少子化は賃貸業界の死活問題
育児上に結婚の支援、重要
前回の続きで、人口減問題を扱いたい。この2月に、また嫌なニュースが舞い込んできた。
日本総合研究所のレポートだが、昨年1年間の出生数は72万6000人と今までで一番少なくなるという推計を出した。
そして、1人の女性が一生のうちに産む子供の数の指標となる「合計特殊出生率」は推定で1.20前後に下がったというのだ。
人口が維持できる出生率は2.07だそうだから、危機的状況といえる。
戦後すぐのベビーブームの頃は年間で270万人も産まれていた。
田中角栄の列島改造論の1972年頃が第二次ベビーブームで200万人、それから右肩下がりに減って2016年に100万人を切った。
そして、昨年72万人である。加速化しているのだ。子供の数が減るのは、将来的に我々の商売のベースである「入居者が減る」、ということに繋がるわけで直接的に死活問題と言える。
前回、企業が努力して勤務する女性が子供を産んで産休を取ることをもっと奨励すべきだと書いた。
しかし、結婚しているカップルから生まれる子供の数は確かに徐々に減ってはいるが、1.9人程度はあるのだ。
図表1を見てほしい。これは「完結出生児数」と「合計特殊出生率」の推移を同じグラフで表したものだ。
「完結出生児数」とは、簡単にいうと「夫婦の持つ子供の数」のことだ。ここのところ、2.0人を切って1.90人になっているが約2人前後だといえる。
「合計特殊出生率」との乖離が激しい。最新では、1.20というのだから。
この乖離はこう説明できる。「合計特殊出生率」の計算式の分母は15〜49歳の全ての女性である。
つまり既婚女性だけではなくて、未婚女性も含んでいる。
日本では婚外子がほとんどいない状況なので、未婚女性の出生率はほぼゼロだ。
既婚女性が約2人を出生しているが、分母の未婚女性の割合が多くなればなるほど、合計特殊出生率は下がる。
つまり、日本の出生率の低下の大きな要因は「夫婦の子供の数が減ったこと」よりも「未婚者が増えたこと」にあるのだ。
つまり、少子化の最大の原因は、結婚する若い人が減っていることなのだ。
「恋人や婚約者がいない」と答える18歳から34歳の未婚者は男性で約8割、女性で約7割強もいる(国立社会保障・人口問題研修所2021年調査)。
「50歳時未婚率」は、男性で約3割、女性で2割弱もいて(2020年国勢調査)、年々増えているのだ。(図表2)
しかし、「いずれ結婚するつもり」と答える未婚者男女は徐々に減ってきてはいるとはいえ8割強もいる(国立社会保障・人口問題研修所2021年調査)。
このギャップはなんだろうか?
図表3に「なぜ結婚しないのか?」に対する推測できる答えを記してみた。
「1、年収が足らないと思っている」だが、「生涯独身社会(天野馨南子著)」によると、実際に結婚したカップルより未婚者のほうが、結婚後に求める年収が高いそうだ。
結婚生活にはもっとお金がかかると思ってしまって結婚に踏み切れないということかもしれない。
「2、まだ焦らなくていいと思っている」は、昔の親の世代は、高卒が主流であったが、いまは大卒が半数以上になっていて、社会にでる年齢が4年ほど遅くなっている。
昔の結婚適齢期である男性28歳、女性25歳は、社会に出てまだ間もないので、当然まだまだ早いと思ってしまうのだ。そして
「3、会社(社会)がまだ早いと思っている」は、これらの事情から、会社も入ったばっかりで、結婚など考えずにまだまだ独身でバリバリ働いたらどうか、と思っているのだ。
天野馨南子さんはこれを「晩婚化推奨企業」と言っている。我々企業人は、若手に「入社間もないが、早期に結婚することを歓迎する」と言わなければいけないのだ。
「4、男女の出会いが少ない」、これはネットが解決するかもしれない。限られた職場や合コンだけでは、出会う相手の数は少ない。国立社会保障・人口問題研究所の2021年の調査で、「ネットで」知り合って結婚にいたったという割合が13.6%まで上昇している。
2024年の今はもっと多いのではないか。当社でも婚活アプリで知り合って交際している、また結婚したものが数組いる。また、当社では婚活パーティをセミナールームで行っているが、コロナ前に3回行い、3組がゴールインした。
不動産業界の人を中心に独身者に集まってもらうガチの真面目なパーティだ。
もっと、まわりの大人が「おせっかい」を焼くべきではないか?
「5、親元で同居」のパターンだが、これはまずいと思う。
家賃はかからない、食事は提供される、掃除もへたすりゃやってもらえるでは、結婚するメリットを当然感じないだろう。
日本の18歳〜34歳の男女の親との同居率は約半数だそうだ。
結局、「親が悪い」ということかもしれない。親が子供を甘やかしているのだ。
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