業務担当制を敷き情報管理部が全体の入居状況を分析
業務フロー構築が利益確保の鍵
今回は賃貸管理会社の組織のあり方、業務フローの構築の仕方について解説します。以前、管理会社は地方で500戸管理していると年間で営業利益が500万円はあるはずだ、と述べました。首都圏だと500戸で1,000万円確保することも夢ではありません。しかし、なかなか机上の計算通りにはいかないのも事実です。
それはなぜか?
私は、組織のつくり方・業務フローの構築の仕方に問題がある場合が多いと思っています。
まず、管理会社の組織のあり方には、大きく分けて2つのスタイルがあります。それは、「物件担当制」と「業務担当制」です。「物件担当制」は、たとえばAマンションはBさんの担当、CマンションはDさんの担当というようにして、管理取得から成約にいたる業務、クレーム対応など、物件ごとにすべての業務を特定の人が担当するスタイルのことです。
一方、「業務担当制」は業務の内容別に役割分担して遂行するスタイルです。一般論としては、管理戸数が少ないうちは物件担当制で、管理戸数が増えてくると業務担当制に移行していくことが多いようです。
ここで、「物件担当制」と「業務担当制」それぞれの、メリットとデメリットを整理してみましょう。
「物件担当制」のメリットは、1つの物件を1から10まですべて担当することで、不動産の管理運営についてさまざまな面から学ぶことができ、賃貸管理のゼネラリストを養成することができます。オーナーからみても、「うちの担当は○○さん」ということが明確になってわかりやすいですし、担当者も「これは私が担当している物件だ」という意識が芽生え、その物件に対しての愛着と責任感が増し、運営管理に対して気を配ることができます。
デメリットは、担当者の善しあしに左右されること。もし資質の低い者がその物件の担当になってしまったら、いろいろな面でオーナーに迷惑をかけてしまうことになります。また、あれもこれもやればどっちつかずになることもあるし、業務のバランスが悪くなり、当然のことながら、「業務担当制」に比べると効率はよくありません。
一方、「業務担当制」のメリットは、常に同じ業務を担当しているので、その業務に特化して能力が高まっていくこと。結果的に、スペシャリストの養成につながります。
例えば滞納督促に関しても、法的知識を吸収・蓄積することで、法的処理や裁判などで弁護士に依頼しなくても自社で処理することが可能になっていきます。また常に同じテーマに取り組むのだから、効率は良くなって当然です。
ただ、どうしても業務ごとの対応になるために、物件そのものに対しての一体感をもった取り組みは弱くなりがちです。
「私はクレーム対応担当だ」、「私は再契約更新担当だ」、あるいは「私は督促対応担当だ」と、与えられた業務だけをやればいいということになってしまい、オーナーが求める収益不動産の収益の確保、つまり稼働率の確保、入居者リテンション(保持)、空室率の減少という、最も大切なことに関心のないスタッフができてしまう恐れがあります。
結論としては、「物件担当制」の良さを維持しつつ、「業務担当制」を敷くのが理想といえます。
家主への提案に特化した部署が有効
次の表は、一般的な賃貸管理会社の組織図と業務分担をあらわしています。
「業務担当制」を4つの部署で敷いています。
完全に「物件担当制」を敷いていなくても、かといって、表2のように4つにわかれていない管理会社も多いようです。
「管理受託の営業」と「現場管理(クレーム対処)」の対応を一緒のスタッフにさせていたりするのです。
私は同じ経営者として、その気持ちもわからないでもないのですが、「かけもち」は基本的によくありません。どっちかの仕事がおろそかになっても言い訳ができるからです。なんでも集中してやった方がいいのです。ノルマも達成できません。
ただ、「業務担当制」には先述したデメリットがあるのも事実です。そこで、下図ように物件全体のことを考える部署をつくればいいのです。
(2)、(5)、(6)の部署が新たに加えた部署でそれに当たります。(2)の「提案・コンサルティング」の部署は、既存・新規を問わずオーナーに対して、現状の分析をして提案をします。今後の管理会社の運命は、この「提案」ができるスタッフが何人いるか、にかかっていると言って過言ではありません。この部署を作らなくてはいけません。
現状の分析は(6)の「情報管理」の部署が行います。「情報管理」の部署は、「物件・オーナーごと」の計数管理と、会社の「管理物件全体」の計数管理をして、市場の状況、会社の営業の状況を分析する役目です。これも管理会社にとって、とても重要なことです。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2011.07.25掲載)