優秀ベンダーに一括して仕事を発注
退去時のチェック100項目を確認
連載50回を記念して、今回は弊社の取っておき(?)の帳票(表1)を公開します。そう威張ることもありませんが、入居者が退去したときの室内の清掃や故障箇所をチェックするときに使うものです。弊社の現場管理の部署やコールセンターの意見を聞いてまとめたものですが、ちょうど100項目になってしまいました。こんなに細かくては面倒だなと思われるでしょうが、ではこのなかでカットしていいものはあるでしょうか? 全て必要な項目です。現場ではいちいちチェック表で確認していないかもしれませんが、実際に現地で行っていることばかりだと思います。100項目をチェックせずにいて、入居後にクレームになれば結局ベンダー(業者)はもう一度現場に行かなくてはなりません。浴室の排水口トラップに前の入居者の髪の毛がいっぱい残っていて、つまりが生じていれば必ず再度清掃に行かなくてはいけなくなります。洗濯機パンにエルボが付いていないままで貸し出せば、階下への漏水事故につながります。集合ポストのダイヤルがうまく稼働しない、トイレの換気扇が稼働しない、エアコンのリモコンがない、網戸の立て付け等、ちょっと見ただけでは気づかないような項目も結構あります。
どういう「仕事」があるのか、「全てを洗い出して列挙する」という作業はあらゆる場面で重要です。全体像を、イメージではなく正確に把握することから業務の検証と改革ができるのです。個々の業務もそうですし、それぞれの部署がいったい何をやっているのか、ひとつひとつ細かく箇条書きに書き出す「業務の棚おろし」もそれにあたります。また、「帳票」はその会社の歴史と資質、ノウハウを測れるものであり、業務帳票をみればその会社のレベルがわかるといってもいいのです。
優秀ベンダーに一括して仕事を発注
さて、管理会社は、退去時の室内内装リフォームという業務を恒常的に行っています。ほとんどがベンダーにアウトソーシングしているでしょう。次に、このベンダーとの付き合い方について述べたいと思います。
ベンダーと業務の住み分けをして、いかに効率よくつきあえるか、また、よい仕事をしてもらえるかは、管理会社の業績に大きな差となって現れます。しかし、中には仕事の出来の悪いベンダーもありますし、不正を働く(壁面積を誇張して見積もるなど)ところもあります。スタッフを懐柔して(飲ます食わす、はたまたキックバックを渡す等々)、受注を取ろうとしたり、高値で利益を確保しようともします。これでは、効率化どころの話ではありません。「ベンダーとの癒着」は厳然たる「オーナーとの利益相反」です。表2にあるように、まず、新規のベンダーと仕事を始める際は、「新規協力業者提携申請書」を会社に提出します、そこには、どういう経緯でそのベンダーと知り合ったのか、なぜ使いたいのか、また会社の概要などを明記します。上司の「審査」が下りて初めてベンダーとの付き合いが始まります。3の「業者登録」を正式にして、4の「工事請負基本契約書」を交わします。ここには、情報の守秘や癒着の禁止等のことも記されています。そして、5の「業務委託契約書(地域指定)」ですが、これは、内装リフォームベンダーの中で優秀なところに絞って、エリア制を敷き、物件担当制とする、というものです。たとえば、1000戸管理していれば、解約率が25%で、年間250戸の解約があり、戸あたり平均8万円のリフォーム工事があれば、250戸×8万円=2000万円の工事が必ず発生します。ベンダーを2社に絞って、年間で1000万円程度のリフォーム工事を必ず発注することを約束するのです。そして、年間1000万円の仕事を発注することを約束する代わりに、入居者が決まった後の鍵交換等の業務を無償でやってもらう等々の管理会社の業務負担を減らす方策を取ることができるのです。ベンダーにとっても、この物件から解約が出れば必ず仕事になるとなれば、慣れた部屋で仕事もしやすいですし、売上も安定して歓迎なのです。
ただ、この「業務委託」は1年更新とします。仕事の質が落ちてきたら、他のベンダーとすぐにチェンジする、という緊張感があったほうがいいでしょう。
これらは、いつもお話している「アウトソーシング理論」の一環です。我々管理会社の業務は多岐にわたり、かつ多分に労働集約的です。よって、もっと「業務を減らす」べきです。我々にはより大事なことがあるはずです。それは1つは「空室を減らす」ことであり、2番目は「管理戸数を増やす」ということです。そこに集中すべきなのです。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2013.02.25掲載)