月刊不動産

公開日:2016年7月1日

vol.8 感覚ではない家賃査定を

vol.8 感覚ではない家賃査定を
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質問

よく家賃査定をするのですが、明確な根拠がなく、自信を持って大家さんに提案ができません。何か良い方法はありませんか。

 

 

回答

家賃査定の方法を確立して、誰が査定しても同じ結果が出るようにしましょう。

根拠のない家賃の決め方

一般的に家賃設定は、曖昧で明確な根拠がないまま、決められていることが多いように思います。似ている条件の物件があれば、なんとなくそれと近しい家賃設定にして募集することがほとんどではないでしょうか。しかし、家賃は、毎月の収入を得ることはもとより、物件価値の評価(収益還元法)からすると、売買価格そのものにも影響を与えてしまうのです。つまり、たった2,000円の家賃の差が、数百万円もの取引価格の差に変わってしまうこともあるため、とても重要なのです。

 

とは言え、家賃査定のルールがない不動産会社がほとんどですから、査定を頼めば担当者によって設定家賃が異なります。驚くことに、場合によっては一部屋あたり、5,000円~1万円程度の開きが出てしまうこともあるのです。同じ不動産会社に査定を依頼しているのに、担当者によって付ける家賃査定が違えば、オーナーである大家さんから信頼を失うことになりかねません。

コンペア式査定法

私たちは家賃を査定するとき、コンペア式家賃査定法という独自の手法を用います。

簡単に言えば、近隣の幾つかの類似物件と比較して、家賃を導く方法のことです。「間取り」「立地」「設備」などの項目から、査定する物件と類似物件をアイテムごとに比較して、金額差を抽出していきます。これを表にしたものが、「コンペア式賃料査定表」です(図1)。

 

例えば、①RCと木造など構造の違い、②防犯カメラの有無、③築年数の差、④ペット飼育の可否など、それぞれの項目ごとにいくらの差がつくのかを埋めていきます。ただし、ここで気をつけたいのが類似物件の選定方法です。現在募集されている物件を類似物件にしては意味がありません。

なぜなら、募集賃料が、必ずしも成約賃料となるわけではないからです。とかくデフレが続き、賃貸需要が減っていると、必ずと言って良いほど指値(客からの要望賃料)が入ります。よって、成約済み物件を類似物件として比較しなければなりません。

また、このようなコンペア式査定を何の基準もない状態で行うと、例え同じ会社のベテラン社員が同じ物件をそれぞれ査定しても、ピッタリと同じ金額が出ることはありません。結局は頭の中で、感覚で査定しているため、このような開きができるのです。

家賃査定基準表がキモ

ここで重要なことは、「家賃査定基準表」を作ることにあります(図2)。

 

細かく決められた項目ごとに基準が決まっていれば、誰がいつ査定しても、人によって違いは出ないのです。

アイテムごとの基準のつけ方は、エリア性があるので、ここでは正確なことは言えないのですが、取り決めるときにはできるだけ経験の長い社員が中心となり、感覚ではなく過去の事例を分析して作ると良いでしょう。また、できる限り、基準表に準じた内容を入居者アンケートとして、消費者目線の価値基準をデータとして取り込むことも重要なことです。

ポイント

  • 家賃の査定方法には、コンペア式家賃査定法という手法があります。近隣のいくつかの類似事例のアイテム毎に比較して家賃を導く方法です。
  • コンペア式家賃査定法では、近隣物件において、①RCと木造など構造の違い、②防犯カメラの有無、③築年数の差、④ペット飼育の可否などの各アイテムでどれだけの差が付くのかを示すコンペア式賃料査定表をつくります。
  • 比較する類似物件は、募集中物件ではなく、成約済み物件を選定します。
  • 家賃査定基準表を作りましょう。できるだけ経験のある社員が中心になって、過去事例を分析して作るのが良いです。消費者目線の価値基準を取り込むことも重要です。

(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2016.7月号掲載)


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