賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「業務過多の改善」です。
組織構造から分析し、業務過多の解決へ
業務停滞から抜け出すヒント
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
「業務が回らないので人を増やしてほしい」「本来はもう一人必要な業務量です」経営者の皆さんは、ことあるごとにこの手の「増員要請」を聞かされていることと思います。人口減少や少子高齢化で、世間の人手不足は確かに深刻です。
しかし売上を加速させるための営業部門ならまだしも、事業規模もさほど変わっていない、業務を回せているように見える非営業部門からの増員要請となると、なんとなく抵抗感を覚える方も多いのではないでしょうか。
しかも、要望通りに人員を増やしてみると、業務時間が減らないどころか、それでも忙しいと言って追加補充の要求さえ出てくる…、経営者からすれば「なんでみんなそんなに忙しいんだ、もっとうまくやれるだろう」なんてボヤきたくもなりますよね。
ですが、その多忙の原因は、実は従業員の業務スピードや処理能力ではなく、組織の構造や企業風土、管理者(経営者やマネージャー)の指示や判断の有無にあることが多数です。
例えば貴社には、次の3つの「業務過多」が存在していないでしょうか。
過度なリスク対策で「チェック業務過多」
責任感の強い真面目な従業員が多い職場は「100%の完璧さ」を追求しがちです。優秀な従業員ほど小さなミスを放置できず、問題が再発しないよう予防策を考え、新たなルールを設ける傾向があります。
予防策を講じることはもちろん重要です。しかし、いつの間にか増えたルールが膨大なチェックを生み、結果として業務進行を妨げることになるケースが少なくありません。
ここで大切なのは、「頻度・影響度」と「新たなルール設置による工数」を天秤にかけ、そのルールが本当に必要かどうかを判断することです。
そしてこの判断は、担当者ではなく業務の管理者が行うべきでしょう。
経営の上では、発生頻度が少なく影響も小さいリスクに対して、あえて何もせずリスクを容認(保有)する選択肢も考えられます。
ヒューマンエラーによって少額の金銭的損失が発生する問題であれば、チェックを二重・三重にするのではなく、損失を最初から予算に織り込んでおく方法も検討できます。
管理者がリスクを適切に管理することで、従業員の負担を軽減し、より重要な業務に集中させることも可能なのです。
全員参加は効率的か「会議業務過多」
特に新規プロジェクトを進める際、大人数で会議を開く企業を多く見かけます。「この人も必要」「あの人もいた方が良い」と次々に参加者が増えるのですが、参加者を増やせば業務時間が削られます、果たして効率の良い選択でしょうか。
先日、地域で後発ながら急成長している管理会社を訪問しました。
その企業は、他社にはない斬新な取り組みで集客を図り、管理戸数も右肩上がりで増加しています。さらに、業務を効率的に少人数で回すことで、高い利益率を実現しています。
「従業員も少ない中で、これだけ多くの新規企画を打ち出すとなると、従業員が打ち合わせなどに参加して大変ではないですか?」と尋ねたところ、社長はこう仰いました。
「“早く行きたければ一人で進め、遠くへ行きたければ皆で進め”ということわざがあります。アイデアは他社に先駆けて具体化する必要がありますが、大人数で話し合うと時間がかかるため、まずは私が一人で進めます。事業が軌道に乗りルーティンワーク化できたら、従業員に維持運営を任せるのです」
この話から学んだことは、プロジェクト会議は必ずしも大人数で行う必要はなく、むしろデメリットが大きいケースもあるということ。
必要最小限の人数で会議を進めれば迅速な意思決定が可能になり、他の業務に集中できる時間も確保できるのです。
仕事の本質見極める「社内報告業務過多」
例えば、日報作成に毎日30分、月次会議資料の作成に丸一日を費やす企業があります。悲しいことに多くの場合、これらの報告書はほとんど見られたり使われたりしません。
日報や会議資料の重要性を否定するわけではありませんが、これらの目的はあくまで社内の情報共有や進捗確認であり、そのためだけに過剰に時間を費やすのは避けるべきでしょう。
実は、弊社も10年ほど前まで、この「社内報告業務過多」の問題に悩まされていました。
大量の会議資料をExcelで手作りする日々…、当時転職してきたばかりだった私は、使われない資料の多さに疑問を感じ、会議で出番のない資料を少しずつ、こっそりと削減していったのですが、それはここだけの話です(笑)
社内報告が煩雑化する原因には、手動でのデータ集計や重複入力、報告フォーマットの不統一などがあります。
対策としてSFAや業務アプリの導入、標準化テンプレートの使用、報告の目的と利用者の明確化が効果的です。
従業員は社長や上司のためではなく顧客のために仕事をしています。報告よりも顧客に価値を提供する業務に時間を割かせるべきです。
どれだけ人を採用しても、組織内に「業務過多」の構造が残ったままでは、根本的な忙しさは解消されません。
管理者は忙しさを従業員の数や能力のせいにするのではなく、まずは多忙を生む仕組みや風土が存在していないか組織を分析するところから始めるべきです。
業務をスリム化し生産性を向上させるカギは、管理者である皆さんの手に握られているのです。