賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「世代別の社員教育」です。
社員教育の「教え方」を理解する
世代が異なる“優秀な人材”の育成方法とは
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
年明けの1~3月は賃貸業界の繁忙期となりますが、この時期に管理会社が“空室解消”と共に意識しておきたいのが、繁忙期の去った4月以降に待つ“新入社員”の存在です。
優秀な人材の育成は、組織の未来を左右する最も重要なミッションの一つ。また新入社員のみならず、組織の拡大には次世代リーダーやシニア世代が活躍し続けるための育成戦略も求められます。
一方で、現場の社員教育は、マネージャーや先輩社員によるOJT任せになりがちです。それが悪いわけではありませんが、人材育成を担うマネージャーが「教え方」を理解していなければ、社員が成長するどころか、定着率の低下・組織の競争力低下を招く結果にもなりかねません。
ステージの異なる社員たちの成長を、組織やマネージャーはどのように導いていけばいいでしょうか。
新入社員:仕事の意義・目的明確に
配属直後の新入社員に、まず何から教えるべきか。
悪い例の典型は、一番簡単な業務の手順だけを伝えて、「とりあえずやってみて、わからなかったら聞いて」と任せることです。
業務に追われる多忙なマネージャーは、つい単純作業を新人に渡すだけで「ひとつ覚えさせた」としてしまいがちです。しかし、新人にはまず、その業務が会社や部署の目標とどう結びついているのかを、「全体像から細部へ」と落とし込んで説明して理解させるべきです。
特にZ世代以降の若手は、仕事の目的や自身にとっての仕事の意義を重視する傾向が強く、業務の背景や意図が理解できないと主体的に動けない特徴が見られます。
しかしこれは裏を返せば、「この仕事がなぜ必要なのか」「取り組みによる効果は何か」を明確に伝えることが、彼らを受け身ではなく、自ら考え行動する人材へと成長させることを意味します。
そんな彼らの成長を加速させるのが、業務習得のための中長期的な計画と成長目標の提示です。
「何を、いつまでに習得するのか」「次のステップへの移行時期はいつか」を明確に伝えることで、新人の成長スピードは格段にアップします。
目標は「5月までに今の業務を習得し、6月から次の段階に進む」「半年後には担当オーナーを持つ」など、具体的に設定しましょう。あらかじめ部署の業務全体を把握できる「業務リスト」を整備し、役職・等級・入社年次などで、どの業務をどの段階までに習得すべきかを明確にしておけると、目標設定も効果測定もスムーズです。
次世代リーダー:判断力と俯瞰力を育成
第一線で活躍してきた優秀なプレイヤーが、必ずしもマネジメントに適しているとは限りません。次世代リーダーを育成するには、業務遂行能力だけでなく、彼らの「判断力」と「俯瞰的思考力」を鍛えることが不可欠です。
「判断力」を鍛えるには、難易度が高く組織にとって重要なプロジェクトを任せることが効果的です。
例えば、オーナー満足度の向上、入居者クレームの削減、社内ペーパーレス化(電子化)推進といったように、会社単位であり、かつ一筋縄ではいかない課題解決型のプロジェクトです。
マネージャーは、プロジェクトの進め方だけを指南し、あとは本人に任せます。
①現状課題の抽出から②解決策の仮定と検証、③社内のコンセンサス(合意)形成、④担当者選定と進捗管理まで、実践を通じて判断力を鍛えます。
「俯瞰的思考力」の鍛錬は、知識や経験の不足から新リーダーが“思い込み・視野狭窄”に陥らないための対策です。自社のやり方しか学んでこなかった社員がマネージャーになった途端、視野の狭さや偏った価値観を露呈させて信頼を失うケースはよくあるものです。
この課題の解消には、同業他社や異業種など外部の知見に触れる環境を作ることが効果的です。
例えば、経営層が集まる業界団体の会合(積極的にコミュニケーションもとる)や、業界を超えた人材が集まる研修に参加する機会を継続的に作れば、人脈とともに視野も広がり、俯瞰的思考力を養うことができるでしょう。
シニア世代:双方の期待値の合致目指す
若手や次世代リーダーが、組織から核となる業務を次々と任されていく反面、近い将来に定年を迎えるシニア世代は、そうした最前線業務から一歩引いた立場を求めるようになり、省力的な働き方を望むようになりがちです。年齢的に仕方のない面もありますが、このようなモチベーションの低い状態では、本来の熟練者としてのパフォーマンスの発揮も難しくなります。
シニア世代は、会社の歴史や管理物件・顧客との関係性を深く理解している貴重な存在にもかかわらず、非常にもったいないことです。
この課題の解決には、シニア世代、そして今後シニア層に入る40代後半~50代のポストシニア世代に対して、自身の市場価値を認識させ、その能力の活用の場を考える機会を提供することが重要です。
単に定年を待つのではなく、まだ活躍の場はあると自覚させ、経験と知識を十全に発揮した働き方を会社が期待していることを伝えましょう。
これからの時代、組織にとってシニアの活躍はますます重要なものとなっていきます。会社の期待と本人の貢献意欲、双方の期待値が合致するまで入念に対話を繰り返し、彼らのパフォーマンスの最大化を目指しましょう。