ニュースにヒトコト

公開日:2022年2月4日

変わりゆく木造アパート。高品質なら「マンション」の登録・表記可能に

変わりゆく木造アパート。高品質なら「マンション」の登録・表記可能に
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木造アパートでも、高品質なら「マンション」と登録・表記可能に

背景には木造住宅の高品質化

2021年12月6日から不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の理事会社であるリクルート、アットホーム、ライフルが運営する不動産検索サイトでは一定の基準をクリアした木造の賃貸住宅を従来のアパートではなく、マンションと表記できることになった。その背景には木造住宅の高品質化がある。

健美家2022年1月29日掲載記事より抜粋)

マンション表記が認められえるようになった理由とは

皆さんこんにちは。コンサルタントの金井です。

木造アパートであってもマンション表記ができるようになるとのことで、個人的には結構衝撃的だったこちらのニュース。皆さんも、「木造アパートのマンション表記ってどういうこと?」「マンション表記ができたとしても、見た目が現状の木造アパートと変わらなければ意味がないのでは?」など疑問に思った部分もあったのではないでしょうか。

かくいう私もそうだったので、世間に出ている木造のマンションとはどのようなものかを調べてみました。

出てきたのがこちらです。

◆三井ホーム「MOCXION(モクシオン)」

・公式HP:https://www.mitsuihome.co.jp/property/mocxion/
・ニュースリリース:https://www.mhc.co.jp/up_images_news/img101_1.pdf

三井ホームが手がける木造マンションブランド「MOCXION(モクシオン)」

2021年11月に第1号物件が東京都稲城市に完成し話題になりましたが、その外観は高級マンションさながらで、一目見ただけでは木造とは分からないほどです。

同様に野村不動産も木造マンションを発表しています。

◆野村不動産「プラウド神田駿河台」

プレスリリース:https://www.nomura-re.co.jp/cfiles/news/n2020022701674.pdf

そのほかにも、大手デベロッパーやハウスメーカーから、木造のマンション・オフィスビルの新築プロジェクトが各地で続々と発表されています。近年、技術革新による木造住宅の高品質化が進み、大型の木造建築物の数が徐々に増えてきているようです。

 

そう考えると、今回のニュースの実態としては、恐らく「普通の木造アパートを“マンション”と呼べるようにしよう」という意図ではなく、むしろ上記のような高品質の木造住宅を「アパート」と呼ぶわけにもいかないだろうという現実的な問題から、「一定の基準を満たしていればマンション表記を認めることにした」というのが真実に近いと思われます。

とはいえ、これまで「マンション=RC造」といった風潮が通用していたのは、相応の耐久性や耐震性を備えていたからです。木造建築を“マンション”と呼ぶなら、やはり同程度の住宅性能が担保されるべきでしょう。

それでは、木造住宅をマンションと表記するためには、どのような基準があるのでしょうか。

木造住宅を“マンション”と表記するには?

耐久性・耐震性で「最高評価」が必要

まず、対象となる物件は新築、中古、木造、軽量鉄骨造を問わず「3階建て以上」の「集合住宅(タウンハウス、テラスハウスなどの連棟式物件を除く)」となっています。

さらに「住宅性能表示制度による住宅性能評価書」で以下2つの条件を満たしている必要があります。

  1. 耐久性「3-1.劣化対策等級(構造躯体等)」が等級3
  2. 耐震性「1-1.耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」が等級3。または耐火性「2-6.耐火等級(延焼のおそれのある部分(開口部以外))」が等級4もしくは耐火構造

 

【1】耐久性「3-1.劣化対策等級(構造躯体等)」

劣化対策等級は構造躯体の劣化のしにくさを示すものです。最高等級は「3」となります。

  • 等級1 ⇒ 建築基準法程度
  • 等級2 ⇒ 50~60年程度、大規模な改修工事が不要となるよう劣化対策を行う
  • 等級3 ⇒ 75~90年程度、大規模な改修工事が不要となるよう劣化対策を行う

木造物件で75年〜90、大規模な改修工事が不要と言われるとなんだか途方もない基準に思えてしまいますね。

なお、等級3の基準として求められるのは、以下の通りです。

《等級3の基準》

  • 外壁の軸組における防腐・防蟻措置
  • 土台の防腐・防蟻措置
  • 浴室と脱衣室の防水措置
  • 地盤の防蟻措置
  • 基礎の高さの確保
  • 床下の防湿・換気措置
  • 小屋裏の換気措置
  • 構造部材等の基準法施行令規定への適合

(参考:国土交通省「評価方法基準案(劣化対策等級3・木造)の概要」)

 

次に、耐震性と耐火性です。耐震性の最高等級は「3」、耐火性は「4」となります。

【2‐1】耐震性「1-1.耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」

  • 等級1 ⇒ 数百年に一度程度の地震(震度6強から7程度=阪神・淡路大震災や2016年4月に発生した熊本地震クラスの揺れ)に対しても倒壊や崩壊しない、数十年に一度発生する地震(震度5程度)は住宅が損傷しない程度
  • 等級2 ⇒ 等級1で耐えられる地震力の1.25倍の力に対して倒壊や崩壊等しない
  • 等級3 ⇒ 等級1で耐えられる地震力の1.50倍の力に対して倒壊や崩壊等しない

 

【2‐2】耐火性「2-6.耐火等級(延焼のおそれのある部分・開口部以外)」

  • 等級1 ⇒ その他
  • 等級2 ⇒ 火熱を遮る時間が20分相当以上
  • 等級3 ⇒ 火熱を遮る時間が45分相当以上
  • 等級4 ⇒ 火熱を遮る時間が60分相当以上

最大震度7を記録した熊本地震、それよりさらに1.5倍強い地震でも大きなダメージを受けず、火災が起きても60分燃え広がらない性能を持った木造住宅。最強ですね!

加えて、これらの性能評価については、住宅性能表示制度の評価機関として国土交通省登録機関からのお墨付きが必要とのこと。ここまでの条件を全て満たすことで、「マンション」表記が可能になるようです。

将来のお部屋選び、木造マンションの普及でどう変わる?

さて、ここまでお読みいただき、皆さんはいかが思われたでしょうか。

木造住宅に対するここまで厳しい基準。既存の木造アパートでこれをクリアし「マンション」と呼ばせるのはちょっと難しそうですね。

となるとやはり、この基準変更はきちんと企画された木造マンションのためのものと言えそうです。さらに言えば、こうしたルール変更が必要なほど業界内では「木造マンション」の普及が予想されるということでもあるのでしょう。

 

しかし、木造マンション、普及するのでしょうか?

厳しい基準を全て満たすためにはコストが相当上がってしまい、現実的でないという印象を持たれた方も少なくないと思います。

確かにこの件、ネックはコストと技術です。しかし、木造マンションはRC造よりも建築コストが下がるという発表もあり、場合によってはRC造よりも割安で建てられる可能性も示唆されています。

また、今回紹介したMOCXION(モクシオン)は5階建てです。このような中規模物件について実用できているということは、それより小規模のプロジェクトにも実用可能な技術的な下地ができつつあると考えられます。

RCに劣らない性能の物件がRCよりも割安で建てられるとなれば、オーナーにとって「木造マンション」という選択肢は魅力的です。決して提案不可能な案件ではないでしょう。

もしかしたら、国産木材の利用拡大や環境配慮型住宅(ZEHやZEH-M)の普及促進に取り組んでいる環境省・国交省の補助金と組み合わせ、コストの問題をより解決しやすくすることもできるかもしれません。

 

そうなると、木造マンションの普及はかなり現実的です。木の温もりが好きな日本人にはウケるでしょうし、サステナブルな生活を求める方々の支持も得られそうですから、あえて木造マンションを建てて高稼働を狙うオーナーも増えるでしょう。

そして入居者の方も、RC造に劣らない安全性・耐久性であれば木造でいいと考える方はたくさんいるはずです。

お部屋選びの基準のひとつとなっていたRC・木造等の構造ですが、木造マンションの普及次第では「住宅性能」こそがお部屋選びの最優先事項となるかもしれませんね。

今回のヒトコトはこの人・・・


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