賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「CRMの活用」です。
賃貸管理こそ「顧客関係管理」が最重要
突然の管理離れも実は必然…?
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
「前の担当者にも同じことを言ったんだけど…」「おたくは金のかかることしか連絡してこないね」管理会社のオーナー担当であれば一度は言われたことのある台詞ではないでしょうか。
思わず、「前任から聞いてないし…」「お金がかかるのは私のせいじゃないのに…」と嘆きたくなるところですが、しかし、担当が頻繁に変わるわりに引き継ぎもないのか同じミスが繰り返される、経営改善の提案どころか定期的な報告すらない、むしろ他社からの管理移管・売買営業のラブコールの方が多い…、そんな現状に嘆きたいのはオーナーの方かもしれません。
突然訪れるオーナーからの管理解約連絡も、果たして本当に「突然」でしょうか。数々の不満の蓄積の末の「必然」の連絡ではなかったでしょうか。
CRM活用で「未然」に解約防ぐ
このような状態では、どれだけ管理受託営業を強化しても穴の空いたバケツ状態。まずは既存管理オーナーとの関係構築が急務といえます。
近年は、顧客と良好な関係を構築するための「顧客とのコミュニケーションの管理」が商談発掘・売上拡大につながると、さまざまな業界で「顧客関係管理」という考え方が重視されていますが、顧客(不動産オーナー)との長いお付き合いを目指す賃貸管理業ほど、この顧客関係管理を大事にしなければならないビジネスもないでしょう。
既に多くの会社は、オーナーごとにカルテを作成して細かく情報を管理されていると思いますが、もしカルテを作成していない・エクセル等で作成したものしかないのであれば、いっそ「CRM」の導入を検討してもいいかもしれません。
CRM(Customer Relationship Management)とは、顧客ニーズや行動を理解し顧客満足度の向上や売上増加、顧客維持を図るため、顧客の情報ややりとりの履歴を管理することに特化した仕組み・システムのことをいいます。
管理会社がCRMを活用する大きなメリットは次の2つです。
①担当者⇒組織としてオーナー提案
売買担当が資産の組み替えとして売却提案をしている最中に、募集担当が家賃を下げてでもテナントを確保する提案をし、管理担当は物件のリニューアルを提案…。どの担当者もオーナーのために提案しているのですが、これではオーナーは選択に迷うばかりか、情報共有のされていない状況にかえって不安や不満を募らせるでしょう。
CRMの活用は、このような混乱の回避に役立ちます。各担当者の活動や提案の履歴をリアルタイムで共有することで、無駄や重複のない、会社全体で統一された提案をオーナーに提供できるようになるからです。また、オーナーのパーソナルな情報や履歴が蓄積されることで、担当者が交代しても基盤となる情報が途切れず、スムーズな関係構築が叶います。
②長期的視野で商談機会創出
管理会社としては、オーナーの所有物件情報や過去の取引履歴に加えて、現在直面している賃貸経営の課題や将来の投資計画、相続状況などの情報を蓄積していけると、その情報が宝の山に変わります。
CRMで詳細情報を収集・管理できれば、オーナーの抱える問題を一時的な提案で終わらせず、長期的な視点で支援し、解決策を提案していくことが可能に。土地活用や売買・相続相談の機会にもつながり、結果的に管理会社の収益向上に寄与します。
CRMは管理ソフトで兼ねるべきか
オーナーの基本情報はすでに管理ソフト(基幹システム)に登録しているからと、管理ソフトにCRMの役割を兼ねさせているケースも多く見かけますが、これは一長一短と感じます。
多くの管理ソフトはCRMの機能に乏しく、実現には複雑なカスタムが必要で、中にはカスタムのし過ぎで誰もメンテナンスできない状態に陥ってしまった、なんて会社様も。餅は餅屋と考え、管理ソフトはあくまでマスタデータとして利用し、CRMは専門のシステムを使うのが無難かもしれません。
CRMの役割は、お得意様の情報を管理し、どのスタッフでも最高のサービスを提供できるようにすることです。管理会社のオーナーに対する最高のサービスは、お預かりしている物件の資産価値を高め、賃貸経営を成功に導くことでしょう。 そのために必要な情報として、あると役立つ登録項目を下の表1に挙げました。あくまで参考例で、実際には自社がどんなサービスを提供したいかを踏まえて情報を集積していくことになります。
一筋縄ではいかない履歴入力ルール化
CRMをフル活用するには、全スタッフが情報を逐一登録することが必須です。しかし履歴の登録は手間で面倒…、弊社も入力のクセづけには半年以上かかりました。登録文化浸透のコツは、CRMを「行動管理ツール」として活用すること。履歴には「誰がいつ入力したか」のログが残るため、これを利用すれば日報や月報の代わりに個人の行動管理ができるようになります。
弊社では、売上につながる行動数(例:オーナー面談数、物件調査数、提案回数)を人事評価項目の一つとしており、その集計をCRM内の行動ログで行なうようにしたことで、各人の活動履歴の入力がなおざりになることを防ぎました。
一方で、CRMはデジタルサポートに過ぎず、オーナーから情報を聞き出すのは担当者です。オーナーとの関係構築においては、CRM活用と同時に担当者に対する知識やヒアリングスキルの教育にも力を入れていくことが重要です。