コンサルタントコラム

公開日:2025年10月30日

【コラム】将来見据え、自社の付加価値創出を

【コラム】将来見据え、自社の付加価値創出を
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賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは「管理会社の付加価値」です。

加速する業界変化、管理会社の価値競争とは

効率化だけでなく付加価値創出と両輪で

こんにちは、コンサルタントの高橋です。

ここ数年、賃貸業界を取り巻く環境は急速な変化の渦中にあります。人口減少や少子高齢化、インバウンド需要の高まりといった社会構造の変化に加え、入居者ニーズの多様化やAI・デジタルツールの導入も加速しています。こうした背景のなかで、賃貸管理会社は、これからの社会に対応できるよう企業体制の見直しを進める必要があります。実際にすでに将来を見据えて、具体的な対策に取り組む会社も増えてきました。

たとえば、業務のデジタル化や、人手のかかる作業をAIで効率化することは、生産性の向上だけでなく、人手不足の解消にもつながる重要な取り組みです。これらは、今やどの会社も取り組むべき基本的なカテゴリの一つといえるでしょう。ただ、そうした“無駄をなくすこと”や“人手をかけないこと”ばかりに意識が向きすぎてはいないでしょうか

確かに、デジタルの力に頼れば1戸の管理に必要な人員は減り、業務効率は改善されるかもしれません。しかし、それは支出を減らす工夫であって、収入を増やすことには直結しません。省力化・省人化の取り組みだけが先行するうちに、事業全体が縮小方向に進んでしまう可能性もあります。実際、競合に打ち勝つための施策や、オーナーに選ばれる理由を強化する取り組みが後回しになっている企業も多いと感じます。効率化だけでは生み出せない、自社ならではの付加価値の創出に目を向ける必要があるのです。

選ばれるのは「価格」か「価値」か?

「自社ならではの付加価値の創出」とは、言い換えれば他社との“差別化”にあたります。ただし、単に管理料等を下げることが差別化になるかといえば、それは少し違います。現在では、オーナー個人に向けた賃貸管理ツールやリスク転嫁のサービスも充実しており、管理会社に委託せず自主管理を選択するハードルも下がってきています。こうした状況では、「他社より安い」だけで市場での優位性を築くことは難しくなっているのが実情です。

むしろ、適正な管理料をいただきながらも、その対価として資産価値を高める提案」や「専門的な視点からのアドバイス」ができるかどうかが、差別化の本質ではないでしょうか。オーナーの資産形成に貢献できることが、競合他社や自主管理といった選択肢に打ち勝つ条件となるのです。

実際に、あるサラリーマン投資家からこんな声をいただきました。「管理料の安い会社はいくらでもあるが、数%の違いなら、しっかり提案してくれて物件の価値を高めてくれる会社の方がいい。数%をケチって、自分であれこれ考えたり動いたりするのは非生産的。優秀な会社に管理料を払い、自分は自分の得意分野である本業に集中した方が、はるかに投資効率が高い」と。

このように、管理料は“コスト”ではなく“投資”と捉えられることもあります。オーナーにそう思っていただけるようなサービスや姿勢こそが、本当の付加価値であり、選ばれる理由になっていくのだと思います。

表1:業務の効率化と付加価値創出の対比

人材育成が会社成長のカギに

オーナーに対する提案の質や幅を広げていくことの重要性については、この記事をご覧の皆さまも十分ご認識されていると思います。では、それを実現するために何が必要かといえば、一つは「人材育成」です。

賃貸管理業界では、募集や現場対応など、PM(プロパティマネジメント)領域の業務が中心となっている会社が多いと思います。しかし、今後は不動産の取得、管理、運用、売却といったAM(アセットマネジメント)領域に踏み込み、これらの知見を持つ人材を育成・確保していくことが、オーナーへの提案力を高めるうえで欠かせません

弊社でもいくつかの取り組みを行っていますが、そのうちの一つに資格の推奨と取得サポートがあります。CPM®(認定不動産経営管理士)CCIM(認定不動産投資顧問)といった資格を通じて、体系的に専門知識を学び、また他社の資格ホルダーや管理会社同士のネットワークから最新情報を得るようにしています。

また最近では、全社的にリスキリングの取り組みも始めました。弊社代表・藤澤には「学び続ける姿勢が、自らの能力やスキルを伸ばし、会社の価値にもつながる」との考えがあり、就業時間の5%を自己成長の学びに充てるよう制度化しています。もちろんその分、業務は効率よく終わらせる必要がありますが、実行することで“学ぶことが当たり前”という空気が社内に定着しつつあります。多くの会社でも「自己研鑽を大切に」と掲げているとは思いますが、あえてトップダウンで“時間と仕組み”を用意することが、社員の学びの大きな後押しになると感じています。

業務効率化の取り組みは、生産性や労働環境改善の第一歩であり、もはや当たり前の時代になりました。しかし、それだけでは管理会社としての存在価値を示し続けることは難しくなっています。

オーナーや入居者から「選ばれる理由」をつくるためには、各社がそれぞれの強みを活かし、自社にしかない「価値」を見つけて育てていくことが必要です。業界全体としても、価格競争からの脱却と、提案力・人材力による「価値競争」への転換が求められているのではないでしょうか。


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