなか等で一定額までの決裁を管理会社ができるよう取り決めてしまいましょう。きちんとオーナーに説明し、メリットを伝えれば、意外とOKがもらえるものです。

少額修繕の決裁権を管理会社が持っていれば、設備トラブルにも速やかに対処できますので、トラブルが炎上しにくくなったり、交換などの予防策を講じやすくなります。

賃料減額請求が発生しないように管理会社でもコントロールできることはあります。ただでさえ忙しい管理業を円滑に進めるためにも、設備不具合の予防をこれまで以上に意識してみてはいかがでしょうか。


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