質問
賃貸管理戸数を拡大したいのですが、何から始めたらよいのかわかりません。
回答
業務分析を行い、受託拡大ができるよう組織内に人材の余裕資源を確保しましょう。
管理獲得のためのルーティン
賃貸業界にもITの波が訪れ、事業スキームそのものが変わろうとしています。
「仲介」中心の事業体系ではなく、「管理」を柱に据えようとする会社が増えています。しかし管理を増やしたくても、どこから手をつけてよいか分からないという企業のために、いくつかポイントを紹介します(図1)。
業務分析
管理獲得のための第一歩は、組織全体の業務分析から始まります。日々誰がどのような仕事をしているのかを、できるだけ細かく見ていきましょう。
具体的には、スタッフ全員の1週間の業務内容の業務内容を
①現場・クレーム対応(作業)、②事務作業、③出納業務、④戦略・提案業務、⑤その他(移動時間など)の5つに振り分け、どの仕事にどれだけの時間を費やしているのかを算出します。総労働時間に対してどの業務に時間を使っているのかを分析しましょう(図2)。
おそらく組織全体で95%以上の時間が①・②・⑤に割かれているでしょう。驚くほど受託提案を行う時間が取れていないのです。とくにクレーム対応、優先順位の低い不明瞭な現場での作業などに膨大な時間を取られているはずです。しかも真面目に業務をこなすほど、それらの時間が膨張しますから、管理業が「ボランティア」のような収益構造になってしまいます。
それらの改善には、業務分担を明確にして、作業的な仕事はできるだけ外注を活用し、「受託」や「提案」などの攻めの仕事にシフトする必要があります。そして、強制的に組織の中にスラック(余裕資源)を確保しなければなりません。業務上のストレスや負荷が多ければ、モチベーションも低くなり、いつまで経っても守りの体制から脱出できずに、気がつけば過重労働で人は定着せず、オーナーの信頼も得られずに管理戸数も増えないという負のスパイラルに陥ります。
見える化と提案ツール
組織内にスラックを確保したところで、次は提案できる体制の構築です。管理を受託するのに、口頭で獲得しようとしていませんか。口上手な営業マン一人だけに任せていては、全体の獲得戸数は増えません。重要なことは、受託提案ツール作りです。以前5月号で見える化とメニュー作りのことを書きましたが、さらにそれらを誰でも説明できるレベルまで作り込みます。
ここでポイントです。
よくエクセルやパワーポイントで、手作り感たっぷりの資料にしている企業が多いのですが、お客様の目線で言うと「見た目」=「信頼感」です。いくら質の良い管理ができていても、薄っぺらな資料ではそれなりに見えてしまいます。ここはデザイナーにフィーをお支払いして、カッコ良いパンフレットやホームページのデザインにしましょう。
営業チャネル
自社のサービスコンテンツが出来上がってきたら、営業をしなければなりません。一軒一軒オーナーをまわるのもよいのですが、あまり効率がよいとは言えません。
そこでオススメするのは、ワークショップ型セミナーです。一般的なセミナーというと講師が話をして、参加者が聞くというスタイルですが、それでは参加するオーナーは悩みや問題点を吐き出すことができません。そこで、ワークショップを通じてディスカッションなどを取り入れる参加型のセミナーにするのです。
実在する物件の空室対策や、実際の入居者に参加してもらう入居者ニーズ意見交換などを通じて、「話させる」ことで、参加者の満足度がグッと高まります。そしてなにより、管理会社のスタッフが一緒に学ぶ姿勢をとることで、自然とオーナーとの距離感が縮まるのです。
まとめ
管理を増やすことに特別な方法などありません。組織体制を整え、サービスの差別化と見える化をして、情報発信をする。
簡単なことのようですが、進める順序はとても重要です。まずは組織体制を見直すことから始めましょう。
ポイント
- 管理戸数を増やしていくには、電話対応などに外注を活用して組織内にスラック(余裕資源)をつくりましょう。
- オーナーに管理受託の提案をする際には、賃貸管理メニューなどの受託提案ツールを活用しましょう。提案ツールは、外部デザイナーに依頼するなど見た目のよいものを作ることが重要です。
- 営業の手法でおすすめなのはワークショップ型のセミナーです。意見交換を行えば、オーナーの悩みや問題点を引出せる上、オーナーとの距離感が縮まります。
(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2015.9月号掲載)