「ニュースにヒトコト! 気になるアレに注目!! 」
このコーナーは、賃貸管理に関するニュースの中から気になるものをピックアップし、当社のコンサルタントがヒトコト言わせていただく企画です。
不動産取引時、ハザードマップ重視が41.5%に
災害情報を開示して信頼獲得を
不動産取引をする際、ハザードマップなどの災害情報を参考にする人が41.5%に上り、年々増えていることが、国土交通省の調査で分かった。
近年は豪雨や土砂崩れ、洪水などの災害が全国で頻発しており、国交省の別の調査では、昨年の水害の被害額は6500億円。国民の意識が高まっているとみられる。投資家も、物件を売却したり貸し出したりするときに災害に関する情報をしっかり示すことが、条件面で有利に働いたり信頼を得たりすることにつながりそうだ。
(健美家 9月 19日配信記事より抜粋)
備えは大丈夫? 不動産業界で高まる防災意識
皆さん、こんにちは。沖縄県宮古島出身のコンサルタント山城です。
ご自身のお部屋探しをする際、皆さんは水害などの災害情報を気にしたことはあるでしょうか。中には災害なんて気にならないという方もいるかもしれませんね。
そういう私も、故郷の宮古島にいた頃は、自分の住んでいる地域でどんな災害リスクがあるのかなんて考えたこともありませんでした。何より宮古島には川が存在しないため、特に水害とはずいぶんと距離があったように思います。
しかし、近年は集中豪雨をはじめとする水害が多く発生しています。水害と無縁でいられた私も、東京に越してきて、身近なところで水害の様子を聞くようになってからは防災意識が180度転換。今では災害リスクの大小がお部屋探しの大きな要素だと感じています。
さて、上の記事で紹介されているのは不動産売買についての意識調査でしたが、防災意識の高まりは賃貸住宅でも同じこと。
皆さんもご存じの通り、2020年8月から賃貸借契約を交わす際、重要事項説明の段階で、対象物件の水害リスクについて水害ハザードマップを用いた説明を行なうことが義務化されましたよね。もちろん、この法律の施行も近年になって水害が多発していることが背景にあります。
残念ながら、2021年もすでに多くの被害が報じられています。とりわけ水害の被害は大きく、毎年どこかが被災することを考えれば、私たち管理会社も入居者に安心して暮らしてもらえるような防災対策に取り組んでいく必要があるでしょう。
入居者の抱く災害不安をどう解消するか
防災はオーナー&管理会社の連携が大切
私事ですが、最近引っ越しをする機会があり、仲介店舗で水害ハザードマップについての説明を聞くことがありました。すると、私が選んだ物件はなんと真っ赤に塗られた河川の氾濫区域内に。「大丈夫だろうか」と入居前から不安に襲われてしまいました。
結局その物件に決めたものの、水害については重説後に市町村のハザードマップを手渡されただけ。それ以外に説明もアドバイスもなかったため、実際に住み始めた今も不安を抱える羽目になってしまいました。
こうした不安は、きっとほかの入居者にも共通するものでしょう。そして、不安は入居期間にも悪影響を及ぼしかねません。入居者感情で考えると、水害の危険がある場所に住んでいるのですから早く転居資金を貯めて安全な場所に移りたいと思うのが普通ですよね。
せっかく入居付けができても、水害リスクについて安心感を持てないと入居者にとって長く住み続けられる物件ではなくなってしまうわけです。
早期解約となると、賃貸経営にとってはマイナス以外の何物でもありません。管理会社としては、入居者の抱く水害への不安をどう解消できるのか、解約抑止の施策が今後ますます重要になるでしょう。
そこで、入居者の災害不安を解消し、長期間の入居を叶えるための防災対策を3つ、紹介したいと思います。
水害被害を抑える3つの防災対策
1.災害キットを準備しておく
まずは万が一に備えて、ブルーシート、土のう、ポリタンクなどの災害セットを準備しておきましょう。一時しのぎではありますが、浸水を見過ごすわけにもいきません。ブルーシートなどで応急処置を施せるよう備えておくといいでしょう。
また、災害セットが準備できたら、入居者への通知も忘れずにしてください。お知らせをすることで入居者もひとまず安心するはずです。
2.敷地の高低差を把握しておく
物件のどこに水が集まりやすいのかも調べておきましょう。水は高い所から低い所へと流れていきます。見た目にも坂になっている場所は分かりやすいですが、実は平地でも、目視では確認しづらい多少の高低差があるものです。物件敷地にどのくらいの高低差があるのか把握しておきましょう。
3.屋上や屋外にある排水溝・クラックの確認
集中豪雨や台風のときは、敷地周辺や建物共用部の排水溝が詰まってしまうと、水が滞留し、水漏れなどの大きな事故につながってしまいます。また、クラックがあると割れ目から浸水し、雨漏りリスクがぐんと跳ね上がることに。
当社の入居者対応コールセンター「プロコール24」でも、ことし九州で豪雨災害が発生したときに予期せぬ雨漏り・水漏れが多数報告されました。災害リスクは常に潜んでいますので、被害につながりやすい排水溝・クラックの確認はしっかりとしておきましょう。
また、ご存じかと思いますが、雨漏りが起きてもいったん雨が止むまでは雨漏りを止めることはできません。
雨がまだ降っているのに漏水箇所を塞いでしまうと、建物内に流れ込んだ水が行き場を失い、新たな出口を探して別の場所に流れていきますので漏電などのさらなる事故に発展してしまう恐れがあるからです。
そのため入居者から雨漏りのクレームが来ても、漏水への対処は雨が止んでからとなります。対処自体も、浸水経路の見極めや散水調査を経てから、ようやくクラックなどを塞ぐ作業に移りますので、雨漏り発生から解決までは時間が掛かってしまいがち。やはり雨漏りを起こさないことが一番ですので、日頃からの点検・防水予防が重要な意味を持つのです。
大きく3つの防災対策を紹介しましたが、このほかにも、保険の加入など基本的な対策も機会を見つけて見直していきたいものです。また、ハザードマップなどを使い、物件近くで発生した災害情報を管理会社とオーナーとで把握しておくことも必要です。その土地でどんな問題が起きやすいのか、あらかじめ知っておくことで対策も立てやすくなります。
今の時代、長期入居に災害への安心感は欠かせません。入居者が安心して暮らせる住環境の提供と、水害地域に位置する物件の運用をスムーズに行なうためにも、日頃からオーナーと連携を取りつつ防災対策に努めていきましょう。