コロナ禍の賃貸業界、外国人募集に回復のきざし
長期滞在の外国人、3月1日から入国制限緩和
外国人の新規入国については、原則として全ての国・地域からの新規入国を一時停止し、「特段の事情」がある場合に限り、新規入国を認めていますが、
下記ア又はイの新規入国を申請する外国人については、日本国内に所在する受入責任者が、入国者健康確認システム(ERFS)における所定の申請を完了した場合、「特段の事情」があるものとして、新規入国を原則認めます。
ア 商用・就労等の目的の短期間の滞在(3月以下)の新規入国
イ 長期間の滞在の新規入国
外国人向け賃貸に活気。苦戦物件の需要も回復か⁉
皆さん、こんにちは。コンサルタントの萩原です。
2020年初頭から始まった新型コロナの蔓延により、外国人入国者の数はすっかり激減してしまいましたね。今まで外国人入居者を頼りに募集活動をしてきた物件は大いに苦戦された(されている)かと思います。
就労外国人や留学生が多いエリアの賃貸管理会社からは、管理物件の稼働率がコロナ前より2%以上減少したと言う声も聞こえます。また、2021年11月末にはオミクロン株が出現したことで外国人の新規入国が再度停止する事態に。そのため、外国人向け賃貸は今年の繁忙期も厳しい状況が続いていました。
そんな中、ついに3月1日、観光目的以外の外国人の入国制限の緩和が外務省から発表されました。
これにより3月度の外国人需要は大きく上昇。先日の全国賃貸住宅新聞の一面記事でも、とある企業で外国人申込数が去年の数倍になったり、外国人専門の家賃債務保証事業を行なう株式会社グローバルトラストネットワークス(GTN)が「業績が過去最高を記録」したりするなど、市場の活気が伝わってきます。
データで見る外国人数。規制緩和のチャンスを活かせるか
ところで読者の皆さんは、コロナ前後の外国人訪日数がどのように変化してきたかご存じでしょうか。上のグラフは観光庁が発表している外国人入国者数などの推移を表したものですが、折れ線が令和2年からガクンと落ちているのが分かります。
データを細かく見ていくと、訪日外国人旅行者数は2019年に約3188万人を記録したものの、コロナ後の2020年は約411万人、 2021年には約24万人にまで急落。たった3年で99.2%も減っていました。コロナ禍だからと納得はできても、激減具合には驚いてしまいますよね。
一方、賃貸で気になるのは、留学生や技能実習生、永住権を持つ方など賃貸物件を借りる外国人の動向です。
出入国在留管理庁の公表資料を調べてみたところ、在留資格を持つ外国人の入国数は2019年度に約60万人いたにもかかわらず、2021年度には約8万人と、減少幅は実に87%。賃貸のターゲットになりうる外国人がそれだけ減っては、そりゃあ外国人を頼りにしていた物件は決まりませんよね。
今回の入国制限緩和をきっかけに、2019年度にいた約60万人の外国人のうち、果たしてどのくらい戻ってくるでしょうか。
別のデータになりますが、貸家の新築着工数は毎年30~35万戸ほど(国土交通省「令和2年度建築着工統計調査報告」)。もし、60万人が戻れば、単純に考えても賃貸の空室改善は大いに期待できそうですね。
しかしながら、オミクロン株のときのように、またいつ規制が厳しくなるかもわかりません。繁忙期は終わりましたが、規制緩和の今こそ外国人を獲得する貴重なチャンスです。即入居ができるようリフォームしておくことはもちろん、外国人に人気の家具家電付きに切り替えたり、初期費用が安くなるキャンペーンを打ち出したりするなど、このチャンスを最大限に活かしていきましょう。
外国人の入居増、事前のトラブル対策も重要
外国人入国の獲得に注力する一方、合わせて気をつけたいのが外国人ならではの賃貸トラブルです。
コロナ禍で在宅時間が増えたことにより、騒音問題やゴミ問題が全国的に増加していることは、皆さんも身に染みて実感されているかと思います。そんなときに日本に不慣れな外国人が加わると、ひょっとしたら火に油を注ぐ事態になってしまうかもしれません。
初めて日本に来る外国人の方は日本のルールが分かっていないのが普通です。まずは外国人入居者への当然のフォローとして、入居前に対面で、紙面を用いて下記のような過ごし方をしっかりと説明していきましょう。
《ルール説明の例》
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今回は、外国人の入国規制緩和によるチャンス到来の話と、外国人の入居で想定されるトラブル対策を簡単に紹介しました。
コロナ禍という躓きはありましたが、日本で暮らす外国人の数は今後も増えていくことが予想されます。在留外国人数の回復に備えて、外国人入居者を上手に受け入れることができれば、日本に来たばかりの外国人はもちろん、稼働率アップでオーナーの信頼獲得にもつながるかもしれませんね。