全国賃貸住宅新聞

公開日:2014年1月27日

第61回 管理会社は「人」が命 3【評価制度】

第61回 管理会社は「人」が命 3【評価制度】
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同僚への接し方など「人柄」も評価対象に

年功序列は高度成長期にあった仕組み

サービスを売っている賃貸管理会社は「人」が命です。「人」のより良い活用のためには、「採用」「マネジメント」「評価」がポイントです。このシリーズ3回目の今回は、「評価」についてです。「評価」とはその人の「給与」に反映されるものなので、スタッフにとっては一番重要なもの、と言って過言ではないでしょう。スタッフの評価制度を確立していない会社は、スタッフ間に不満がある可能性があります。自分は正当に評価されていない、という不満です。(ただ、どんな制度を用いてもスタッフはある程度の不満を持っているものですが…)

 日本の会社では従来、社員の評価は「年功序列的な運用」が主流だったといえます。「年齢給」+「能力給」という評価方法が一般的で、年を重ねるにつれ、給与が上がるという仕組みです。年齢が上がれば結婚もし、子供も生まれて生活コストも自然と上がりますので、ある意味理にかなった仕組みだったといえます。高度経済成長時代においては、順調に経済規模も拡大しましたので、なおさら問題がありませんでした。しかし、バブル崩壊後の現在の低成長時代、また競争が激しく格差の大きい(企業間、業種間、個人間において)時代には、年功序列・終身雇用という制度がもたなくなりました。そこで各企業は、「成果主義」と言われる評価制度を採用するようになったのです。基本的に「年齢」も「勤務年数」も関係がない、「実力・実績」だけで評価するというものです。これだと優秀な人はモチベーションが上がりますし、実績に応じた給与配分が可能になり無駄がなくなります。しかし、成果主義にも問題点がありました。まず、「結果至上主義的な文化」が出来上がってしまう可能性があります。短期的な目標にとらわれてしまって、長期的な視野が薄れてしまうのです。また、同じように「個人主義」が横行してチームワークが無くなってしまう可能性もあります。「年功序列方式」にも良いところは結構あったというわけですね。そして、最大の課題は、その「評価」そのものが大変難しいということです。実績の数字だけですべてが判断できるわけもなく、会社には数値に表しにくいものであっても重要なものもあるのです。そもそも年功序列時代では、評価そのものをあまりしてこなかった、ともいえるわけで、よって「評価の仕組み」をきちっと整えることが大変重要なのです。ものごとはなんでもそうだと思うのですが、完璧な制度というものは存在しないわけで、時代に合わせながらもバランスよくやっていくことが大事ですね。

役割のミッションに重点を置いた評価

そこで、「評価基準を明確にする」ことが重要です。まずは前回の連載にも図表を提示しましたが、各部署(職種区分)で役割等級(役職)ごとに「役割定義(職務要件)」を明記します。これは「ミッショングレード制」と呼ばれる「役割等級制」を用いた人事制度です。「課長という役にはこういう使命がある」と明確にするということです。課の目標数字を達成させるだけでなく、課員の状況を把握し上職に報告し、かつ会社全体の方針を理解して課員に伝え実行させる。というようなことが書かれています。また、各人が持つ「職務記述書」にはもっと詳細な職務要件が定義されなければなりません。仕事の中身と責任範囲、またその実行のために身につけなければならないスキルが記されています。こういった「職務の評価基準」を明確にすることで、その内容に沿って実行できているかどうかで各人を評価できることになります。そして、各人ごとに半期ごとに目標を設定し、その進捗を上司がチェックします。図1にあるように、一番上にある最高位の「会社のミッション・経営ビジョン」に則り、「事業部や課のビジョン」が生まれます。これは大きな表題であり、少々抽象的な文言かもしれません。しかし、「役割(等級)」ごとに決められるミッションはもっと具体的な指針です。そして、各人の半期ごとの目標設定や職務記述書もすべて会社や事業部等のミッションにリンクして設定されます。

 また、評価の内容は大きくふたつに、「業績評価」と「行動評価」に分けられます。数値に表れやすい「業績」だけで評価するのではなく、働く姿勢や意欲、勤務態度、社内でのコミュニケーション能力等の「行動」も重視するということです。「仕事ができる」ことも当然大事ですが、その人の「行動」、もっと分かりやすくいうと「人柄」によって会社の雰囲気もよくなり生産性が上がるということが実際にはあります。彼(彼女は)はいつも明るく皆と接しているなあとか、仕事を頼んでも嫌な顔をしないですぐやってくれる、よく気がつくとか、部下や同僚への接し方が優しくて丁寧だとか、そのようなことを積極的に評価すべきだと思うのです。それら行動に難がある人は評価が低くなります。

また、評価は直属の上司だけがやらず、他部署であっても係長以下の評価は課長以上全員がすべて責任を持って行います。他の部署のことはよく分からないかもしれませんが、「課長」や「部長」なのですから、たとえ他部署であっても普段から意識を持って「見ている」べきなのです。一人の上司が部下に間違った評価をしてしまうリスクより、ずっと良いでしょう。「評価を間違う」ことは往々にしてあります。評価者もそれなりに評価のトレーニングを積む必要があります。図2にあるような「評価エラー」が起きることがあります。1の「ハロー(後光)効果」とは、ひとつ特徴的な長所(欠点)があるとそれだけで全体的に高評価(低評価)を下してしまうことをいいます。ITにやたら詳しいというだけで、東大を出ているというだけで、単純に認めてはいけません。「対比効果」とは、客観的に見ないで単純に他の人との比較で良いとか悪いとか評価してしまうことです。3の「直前過大効果」とは、たとえば期末の最後に大きな契約を取ったのでその印象が大きくなり、全期では目標達成していないのに、高評価を与えてしまうことです。「中心化傾向」とは、なんとなく、ほとんどのひとの評価を平均値に近くしてしまうことです。5点満点の3点ばかりの評価になってしまうのです。「寛大化」は優しすぎる評価であり、「厳格化」は厳しすぎる評価のことです。身に覚えがありませんか?

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.01.27掲載)


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