訴求効果高い間取りは10畳以上のLDK
物件の価値は間取りで決まる
しばらく、「賃貸管理会社の組織論」的な話が多かったのですが、今回は、空室対策の大本命、「間取りの変更」について考えてみたいと思います。空室対策にもいろいろありますが、やはり究極的には「ハード面での改善」が必要となります。「物件の力」そのものを上げる必要があり、そのためには「間取り」「外観・外構」、「設備・仕様」の改善が効果的であり、その中でも特に「間取りの変更」が一番入居者に対して訴えることができるものだと考えます。「間取り」には、「部屋数」、「専有面積」、「有効面積(廊下や水回りなどの面積を控除したもの)」、「使い勝手」等々のいろいろな要素が含まれており、単に「1LDK」、や「2LDK」等の記号でくくられるものではないと思っております。そして、壁一枚分がちょっと変わっただけで不人気物件から人気物件に劇的に転換させることができるものなのです。
まず、図1をご覧ください。右の2DKは「洋間6畳×2+DK6畳」の間取りです。DKといっても、6畳では狭くてそこで食事なんてできないですよね。今どき、全然人気のない間取りです。それが、南側の洋間とDKの壁を取り払ったら、左の「洋間6畳+LDK12畳」の1LDKの人気の間取りに生まれ変わります。ちなみに昨年11月に不動産公正取引協議会からDK、LDKの定義についての指導基準が発表されました(図2)。2ベッドルームではLDKは10畳以上、DKは6畳以上ないといけないことになりましたが、私はLDKは10畳でも狭いと思います。
部屋の広さを優先し設置位置を調整
空室対策として人気設備を導入するのも一つの手ですが、ただ導入すればいいというわけではありません。部屋の広さを考慮して設備を考えなくてはなりません。図③をご覧ください。「リビングのあり方」ですが、右の「壁付きオープンキッチン」と左の「独立キッチン」とどちらのタイプの人気が高いでしょうか。一般的には、左の「独立キッチン」でしょう。新婚カップルに聞いたら10組中8組は左を選ぶでしょう。しかし、たとえばどちらも同じマンション内にあって、同じ日当たりで同じ家賃・設備・仕様であって同時に募集されていて、実際に見比べたらどうなるでしょうか。私のカンでは、おそらく半々くらいになるのではないかと思います。たしかに「独立キッチンタイプ」のほうが、対面式で家族に背を向けることもなく調理もできるし、対話もできる。また「壁付きオープンキッチン」と違っていろいろなものを隠せるので女性には人気でしょう。カウンターがあれば朝食はそこで食べようというイメージも広がり、憧れのキッチンといえるでしょう。逆に「壁付きオープンキッチン」はなんと「色気のない」間取りでしょう。しかし、「独立キッチンタイプ」はリビング部分は8畳しかなく、平面図上はソファもダイングテーブルも納まっていますが、実際に現場で見ればかなり狭いものです。また、斜線部分の約1畳分が単なる通路にしかすぎずデッドスペースになってしまっているのももったいないですね。
居室面積確保のためシャワーブースに変更
図4をご覧ください。これは愛知県半田市で私が企画支援した物件の間取りですが、専有面積57㎡にしてはよくできている間取りでしょう。あえて「独立キッチン」にはせず、16畳以上のLDKを確保し、また2LDKですが2部屋目は6畳確保せず、4畳の「DEN(所謂書斎)」にして、その分LDKを最大限広くしたものです。これはエリア・マーケティングの結果、2LDKに住む層が「子供のいないDINKS」や「単身者」が主であって、子供のいる夫婦が少ないとわかっていたのです。よって、「1LDK+DEN」でいいとしたわけです。賃貸マンションでLDKが16畳あるものはほとんど見たことがありません。よって、この物件は大変な人気を博しました。
最後に図5ですが、これは17㎡の1Kタイプです。左のタイプはバス・トイレにしたら部屋が6畳確保できなかった間取りです。しかし、部屋を大きくすれば、バス・トイレ一緒か、クローゼットがなくなってしまいます。専有面積が20㎡を切る間取りは大変難しいものです。この場合は、私は思い切ってバスの浴槽を無くし、ガラス戸風のシャワーブースとし、天袋を作りその下にハンガーパイプを設置しただけのものを作りました(写真)。このことによって部屋はとても広くなり、人気の物件となったのです。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2012.11.26掲載)