縁なし畳使用でモダンな雰囲気の部屋に再生
コスト削減のコツは水まわり位置の固定
前回に続いて空室対策の大本命、「間取り」について、お話しします。図1は、当社がリニューアル企画に携わった千葉の案件の間取り(ビフォー)です。DKが真ん中にあって、南側のベランダ側に洋室と和室が並んでいるタイプです。30年ほど前にはこのような間取りが多かったようですね。今は、DK(LDK)を日当たりの良くて見晴らしの良い南側に持ってくるのが普通です。しかし、この真ん中にDKがあるのにも意味があって、「無駄な廊下」が発生しないという利点があります。生活の共用部分であるDKを通って南側の二部屋に行けるからです。つまり、南側にDK(LDK)を持っていくと、そこまで行くための廊下をつなげなくてはなりません。30年前の設計者にはそれが「モッタイない」とする人が多かったのでしょう。当社は図2のようにリニューアルしました。間取り変更のコツは、まず「水まわりの位置を変えない」ということです。給排水の位置を変えようとすると当然ながらコストが余計にかかります。また「排水の勾配」が取れずに苦労することもあります。よって、キッチンの位置はそのままにして、ただ、洋室をひとつ減らし、また和室を少々削ってでもDK(LDK)の形を整えました。南に面する14畳近い広いLDKを作ることができました(写真①)。LDKのコツはなるべく「広く」「南側にワイドスパンに」「整形に」作ることです。また前回お話ししたように、「壁付きオープンキッチン」でかまいません。また、「和室」ですが、今や不人気の代名詞のようなものになってしまっていますが、日本古来の生活様式である「畳の生活」そのものがけして悪いものではないと思います。ただ、デザインに「野暮ったさ」があるのがいけないのです。よって、「琉球畳」等の縁無し畳を使えば「ジャパニーズ・モダン」な部屋に生まれ変わります。琉球畳は少々値段が張るので、「カラー畳」をお薦めします。ほとんど、本物のイ草と見分けが付きません。また、「和室」だからといって「敷目天井」にする必要はありませんし、収納を「ふすま」にしなくてもいいのです。畳以外は「洋風仕上げ」でいいかと思います。
次は、外国人向けの高額一戸建てを「シェアハウス」に変更したものです。図3が施工前、図4がリニューアル後です。図は1階部分のみですが、2階部分と合わせて全8室分作りました。図3の左下にあるのが、「メード部屋」だった部分です。これを「貸室」にすれば、もう少しもうかったのですが、広めのランドリールームにして、入居者の利便性を優先しました。現在、女性5人、男性3人で仲良く暮らしています。シェアハウスはマネジメントしているほうも何か楽しいですね。当社が企画したものに、男女8人が集って、ハウスに帰ると「ただいま」、「おかえり」と楽しく生活しているのをみるとこちらも嬉しくなるのです。写真②は、ホール部分からテラスを望んだ写真です。
吹き抜けを作って光と風を取り込む
図5は、弊社の新築企画です。「1Kタイプ」の部屋ですが、部屋の真ん中に「吹き抜け(テラス)」をつくったのが特徴です。オーナーから「光と風を感じられる空間の提供」をテーマとして与えられ、その実現のためにこのような間取りとなりました。写真③は窓側からその吹き抜け部分を見たものです。明るくて、また外の雰囲気を部屋に取り込むことに成功した部屋となりました。また、その他にもこの部屋は、収納をたっぷり取っているのが特徴です。入居者の不満は「とにかく収納が少ない」というものがとても多いのです。当たり前ですが、「バス・トイレ別」、「室内洗濯機置き場」、「二口コンロ」、「独立洗面台」の基本原則は押さえております。
20㎡くらいの1Kタイプだと、「独立洗面台」を設置できなくて妥協する場合が多いですが、今後は必要なアイテムだと思います。地方はなおさらでしょう。
最後は、前回の連載でのアイデアと同じ発想ですが、もっとシンプルなものです。写真④をご覧ください。最近当社が世田谷で新築企画した別のシェアハウスの室内の写真です。部屋が4畳半と狭いため、クローゼットを大きく取りたくはないのです。よって、天井から棚をつり、その下にハンガーパイプを通して、洋服等をかけられるものにしました。コストもあまりかかりません。「これ以上シンプルにはできない収納」だと思っています。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2012.12.24・25 合併号掲載)