質問
入居者からのクレームに、傾向や特徴はありますか?
回答
年代が上がるほど、クレームの発生率が高くなる傾向があります。
女性単身世帯や家族世帯は、共用部分など自分の部屋以外も含めた物件全体について関心が高く、一方で男性単身世帯は自らの部屋内を中心に関心があるという傾向が見られます。
入居者満足を高めるクレーム分析
入居者は、どのような不満があり、どのような問題に敏感に反応するのでしょうか。
これらが把握できれば、入居者満足を高めるためのアイデアや対応策に繋がっていきます。今回は、当社の入居者向けコールセンター「プロコール24」に日々頂く全国の入居者からの入電データを用いて、クレーム傾向を分析したものを紹介します。
分析に使用した入電データは2014年11月から2年間のものです。
まず、入居者の世帯タイプを「男性単身」「女性単身」「家族(複数人入居)」の3つに分け、さらに「30歳未満」「30歳代」「40歳以上」の年代別でも傾向を探りました。
クレームが少ないのは?
図表1は世帯数に対する年間のクレーム件数です。30歳未満の男性単身世帯100世帯からは1年間に29.9件のクレームが発生したことを示します。
クレームを大別すると、①建物や設備の不具合を原因とするもの、②騒音やゴミ問題など人が原因となるもの、③雑草が伸びている、蜂が巣をつくったなど動物・虫・植物が原因となるもの、④管理対応上の不手際によるもの、があります。図表1はそれらを合計した結果です。男性単身が最もクレームが少なく、家族世帯からは男性単身世帯の約2.4倍ものクレームが発生していることなどがわかります。
年代が上がるほどクレーム発生率も高くなるという、共通の傾向も分かりました。
クレーム内容のTOP5
図表2は、各世帯タイプや年代別に「クレームTOP5(上位5位)」をまとめたものです。
男性単身世帯は、「騒音」クレームが目立ちます。騒音クレームは、男性は解決を要求してくる傾向が強く、女性はクレームを言って一旦は収まることが多いようです。他人の出す音には、男性の方が敏感で且つ耐性が低いのかもしれません。
女性単身世帯は、エアコンに関するものが最も多くなります。冷風が出ないといった故障に関するものが目立ちますが、最近は「エアコンが臭いのでクリーニングをして欲しい」というものが増えています。 また、TOP5には入っていませんが、「近隣部屋からのタバコの臭い」に関するクレームも増えており、それを理由に退去に至るケースもあります。 臭いに敏感に反応するのは女性の方が多いようです。
図表3は、「共用灯が切れている」「除草して欲しい」など、室外の問題に関するクレームの発生割合です。
女性単身や家族世帯が男性単身を大きく上回っています。女性単身や家族世帯は、自分の部屋内だけでなく共用部も含めた物件全体に対して関心があり、快適性や見映えの良さを求めていると読み取れそうです。
例えば、除草してもらいたいというクレームは、男性単身の場合、自室のバルコニーにまで雑草が伸びてから言ってきますが、女性単身や家族世帯はそこまで伸びていなくても「見栄えが悪いので除草して欲しい」というパターンが多いのです。
家族世帯からのクレームは、どの年代でも「建具・サッシ」が最多です。扉の開閉が固い、ガラス窓のヒビなどです。これらの多くは入居直後にクレーム化しています。入居前の室内チェックによって、入居早々に建具・サッシ問題で不満を持たれる事態を防げそうです。
クレームの傾向を把握・分析して入居者満足の向上のヒントを得れば、居住年数の長期化や、無用な退去の抑止に役立つでしょう。自社管理物件のクレーム傾向を分析してみてはいかがでしょうか。
ポイント
- 入居者満足を向上させるには、不満・クレームの把握と分析が大切です。
- 世帯タイプ別や年代別にクレームの傾向を把握すれば、より具体的な入居者満足向上のための対策を検討できます。
- 男性単身世帯は騒音に敏感、女性単身や家族世帯は共用部など室外の問題にも関心が高いといった傾向もみられます。
- 年代が上がるにつれ、クレーム発生率も高くなっていきます。
(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2017.1月号掲載)