ニュースにヒトコト

公開日:2022年5月20日

最高裁の「路線価否認」判決。相続税対策で改めて考えたい不動産管理会社の役割とは?

最高裁の「路線価否認」判決。相続税対策で改めて考えたい不動産管理会社の役割とは?
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不動産相続めぐる裁判で相続人敗訴

「伝家の宝刀」は適法、追徴課税3億円

高額な不動産を購入して数億円規模の節税を図った相続人に対し、国税当局が「伝家の宝刀」と呼ばれる手法で、約3億円の追徴課税を行った今回の事案。

相続人が課税処分の取り消しを求めた訴訟の判決が19日、最高裁(第三小法廷・長嶺安政裁判長)で言い渡された。最高裁は今日、相続人側の上告を退ける決定をし、相続人に追徴課税を課した国税の処分を妥当とする判決が確定した。

楽待不動産投資新聞2022年4月19日掲載記事より)

路線価による相続税評価、否認

皆様、こんにちは。コンサルタントの金井です。

実勢価格と路線価との価格差を利用して行なわれてきた不動産投資による相続税対策。賃貸管理会社に勤める皆様の中にも、これまでにオーナー様への相続対策の一貫として、ご提案をしてきた方も少なくないでしょう。

そんな中、路線価方式による相続財産評価を「不適当」として、国税の追徴課税を認めた最高裁判決が出たのは大きな衝撃だったのではないでしょうか。

「あからさまな」相続税対策にはご用心

今回の問題は、北海道で不動産会社を経営していた当時90歳の男性が、東京都(物件A)と神奈川県(物件B)に2つの物件を購入したことから始まりました。

皆様もご存じの通り、路線価による財産評価はおおむね時価の8割程度となるように設定されていますが、時価の変動が大きい市街地などでは、目安の8割という数字とかけ離れた価額が路線価に設定されてしまうこともあります。

今回のケースでも、一見すると実勢価格と路線価とのかい離が大きいが故に、国税の追徴課税が認められたようにも思えるのですが、判決の焦点となったのは、相続人による税金逃れとも取れるあからさまな節税でした。

 

【今回の流れ】

まず注目したいのは、被相続人が物件ABの購入時点で90歳を超えており、その後3年ほどで亡くなっている事実。

その後、相続人は物件Bを1年足らずで売却しています。資産運用ではなく節税を狙った不動産投資であるとみなされても仕方のない急展開でしょう。

また、合計して約13.8億円で購入した不動産を、路線価等から評価額3.3億円と、目安の8割からは程遠い1/4程度の価額で算出し、さらに借入を考慮して相続税を0円としたことが行き過ぎと判断されました。

事実、判決文には実勢価格と路線価の乖離だけをもって路線価を否定したわけではないと明示されています。

 

ここで皆様に当然浮かぶであろう疑問としては、実勢価格と路線価との乖離についてどれくらいまでなら妥当と認められるのか、ということだと思いますが、残念ながら今回の判決では明確な判断基準が述べられることはありませんでした。

これを受け、「不動産投資が萎縮してしまう」「相続人にとって不公平な結果だ」という意見も見受けられ、今回の判決に否定的な方も多いように感じます。しかしながら、プロパティマネジメントを行なう我々も同じように嘆いていていいのでしょうか?

改めて考えたい「不動産のプロだから」できること

皆様に思い出していただきたいのは、何千万、何億という不動産投資をすることで、オーナー様が節税を行なうことの「そもそもの目的」です。

それは、相続人となる遺族に少しでも多くの「資産を残すため」であるはずです。であれば、賃貸経営の中で資産を増やし、そのお金で税金を払い、現時点で保有している財産を目減りさせずに残せるなら、無理な節税をする必要はありません。

節税額に目的がいってしまうオーナー様が増えているのも事実ですが、そうしたオーナー様には今回のニュースを知らせるとともに、資産を増やし資産を遺すという本来の目的に立ち返らせるのも、不動産のプロである皆様の役目ではないでしょうか。

「相続税対策について相談されたらどうしよう」と不安に感じている方も少なくないかもしれませんが、そんなときは、いま一度親身になってオーナー様とお話ししてみてください。「子どもたちに資産をちゃんと残したい」という目的を聞き出すことができれば、皆様なら賃貸経営を成功させるためのあの手この手を提案できるはずです。

また、今回の「13.8億円の物件評価が3.3億円まで下がる」ようなケースは、それほどたくさんあるわけではないと思われます。不動産投資による相続税対策が否定されたわけではありませんので、相続税対策への不動産の活用については、今後もオーナー様のニーズや資産状況に合わせて提案していきましょう。

制度の範囲内で効果的な節税を行ないつつ、オーナー様の不動産投資を助けながら資産価値の向上を目指しましょう。

今回のヒトコトはこの人・・・


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