賃貸管理の可能性に、挑む。

当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。

今回のテーマは「内製と外注の効果」です。

リソース配分最適化で競争力UP

内製／外注のメリット・デメリットを理解する

こんにちは、コンサルタントの高橋です。

企業の成長と生産性向上を実現するうえで、重要な経営判断の一つとなるのが、業務を「内製」するか「外注」するかの選択です。

特に賃貸管理は業務範囲が広範かつ多岐にわたるため、限られたリソースをどの業務に・どんな配分で投入するかで、業務効率も最終的な利益も変わってきます。

どの業務を自社で手がけ、どの業務を外部に委託すべきか。内製と外注のメリット・デメリットを理解し、組織・従業員に与える影響を見極めることが、企業の持続的な成長のカギです。

成長期待業務は内、定型・専門業務は外

内製の最大の強みは、業務を自社でコントロールでき、独自のノウハウを積み重ねていける点です。

例えば、受託営業や既存オーナーに対する資産コンサルティングは、時間とともにノウハウが蓄積され、その知見によってさらに多くの顧客が獲得できる業務です。
こうした「継続することで競争力が高まり、成長が期待される業務」や「長期的な信頼関係が求められる業務」は、内製化することで企業の成長の原動力となります。

一方で、事務作業や巡回清掃、退去立会、入居者対応といった「定型化された業務」や「スケールメリットが働く業務」は、外注することでコスト効率が高まり、より価値の高い業務に社内のリソースを集中させることも可能となります。

また、法務や税務、IT関連（例：システム・アプリ開発）のような「専門性が高く、内製ではコストやリスクが大きくなる業務」も外注に向いており、スピードや精度の向上、経営リスクの軽減が期待できます。

内製vs外注 コストはどう計算すべきか

業務の外注を検討する際、多くの企業が直面するのは「コストの高さ」です。
外注先から提示された見積もりを見て、「これなら人を雇った方がはるかに安いのでは？」と感じた経験のある方も多いでしょう。

仮に社員1人分（例：基本給28万円）の工数で済む業務に対して、外注費が月40万円であったら、表面的には「内製28万円vs外注40万円」となり、「やっぱり1人採用しようかな…」と気持ちが傾くのも当然です。

しかし、社員1人にかかるコストは基本給だけではありません。
福利厚生費や採用費、教育費なども考慮すると、実際のところは社員1人に基本給の2倍近くのコストがかかっています。外注の方がコストの節約になる場合もあるのです。

では、内製費と外注費が同額だったらどうでしょうか。

私個人は、社員にはコスト以上の価値を生み出す成果を期待し、それを叶える業務を課すべきだと考えます。
もし社員が自身のコストと同等の成果しか出せない仕事をしていたら、会社には1円も利益が残りません。

内製費と外注費が同額の場合は、社員には生産性の高い業務を任せて成果を期待し、外注先にはコスト分きっちり活躍してもらう。

それが企業全体の成長にとって賢明な選択ではないでしょうか。

内製／外注の選択で原動力の喪失防ぐ

外注の判断では、コストだけでなく社員の離職率にも目を向けることが重要です。

離職の理由には様々なものがありますが、例えば、長時間労働や休日出勤の続く過酷な「労働環境」は、よくある離職原因のひとつです。
心身共に疲弊すれば、誰でもバーンアウト（燃え尽き症候群）に陥り、離職を選択する率が高まります。

また、社員が「この会社では成長が見込めない」「やりたい仕事ができない」と感じる「成長環境」の問題も注意が必要です。優秀な人材ほど、ルーティン業務ばかり続くとやりがいや達成感を感じにくくなり、スキルアップの機会を求めて離職してしまうものです。

前述の通り、社員の担う価値ある業務は、企業の成長の原動力です。ならば、生産性の低い業務で社員を離職させることは、その原動力を自ら切り捨てる行為に他なりません。

もし、「内製／外注」の慎重な選択によって、労働環境の改善や社員の成長機会の創出が叶えられれば、企業は社員＝原動力を維持し、持続的な成長を支える力とすることができます。

コスト削減だけでなく、社員のモチベーションや働きがいを維持するためにも、外注の活用を戦略的に検討することが大切です。

どの業務を社内で回し、どの業務を外部に委託すべきかを整理し、リソース配分の最適化による競争力強化のチャンスがないか、改めて分析してみてはいかがでしょうか。