
第172回 仕事ができるとはどううことか?
- 全国賃貸住宅新聞
「仕事ができる」カギは「国語力」
読書とプレゼンで鍛える
「仕事ができるとはどういうことか?」というテーマが私のライフワークだと思っている。
「仕事ができる」とは、「真に頭がいい」と言い換えることもできる。
一般に学生時代には勉強ができると優秀な人だと言われる。
しかし、学力レベルの高い学校を出ていると、必ずしも仕事ができるようになるとは言い切れない。
「勉強ができること」と「仕事ができること」は、一定の相関関係があるとは思うし、勉強しないより勉強したほうが良いに決まっていると私は思うが、残念ながらイコールではない。
学者になるとか研究者になるとか、私はそれらの世界のことはよくわからないけれども、一般にビジネスの世界で生きてゆくには、学校の成績では測れない種類の「頭の良さ」が必要なのではないだろうか。
学生という立場が終わって社会人になると、頭の良さを測るものさしが、突然変わることになる。
「勉強ができること」から「社会に適応できること」に切り替わるのだ。
ちなみに私の会社は東京を中心に、200名超のスタッフがいるが、上からトップ10人の人はそんなにいい学校を、私を含めて(笑)、出ていない。
新卒採用でひとつの基準となっている(できればこのクラス以上を取りたいという意味)G -MARCH(G―マーチ:学習院、明治、青山学院、立教、中央、法政大学の略)以上の偏差値の大学を出ている人は2人だけだ。
あとは、名も無い大学か高卒である。
しかし、仕事ができる連中だ。
何が違うのか。
何を習得すれば真に頭の良い仕事ができる人になるのだろうか。
文部科学省の学習指導要領が2020年に改訂された。
「生きる力を育む」として、単にテストで良い点を取って評価されるだけの勉強ではなく、「生きて働く知識・技能の習得」を目指すとのこと。
「思考力・判断力・表現力」や「学びに向かう力」を伸ばしていくことを重視する方向へと変化した。
過去の「詰め込み教育」や「ゆとり教育」の反省点が活かされているらしい。
要は、「自分で考えて、自分の意見をちゃんと持って人と対話できること」、また「問題点を発見して、自分で考えて、自分で実行できる」人を育てるということだ。
これはまさに「真に頭が良くて仕事ができる人」を作るということだ。
文科省も、現在の変化の激しい時代において、これまでの知識習得一辺倒の教育では立ち行かないと考えたのだろう。
本当の意味での頭の良さとは、学力でもIQでもなく、「現実の社会を生きていくうえでのさまざまな局面における判断や対応のあり方」だ。
では、そのための学習は何が最善か。そして、これは学生だけの話ではなく、社会人も同じ話だ。
それは、藤原正彦氏もまた齋藤孝氏も言っているように「国語力」だと思う。国語力とは「語彙力」、「要約力」、「文章力」、「論理力」、「文脈力」のことだ。
文脈力とは「意味をつかまえることだ」(齋藤孝「頭がいいとは文脈力のことである」)。
文章読解力とは、その文章が伝えようとしている意味を把握することだし、現実の意味をきちんとつかまえられなければ社会では通用しない。
意味をつかまえるというのは、その事柄の内容だけでなく、相手も言っていることや考えていること、その場の状況をわかろうとすることだ。
会話でも内容が分かりにくい、伝わらないのでは話にならないし、相手の立場にたってつまりその場の文脈・空気を読んで発言したり行動するということも国語力ではないか。
「頭がいい」というのは相手の意図とか感情とか理論、その人が何をしたくてどうしてこう言っているのかがわかる人。脈略をつかまえられる人だ。
読解力が低い人と仕事で組むことになったら、どうなるか。こちらは重要なことを伝えたつもりでも、相手が的外れな受け取り方をしている可能性がある。
読解力の低い人は「言外の意味」が理解できないため、一から十まで説明しなくてはいけない。
「あとは任せた」には、とてもできない。
あるタスクを与えても、こちらが期待する成果物を出してこないスタッフがいる。
それは、この内容で相手が満足するだろうかという自分への問いかけ、また仕事の流れの脈略を理解できていないのだ。
そして、国語力を高める一番いいやり方は「読書」だと思う。3月13日号で、「読書」の有用性を書いた。
仕事ができる人は「知識・情報」の量が多い。そして、それは読書によって培われると。
そして、また読書は文脈力を鍛えることができる。本を読むと言語能力が磨かれてゆく。
そして、自分自身の言葉として話したり書いたりするような訓練をもっと重視すべきだ。
自分のことで恐縮だが、私がいままで受けてきた授業の中で一番役立ったといえるものは、浪人時代の代々木ゼミナール名古屋校で受けた「小論文ゼミ」だ。
ここでいかに論理的に文章を書くかを学んだ。論理的思考が鍛えられたと思う。
「書く」ことはとても重要だ。
また、当社では、毎週火曜日の朝礼で、スタッフに「5分間書評プレゼン」というものを交代でやってもらっている。
好きなビジネス書を選んで、要約して5分間で話すのだ。
パワーポイント等を使ってもいけない。
言葉だけでプレゼンする。
文字数でいうと1400文字程度が最適だ。
これはよい訓練になると思う。2回目ともなると、慣れてきて良いプレゼンになる。
私事だが、この夏に母校の高校の同窓会があった。
三重県では優秀な学校である四日市高校に私はなんとか入学したのだが、机に座って勉強をコツコツすることが苦手で、成績はかなり悪いほうだった。
真面目な進学校なので、同級生の男子は一部上場企業に勤めるか、公務員か学校の先生が多い。
私のように起業して経営者になっているものは、ほぼいない。
人間観察が好きなので、同窓会には必ず顔を出しているが、それぞれの人生の歩みを知るのは興味深い。
なんとなくだが、男子より女子のほうが自分の足で立って自分の好きな職種で頑張っているような気がする。
昭和36年生まれの私の世代は、女子は結婚したら寿退社するのが当たり前の時代だったから、子供がある程度大きくなって、自分なりに努力して職場復帰していまの職種を勝ち取っている。
男子はもう大体定年を迎えて第二の人生を歩んでいる。
いまだバリバリ働いているものいれば、次の職場を探しているものもいるし、無職もいる。
女子よりは当然ながら、社会の「型」にはまっていて、微妙な年齢に差し掛かっているようにみえた。
私には女子のほうが、「社会に適応」しているように見えたのは錯覚だろうか。
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藤澤 雅義(フジサワ マサヨシ)/Mark藤澤オーナーズエージェント および アートアベニュー 代表取締役プロフィール:
オーナーズエージェント株式会社 代表取締役であると同時に、
賃貸管理会社 株式会社アートアベニューの代表取締役を務める。しかし、本人は「社長!」と呼ばれるのがあまり好きでないとのことで、
社内での呼ばれ方は「マーク」または「マークさん」。役職呼称を禁止にしている。あたらしいものが好きで、良いと思ったものは積極的にどんどん取り入れる一方、
日本の伝統に基づくものも大好きで、落語(特に立川志の輔一門)や相撲(特に時津風部屋)を応援している。「現場」で運用の実務にあたっているものが、一番不動産のことを理解し、
的確な投資分析及びオーナーの収益に貢献をすることができ、
また、仲介手数料収入に依存する仲介業者ではなく、安定収入のあるPM会社こそが、
クライアントの側にたって本当のアドバイスができる、が持論。2001年、不動産会社向けコンサルティング企業であるオーナーズエージェント株式会社を立ち上げ、代表取締役に就任。
また、アメリカのIREM®(全米不動産管理協会)発行の国際ライセンスである
CPM®(米国不動産経営管理士)の日本での普及活動にも尽力。IREM JAPANの創学メンバーである。著作に、
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