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公開日:2021年12月24日

驚きの賃貸住宅。IKEA「10㎡賃貸」から学ぶ“狭小物件”の空室対策

驚きの賃貸住宅。IKEA「10㎡賃貸」から学ぶ“狭小物件”の空室対策
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IKEAが入居者募集、家賃99円の家具・家電付き賃貸物件

狭小住宅での快適な暮らし方を提案

家具量販店「IKEA(イケア)」を運営するイケア(スウェーデン)の日本法人イケア・ジャパン(千葉県船橋市)は家具・家電付きで家賃99円の賃貸物件「Tiny Homes(タイニーホームズ)」の入居者を11月24日から12月3日まで募集した。12月10日現在、応募者の中から選考中だ。

(中略)同社が借り上げた新宿区にある物件の1戸をプロデュースし、転貸する。1階にあるロフト付きのワンルームで専有面積は10㎡。ロフトの広さは約4㎡だ。物件の詳細は非公開。家具や食器、寝具などの小物類はIKEAの商品を提供。洗濯機や電子レンジなどの家電も備え付けている。

提供する家具・家電や小物類は約30点で総額約20万円分は入居者に無償でプレゼントする。

全国賃貸住宅新聞2021年12月23日掲載記事より抜粋)

狭小物件は苦戦を強いられる時代に

皆さん、こんにちは。コンサルタントの山城です。

「Tiny Homes」と名付けられた家具・家電付き狭小物件は、「IKEAが99円賃貸の募集を始めた!」ということで大きな話題になりました。缶ジュース1本より安いわけですから、家賃99円は凄くインパクトがありますね。ただ、個人的にもっと目を引いたのは、その狭さ。家具・家電付きなのに10㎡しかないということです。

私の地元沖縄でこの平米数のお部屋を見たことはありませんでしたが、さすが大都市東京です。色んなお部屋がありますね。山手線などの主要路線の周りには10㎡前後の狭小物件が多く存在しています。働き盛りの忙しい年代の人たちにとって、お部屋は帰って寝るだけの場所。狭小物件は入居者ニーズを追求したひとつの結果なのでしょう。

 

ただ、近年はコロナ禍の影響で在宅勤務が急速に広まり、賃貸市況がガラッと変わってしまいました。人々の在宅時間が長くなったことで居住空間の質を重視する声も増えてきました。

SUUMOリサーチセンター(株式会社リクルート)が実施した2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)を見ても、お部屋を選ぶ際に「決め手となった項目」で「間取り(広さ)」の回答数が大きく増えています。より居住空間の広いお部屋が人気を集め、狭小物件は苦戦を強いられる時代になってしまったと言えます。

狭小物件で戦うヒントを考える

狭小物件が秘める可能性

そんな時代にもかかわらず、IKEAはなぜ狭小物件で戦おうとしたのでしょうか。

お部屋には3.5帖の居室にロフト(約4㎡)が付いているものの、非常に狭い物件であることに変わりはありません。IKEAの家具を配置するのに、あえて狭いお部屋を選ぶことにも違和感を覚えます。

しかし、記事によると、Tiny Homesは「想定以上の反響を頂いている」とのこと。苦戦を強いられている狭小物件にあえてチャレンジをして、なかなかの成果を収めているようです。

まったく謎だらけのIKEAの99円賃貸。
しかし少なくとも、このTiny Homesは、今の市場で狭小物件が戦っていくためのヒントを教えてくれていると感じました。

そのヒントとは次のとおりです。

【ヒントその1.家具・家電付き】

激安家賃はいったん脇に置き、Tiny Homesでまず注目したい強みが「家具・家電付き」です。

近年はサブスクの浸透に見られるように、人々の所有に関する意識も変わり、車や自転車などを所有するのではなくシェアで済ませる時代になってきました。それは家具・家電についても例外ではありません。

入居者にとって自前の家具・家電が増えると引っ越し費用は高くなりますし、処分するのでさえ費用がかかってきてしまいます。以前より人々の所有欲が希薄になった今、家具・家電付きは入居者ニーズをズバリ捉えた施策と言えるでしょう。

※今回IKEAが設置した家具・家電は無償プレゼントとなるようですが (^^;)

【ヒントその2.縦の空間を上手に使う】

Tiny Homesでは縦の空間を上手に使い、無駄なスペースを一切省いているのも特長のひとつです。下の写真はイメージですが、ハンガーラックの上下に収納を付けたり、デスク周りにも壁付き棚を設けるなど、天井の高いロフト付き物件の縦のスペースを効率よく活かしていることに気がつきます。

ちなみに、縦の空間を有効活用するなら個人的にお勧めしたいのがロフトベットです。ベッドとしてはもちろん、縦の空間に効率良く収納スペースを組み込めますので狭小物件の収納対策には打ってつけ。

こうしたアイテムを上手く使えれば、狭いお部屋でも訴求力を高めるチャンスは十分あると言えるでしょう。

【ヒントその3.テレビスペースを設けない】

そして驚くべきことに、10㎡しかないはずのTiny Homesには「ソファ」が配置されています。いったいどうやってスペースを確保したのでしょう? 不思議に思ってしばらく観察していて、気づきました。

テレビを置く場所を設けていないのです。

お部屋でベッドの次に大きなスペースを占めるのは、テレビスペースですよね。テレビを観るために一定の距離が必要になりますし、テレビ台とそれに合わせたテーブルの配置など周辺家具を巻き込んで大きなスペースを取られます。

しかし、狭小物件の入居者層を考えると、必ずしもテレビが必要だとは言えません。最近は若者のテレビ離れなんて言葉を耳にしますが、実際にNHKの調査でも、若年層で「テレビを観ない・テレビを持たない」世代が増えていることが分かっています。

現に私も、テレビのない生活が6年以上続いていますが意外と快適です。ニュースなどの情報収集や、バラエティコンテンツも全てスマートフォンで完結しますので、はっきり言ってテレビは必要ありません。

20、30代の若年層をターゲットにしたTiny Homesでは、そんなテレビスペースを思い切って省くことによりお部屋のスペースに余裕を生み出し、テレビ以外の家具・家電の配置に活かしているのです。

入居者ニーズ合ったお部屋づくりを

いかがでしょうか。

狭小物件の入居付けが難しい今の時代に、専有面積10㎡の中で見事に入居者ニーズを捉えてみせたIKEAのTiny Homesからは学べることがとても多いですね。

特に家具・家電付きという戦略は入居者の費用負担が軽くなるだけでなく、ステージングとして内見時の反響アップの効果も生みます。

狭小物件はその狭さから、なかなか生活をイメージしづらいもの。しかし、ステージングをしておけば、そのお部屋での暮らし方がすぐにイメージできますし、それがIKEAの家具ならより魅力的ですよね。もし私が狭小物件の入居付けをするのであれば、ステージングはやはり必須だと思います。

狭小物件に限った話ではありませんが、お部屋づくりには入居者ニーズをきちんと調査し、そのニーズに応える施策を考えることが欠かせません。ターゲットがどのような生活を送り、何を求めているのか。IKEAの取り組みを参考に、入居者に選ばれるお部屋づくりを模索していきたいものです。


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