賃貸・家庭用サウナは空室対策の圧倒的な差別化になる?
家庭用サウナ、オリラジ藤森慎吾氏の新居で導入
北欧サウナの輸入・販売事業を展開するtotonoü(本社:エストニア・タリン、代表:齋藤アレックス剛太)は、オリエンタルラジオ・藤森慎吾氏の新居で、totonoüの家庭用サウナを導入いただいたことを発表します。
賃貸住宅でも導入可能、全国シェア0.01%の希少価値
こんにちは、コンサルタントの萩原です。
突然ですが、皆さん「サウナ」は好きですか? 私はとっても好きです(ミーハーです)。
サウナといえば、銭湯や温泉旅館などでお金を払って利用するイメージですが、今はなんと家庭で使えるサウナ設備も登場しています。冒頭のニュースでは、お笑いコンビ・オリエンタルラジオの藤森氏が、サウナが好き過ぎるあまり自宅にまで設置してしまったことを伝えていますが、本当にやってしまうとはびっくりですね。
家庭用サウナの設置に際しては、室内電源の仕様変更・各種行政機関との協議・管理組合との合意形成・オーナーへの説明など、さまざまなハードルこそあるものの、それらを乗り越えれば導入は可能です。
ポータルサイトのホームズで【サウナ付き物件】と検索すると、募集中の総物件1,422,498件のうちサウナ付きは256件、市場シェア率0.017%という結果でした(2022年5月20日時点)。
サウナ付きといっても、実際には「近隣に銭湯がある」だけの物件も含まれていますので、「室内にサウナがある」物件だけで考えるとさらに少なくなってきます。
ここ数年はサウナブームが続いていますので、非常にニッチな入居者ニーズですが空室対策のひとつとして考えられるかもしれません。
ニッチだから良い? 重要なのは「ニーズの高さ」
とはいえ、市場にサウナ付きが少ない(希少価値が高い)からと、じゃあ空室が決まりやすくなるか、はたまた家賃を上げられるかといったら、そうではありません。サウナ付きは当然、サウナを求めている入居者がいなければ魅力にはなりませんし、サウナ以外の室内設備や条件が良くないと選ばれることもないですよね。
重要なのは、物件を取り巻く市場において「果たしてサウナニーズが高いかどうか」を判断する視点です。サウナ付きは少し尖った対策ですので、他の条件・対策で考えてみましょう。
例えば、ファミリー需要のない単身エリアに新築「4LDK」の賃貸物件を建てたとします。オーナーは「広い方がいいよ」と言うかもしれませんが、冷静に考えて、それって絶対に求められないですよね。市場ニーズと収益性を考えれば、1Kを3つ作った方がいいのは明らかです。
ほかにも、冬の寒い時期でも10度を下回らない沖縄に「床暖房」なんてどうでしょう? はい、十中八九ダメですよね! どちらも機能としての魅力はあれど、そのエリアの入居者ニーズにかみ合ってるとは言えません。
これくらい分かりやすい「ズレ」ならいいのですが、実際にはもっと小さなズレがいくつも重なることで空室が生まれています。私たちはニーズを見抜く視点・ズレを是正する視点を獲得する必要があるのです。
入居者ニーズには優先順位も
また、入居者ニーズには優先順位があるものです。
例えば、オシャレな間接照明は人気ですが、エアコンや水回り設備が老朽化しているのに照明交換を優先する、というのも空室対策として上手くいく感じはしませんよね。
あるいはオーナーにこだわりがあったりして、「何よりも間接照明が重要だ!」なんて要求をぶつけられるケースもあるかもしれません。しかし、「こだわり」だけを優先すると、せっかくの空室対策が手痛い失敗に終わってしまう危険性も高まってしまいます。
奇をてらったアイデアに走るより、万人受けが狙える空室対策から手をつけた方が稼働率はよっぽど上がるはずです。物件を清潔に保つとか、「人気設備ランキング」(全国賃貸住宅新聞社)の上位に来るような設備から交換・設置をするとか、まずは基本的なことから押さえていくべきでしょう。
「根拠なきこだわり」が生んだ3つの失敗談
ちなみに、私自身も根拠のない「こだわり」のために多くの失敗をしてきました。
恥ずかしながら、ここでは3つの失敗談をご紹介していきます。
“独立洗面台”にこだわり過ぎたが故の失敗
《居場所を失った冷蔵庫》 狭小物件のリフォームで、元々の冷蔵庫置場に「独立洗面台」を設置。しかし、今度は冷蔵庫の置き場がなくなり、居室に置かざるを得なくなったせいで、狭い部屋がさらに狭くなることに。せっかくリフォームしたのに募集で苦戦してしまった。 |
当時、まだ経験の浅かった私は、一人暮らしをするなら独立洗面台が絶対に必要だと信じていました。独立洗面台があれば誰もが喜ぶという先入観があったのです。それで管理物件のリフォームを機に、独立洗面台の設置をオーナーに提案したわけですが、見事に失敗。仲介会社からも文句を言われてしまいました…。
単身男性エリアにセレブ部屋という失敗
《場違いなセレブ部屋》 社会人男性が多いエリアの単身者向け物件に、艶やかな紫色のクロスが光る「セレブ部屋」を提案。内見があっても、なかなか決まらない物件に(泣)それでも最後は社会人男性が入居してくれるとのことで決定。問題のクロスは「仕事であまり家にいないから気にしない」とのこと…。 |
セレブ部屋を提案したときの私は、いろんなコンセプトに挑戦してみたいと思っていた時期でした。最終的にはリノベーション提案集のような冊子作りを目標としていましたし、紫色のクロスはまだ使ったことがなかったので一度やってみたいという気持ちもありました。
ええ…、入居者ニーズなんてそっちのけですよね。仲介会社からは「派手ですね~」と苦笑いされる始末で、今も苦い思い出です。
絶対ウケると思った“天井に黒色クロス”という失敗
《黒色クロスを導入後、不吉と嫌われる》 思い切って天井に黒色のクロスを提案。仕上がりは非常にかっこよく、仲介店舗やお客様からの評判も上々。…しかし、オーナーがまさかの「黒嫌い」。こんな色は不吉だと言われ、張り替えするかしないかでモメることに。 |
入居者ニーズの話からは少し逸れますが、個人的に「カッコイイ」「人気出る」と思った対策が、結果的にオーナーニーズを無視する事態になってしまいました。カフェなどのオシャレなお店で使われる黒色天井ですので、オーナーには需要があると説得して何とか承諾いただきました。オーナーとの関係はその後も良好でしたが冷や汗をかきましたね。
空室対策は現場の声、データ分析を忘れずに
いかがでしょうか。ひょっとしたら皆さんの中にも、私と似たような失敗をされた方がいらっしゃるかもしれませんね。
上記の失敗で、私の反省点は大きく分けて2つあります。
一つ目は、現場(仲介店舗)の声を全く聞かずに突き進んでしまったこと。自分が作りたい部屋を実現させることを優先し、営業マンが紹介しやすい部屋を作るということを度外視してしまいました。
二つ目は、お部屋探しに来るお客様の分析が足りなかったこと。年齢、性別、引越理由、単身かファミリーか、希望家賃帯などのデータを研究しなかったことで、入居者ニーズとはかけ離れた対策を行なってしまいました。
空室を埋めるためにいろいろと考え、実行することは、管理会社の担当者として素晴らしいことです。とはいえ、見切り発車で間違った対策をしてしまうと、せっかくの努力が無駄になり、オーナーとの関係も微妙なものになってしまうことも…。
あれやこれやと根拠もなく「やってみよう!」となるのではなく、対策した結果を「求める人」がいそうだからやってみる、という視点を持つことが大切です。その視点があって初めて、入居者への訴求力も増し、物件の稼働率も改善され、貸主借主双方に喜ばれることになるのです。
市場分析した結果、サウナ付きがベストだ!となり実行された際は、是非体験取材させてくださいね(^ ^)!