質問
オーナーへの改善提案が大切なのは分かるのですが、どういった提案をすればいいのでしょうか?
回答
「オーナーのタメになる提案」は全て改善提案です。
4つの視点から考えると見つけやすくなります。
改善提案のポイント
オーナーの賃貸経営をより良くするための「改善提案」。このアプローチは、他社との差別化を打ち出しやすい部分であり、オーナーとの最高のコミュニケーションの機会でもあります。しかし、この「改善提案」が十分にできている会社は多くはないようです。
日常業務に追われて忙しいという理由以外に、どのような提案をすればいいのか分からないという声もよく耳にします。そこで今回は、改善提案のポイントをいくつか紹介していきます。
改善提案のネタは、次の視点を意識すると見つけやすくなります。
①オーナーの収入を増やす、②オーナーの支出を減らす、③リスク対策、④建物利用上の快適性・安全性、の4つです(図参照)。
費用対効果の分析とリスク最小化
①と②は、手取収入に直接影響するため、オーナーに理解してもらいやすい提案です。しかし、実施に費用を要することも多く、その場合は費用対効果の分析が必要です。室内リノベーションをして、家賃アップを図る場合を例に考えてみましょう。
120万円の費用をかけることで、+24万円の「差」が生まれます。この120万円の投資利回りは20%(24万÷120万)です。リノベーションに使った120万円は5年で回収ができ、以後の家賃差額は儲けです。家賃アップの効果が5年以上続くのならば、この提案は実施価値があるのではないでしょうか。
現状維持と提案実施後の「差」こそが「効果」です。費用を要する改善提案であるならば、このような費用と効果の分析があってこそ、オーナーは改善提案を実施する価値があるかの判断ができることになります。
③の「リスク対策」は、軽視されたり見逃されたりしやすい部分です。「外壁タイルが落下して通行人がけがをした」など、建物設備の瑕疵が原因で事故が発生した場合、オーナーは故意や過失がなくても責任(無過失責任)を負います。
そのような事故責任への備えとして「施設賠償責任保険」がありますが、保険料は比較的安価なのに加入しているオーナーはあまり多くありません。入居者が原因で発生するトラブルや事故、災害への備えといった視点も必要です。
賃貸経営におけるさまざまなリスクを把握して、オーナーにリスクの理解を促し、それを最小化する提案も管理会社の大切な役割です。
顧客満足の視点から提案
④は、入居者等が快適かつ安全に不動産を利用できているかという視点です。賃貸経営のお客様である入居者等が、満足しているかを気に掛けることはとても大切です。自分がここで暮らすとしたら…と考えると分かりやすいのではないでしょうか。
例えば、インターネット回線すら建物に引き込まれていないなど、現在の市場ニーズを満たさないような「機能的な陳腐化」はないか?という視点からも考えてみましょう。
改善提案のネタは、このような視点からの「気付き」で生まれますが、どうしても担当者によって、気付きに違いが生じます。誰が担当でも、同じ気付きが得られるように、チェックリストを作成して活用すると非常に効果的です。
些細なことも改善提案
改善提案をするというアクションを日常的なクセにしましょう。積極的に改善提案をしてくる管理会社は、オーナーにとって賃貸経営のパートナーであり、頼れる存在です。改善提案を通じてオーナーとの信頼関係も深まり、新たな相談を持ち掛けられるなど、ビジネスチャンスのきっかけにもなります。
「改善提案」というと、効果やインパクトの大きなものばかりに目がいきがちです。①の収入増に提案が偏る傾向もあります。しかし、オーナーの「タメ」になるならば、どんな些細なことでも立派な改善提案です。遠慮せず自信を持ってどんどん提案をしましょう。
改善提案によって、オーナーからの信頼を得ることはあっても、失うことはありません!
ポイント
- 現状維持と改善提案を実施した場合の「差」、つまり「効果」を明確にしましょう。実施に費用を要する場合は、費用対効果の分析をします。
- オーナーは、我々管理会社が思う以上に「改善提案」を期待しています。オーナーに提案をするというアクションを日常化しましょう。
- どんなに小さなことでも、オーナーの「タメ」になるのであれば、全て立派な改善提案です。小さな気付きを大切にしましょう。
(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2015.11月号掲載)