賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「社員の採用」です。
採用は営業と同義、競合に勝つ工夫を
業界共通の課題は“人手不足”
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
コンサルタントの仕事柄、賃貸管理会社の経営者からさまざまなお悩みをお聞きしますが、中でも多いのが「人手不足」です。業界の人材難は以前からの問題ですが、ここ最近は特に顕著なようです。
日経新聞(2022年10月25日号)によれば、23年春入社となる大卒内定者は4年ぶりに増加に転じたとのこと。とはいえ、数字の背景にはホテル・旅行・外食産業など、これまでコロナを理由に採用を抑制してきた業種の採用拡大があり、あくまで例外的な増加でしょう。また見方を変えれば、新社会人となる若者は例年より多く“刈り取られ済み”ということであり、若手人材難に拍車がかかったとも言えるかたちです。
つまり今は、求職者を多くの企業で奪い合う完全な売り手市場。思うように採用が進まない状況下で、果たして管理会社の人手不足はどう解消していくべきでしょうか。
会社の本質を分かりやすい言葉で表現
数ある人手不足の解消策として、まずは「採用」から考えてみましょう。その際、私たちが念頭に置いておきたいのは、人材獲得の競合となるのは不動産会社だけではないということ、そして、世間一般に不動産業界が、他業界と比べてあまり良いイメージを持たれていないという残念な事実です。
つまり、私たちは採用の現場で、他業界企業に負けない魅力があることを懸命に発信する必要があるのです。そのためには、自社の働き方や考え方を「言語化」する必要があるのですが、皆さまの会社は挑戦されたことがあるでしょうか。
ちなみに、弊社を表す代表的な言葉は「楽しくなければ仕事じゃない」。辛い・厳しい経験をしないと成長できない、という体育会系的な考え方に否定的な弊社代表らしさ、そして今の会社の雰囲気をそのまま表現したものですが、結局は求職者へのメッセージの大部分を「言葉」に頼る以上、採用の場ではこうした言葉の整備が地味に重要です。
決して気の利いた言葉である必要はなく、しかし会社の実態や理念をどう分かりやすく伝えようかと、真剣に考え抜いた言葉が求められます。外面を気にしただけの言葉は学生等も察しますし、社内の反発も招きます。自分たちが理想とする働き方を適切に表現することで、求職者に誤解なく会社の魅力が伝わることはもちろん、新しい制度や規則を導入する際の社内の抵抗感も小さくなり、結果的に魅力的な制度や風土がつくられやすくなります。
採用活動は営業そのもの
優秀な社員を獲得することは、企業にとって重要業務のひとつとされます。しかし市況もお構いなしに学生や求職者を“選考する”という構図に甘えて、どこか事務的になってしまっている企業が多いと感じます。冒頭で述べた通り、今は売り手市場、人材は奪い合いです。
採用担当は、競合に競り勝つための戦略と自社を売り込む力を持つべきで、業務の性質的には「営業」とさえ言えそうです。会社の将来に有用な人材の「雇用契約」を獲ってくる役目なのですから、営業で好成績を収めたエース級の若手社員を抜擢するくらいでもよいのではないでしょうか。
前例のない働き方も選択肢のひとつに
通勤時間の長い都心の企業を中心に、テレワークという働き方が一般的になってきました。弊社が運営する入居者対応コールセンター「プロコール24」でも、会社に出社するという制限を設けない「100%テレワーク社員」を積極的に採用しています。
最大のメリットは、居住地を選ばず全国募集ができ、応募数が増えることで優秀な社員を採用できる可能性が高まること。現在では青森から沖縄まで全国で数十人が働いてくれていて、コールセンター業界は特に人手不足が顕著と言われる中、おかげさまで事務所も拡張せずに優秀な社員を獲得できています。
さて、この取り組み、管理会社でも実施できないでしょうか。空室募集登録や審査契約などのデスクワーク、管理受託・売買仲介のインサイドセールス(内勤営業)なら、十分に可能であると思います。
もちろん業務の電子化、システムのクラウド化、WEBでの教育体制構築、個人情報漏洩のリスクヘッジ等が必要となりますが、今となってはそれほど高い壁でもないはずです。働き方が大きく変わりつつある昨今、前例がないからと諦めず、新しい働き方を条件とした採用を試してみることで、これまでにない人材の獲得が可能となるかもしれません。