質問
管理は徐々に増えてきましたが、やるべき業務が増えてしまっています。
社内の役割分担が明確にできてないのか、とにかくいつも人手不足です。何から手をつければいいのかわかりません。
何か良いアドバイスはありませんか?
回答
管理会社がオーナーから与えられた「ミッション」は、何なのでしょうか。
本来のやるべき仕事ができるように、外注も検討しましょう。特に専門分野はIT化により、安いコストで外注ができるようになっています。
ミッションは稼働率の高い資産運用と提案
総務省発表の経済センサスによると、不動産賃貸管理業における従業者数は、一事業所あたり4.6名といわれている。
賃貸管理業は業務の幅が広く、緊急性を伴う仕事も少なくないため、慢性的な人手不足に陥っている企業が多いのではないだろうか。
管理会社のミッションは、「オーナーからお預かりしている物件を高稼働で運用し、その物件の資産を最大化させ、最適な運用提案をすること」であり、そのことに誰も異論はないはずだ。しかし実態を見てみれば、目の前のトラブル対処や作業的な仕事に、ほとんどの時間を費やし、管理会社のミッションである提案業務にまで至らず、存在感を発揮できていないケースがほとんどである。
従業者の数も限られているのであるから、本来やるべき仕事の優先順位をつけなければ、目の前の業務をただこなす日々で終始してしまう。
当然、生産性も高まらず、管理戸数を増やしたくても増やせない状態に陥る。
クラウドソーシングのメリット
「限られた管理料の中で仕事を外注すると赤字事業になってしまう」という発想がその生産性を低下させることになる。
内製をすれば、赤字事業にならないが、生産性や質が保てないようであれば、企業の成長が期待できないことになる。
少し発想の転換をして、思い切って外部の専門機関(外注)を使ってみてはどうか。人的資源の活用は、図表1のような方法がある。大きく分けて、内製か外注かということになるが、賃貸管理会社の仕事はほとんどが内製化されている。
アウトソーシング(外注)という言葉は聞き馴染みがあるだろうが、最近ではクラウドソーシングといって、インターネットを介して仕事を不特定の人に発注できる形態がある(図表2)。
例えば、チラシの制作を外注する場合、これまでは、広告代理店に制作の依頼をかけ、広告代理店は下請けに依頼し、その下請けからフリーのデザイナーに発注をかけるという流れだった。ところが、クラウドソーシングは、依頼者から直接デザイナーに制作を発注できるようになった。これはいわゆる「中抜き」であるが、依頼者側は発注コストを大幅に下げられるし、受注するデザイナーも、元請けの代理店からうるさく言われることもなく、自身が希望する仕事や発注額で選ぶことができるため、お互いにとってメリットが大きい。たくさんあるデザインの仕事を内製化しようとしてもコストがかかるし、そもそも、その人のスキルがどれくらいかも事前判断がつきにくい。クラウドソーシングであれば、必要な時に必要なだけ人材を確保できるため、繁閑の差による人余りの事態を避けることができるのだ。
クラウドソーシングの得意分野
クラウドソーシングは、デザイン(ロゴ、バナー、イラスト等)、単純な入力作業(名刺、データ等)、ライティング(記事作成、キャッチコピー、ネーミング)などが得意分野である。つまり、クリエイティブ(創造的)な仕事や単純事務作業などとの親和性が良い。
メジャーなプラットフォーム(媒体)は、シュフティ、ランサーズ、クラウドワークスなどがある。管理業務におけるクラウドソーシングを活用しやすい例をまとめてみた(図表3)。何でもかんでも従業者がやっているその業務領域は、本来専門性が高い業務であることがわかる。
総合的に見ると割安な外注費
何となく得意だからと、素人が見よう見まねで作る募集図面やキャッチコピーと比べれば、プロが作った募集図面のほうがはるかにできは良い。当然、入居希望者が「内見したい」と思わせるデザインであれば、仲介業者にもオーナーにも受けが良いはずである。
もちろん外注をすればコストが発生する。しかし、人件費と比べるとどうか。素人が何時間もかける人件費と、プロに任せるコスト。また出来上がったクオリティを比べてみれば、プロに外注をしたほうがはるかに割安であることがわかる。管理会社のミッションを達成するためには、従業者がやるべき仕事はもっとほかにあるのではないだろうか。
ポイント
- 管理会社のミッションは、「オーナーからお預かりしている物件を高稼働で運用し、最適な運用提案をすること」。管理会社は、クリエイティブな仕事や単純事務作業を外注し、本来やるべきミッションを果たすべきである。
- クラウドソーシングとは、インターネットを介して不特定多数の個人を対象に仕事を発注できる形態をいう。
- クラウドソーシングは、代理店を介さずに直接依頼できるため発注コストを下げられ、必要な時に必要なだけ人材を確保でき、繁閑の差による人余りの事態を避けることができる。
(公益社団法人 全日本不動産協会発行「月刊不動産」2017.5月号掲載)