全国賃貸住宅新聞

公開日:2009年5月25日

第5回 何はなくとも、「市場調査」

第5回 何はなくとも、「市場調査」
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入居者・人気間取り別に徹底分析

「企画力」を高めるためにまずすることとは?

前回、前々回の連載原稿の中で、私は最後に「プロパティマネジメントとは、『提案』することだ」、そのためには、「企画力」が大事だ。「企画力」があれば、「物件の力」を上げることができる、と申してまいりました。その「企画力」を高めるためには、まず何をしたらいいかというと、それは、「市場調査/エリアマーケティングリサーチ」です。

今後、この連載で「リニューアルプロジェクト」、「建築プロデュース」の手法や、「空室対策提案」のいろいろを述べていきたいと思っていますが、それらの「提案」を遂行するためには、まず「現場」を歩いて「市場」を知る必要があります。
「市場調査」は、ある程度のことは誰でもやっていらっしゃると思います。よくあるパターンは、たとえば新たにアパート・マンションを建てようとした場合には、まず役所に行って(多くの場合、インターネットでも可)、人口動態を調べ、一応現場を歩いて物件の写真をいっぱい撮って、アパートは何棟、マンションは何棟ありました、間取りの種類はこういうタイプが多いです。「調べてきました!すごいでしょう」、みたいな「市場調査書」ですね(笑)。
人口動態を調べて、就業人口が何%、20代の人口が何人・何%ということを言われても、それが賃貸需要にどう結びつくのかがわかりません。そして、この手の「市場調査」には問題点が大きく二つあるのですが、まず、

1.もっと詳しく調べないといけないというのがひとつ、そして、
2.調べた結果、
(1)市場の問題点を把握・分析し、(2)問題の解決に繋がる「提案」をロジカル(論理的)に展開する、ということです。

「調べました!」そして、いきなり「うちのプランはこうです!」と唐突に提案してしまっているものが大半です。
調べた結果、何がわかって、だからこそこのプランです、というロジック(論理)がないのです。
このロジックというやつは、なかなか皆さん、苦手なようですね。「論理的に表現する」、ということができない方が大変多いのです。「なるほど!」と「説得力のある」提案書をあまり見たことがありません。
そうです、「市場調査」だけではだめで、それに繋がる「提案書」の体裁になっていなければならないのです。「市場調査&企画提案書」が必要なのです。

「市場調査&企画提案書」の作り方

ポイントは3つあります。まず、その賃貸住宅を建てようとする商圏エリアまた案件敷地における入居者の層を見極める(シェア)ことです。
私がいつもやっている分類方法は、

【家族形態別の入居者の分類】
a. 単身者(社会人・学生)
b. カップル(新婚、DINKS、同棲)
c. 未就学児を持つ夫婦
d. 小学生以上の子を持つ夫婦
e. その他母子家庭や三世代入居等

以上の5分類です。
エリア内にこれらの分類でいうと各層はどのくらいの割合で部屋探しをしているのか、をまず押さえましょう。意外に単身者が多いとか、カップルが多いとかの調査結果が出るものです。
そして、それらをターゲットにして商品作りをしよう、となります。これも単純なことですが、とても大事なことです。しかし、現状はこの分類調査すらせずに賃貸住宅はたてられていますね。
二番目に、入居者がどういった企画を好むのかという問題です。それも5分類の各層ごとに必要です。アパート・マンションにおける商品企画でポイントになるものは、私はいままでの経験から大きく分けて次の5点であると思っています。

【商品企画におけるポイント】
(1) 間取り
(2) 外観・外構・デザイン(物件の格)
(3) 設備・仕様(収納・エアコン・追い炊き機能等)
(4) セキュリティ(防犯性)
(5) 遮音性(構造及び建て方)

(1)の「間取り」と(2)の「外観・外構・デザイン」が2大ポイントで、この二つでほとんど決まるといっても過言ではないしょう。
「間取り」には、「専有面積」と「部屋数」、「使い勝手」という要素が入っています。私は、間取りの取り方・設計にもっともっと時間をかけるべきだと思っています。時間をかけて考えれば考えるほどいいものができてきます。(その他、その案件敷地に固有のものとして、家賃、立地・環境、日当り等があげられます)

そして三番目のポイントとして、そのエリアを徹底的に調べ上げるべきだと考えています。
エリア内に、1K、1DK、1LDK、2DK、2LDK、3DK、3LDKの間取りがそれぞれ何戸ずつあるのか、何戸空室があるか、そして、その他間取り以外の物件特性別(築年数、駐車場付与率、外観・管理状況等のランキング)の人気度(稼働率)はいかほどか、といったことをしっかり調べて企画している人はこの業界にはほとんどいません。
誰もこのエリアにどんな間取りが何戸あるかという問いに答えられないのが実情です。
圧倒的にデータが不足しています。まずデータを揃えなければ、何も考えられないのではないでしょうか。調べた結果、いろんなことが見えてくるものなのです。

以上、3つの調査をした結果、いろんな矛盾や、入居者ニーズに市場が応えていないことがわかってきます。
需給ギャップがあることがわかってきます。これは全国どのエリアでも間違いなくあります。その結果、ターゲットを決め、どの商品でいくのかを論理的に決めることができるのです。

賃貸住宅と違って、同じ集合住宅でも分譲マンションは比較的企画が簡単です。購入者の層とニーズがある程度掴み易いからです。
しかし、「賃貸」は圧倒的に情報が不足しています。よって、情報をしっかり集めるところからはじめましょう。確かに、この3つの作業は結構大変なのですが、情報が集まれば自然とどう企画したら良いかがわかってきます。「差別化」のアイデアも出易いでしょう。
「まだまだやりようがあるなあ!」と自信が沸いてきますね。それをクライアントにプレゼンすればいいのです。

私のところでは「提案」をする際には、必ずこういった「エリアマーケティングリサーチ」をして、「市場調査&企画提案書」をしっかりと製本して提出します。

その場合の成約率は大変高いと言えますね。7割くらいはあると思います。 賃貸住宅はいままでは本当に「適当に」作られてきた業界だなあ、と思います。そろそろそういう時代は終わりなのではないでしょうか?

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2009.5.25掲載)


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