全国賃貸住宅新聞

公開日:2014年4月28日

第64回 加速する仲介手数料ゼロ

第64回 加速する仲介手数料ゼロ
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管理会社は多額のADを払い続けるか自前で仲介を行う二極化へ

図表1は直近のスーモを調べた結果です。東京都全域の43万戸の募集物件が母数です。その中で、「仲介手数料不要」「仲介手数料無」「仲介手数料なし」「仲介手数料0」などと提示されている物件を全部カウントしてみたのです。その結果、なんと平均5.7%もの物件が、そのように募集されていることがわかりました。私は本連載でも、ちょうど4年前に賃貸の仲介手数料はゼロになっていくということを述べました。それが現実のものとして動き始めています。3~4年前には「仲介手数料不要」という表示はスーモ上でもほとんど見受けられなかったと思うのです。ただ、現在でも、まだ備考欄にさりげなく記入されているだけで、どちらかというとそれほど目立っていません。スーモ側も仲介ビジネスをしている不動産業者が主たるクライアントでしょうから、「仲介手数料不要」を大々的には宣伝しにくいのでは、と思います。また、現在「仲介手数料不要」をうたっている業者の7割は「先付仲介業者」と思われます。3割は「管理会社」ではないかと思われます。

図表2をみていただきたい。これは、表示の4者間でのお金の流れを表したものです。「ベース」とある一番上の図式は、最近の賃貸市場でよくあるタイプのものです。「先付仲介業者」にオーナー側から賃料の1カ月分のAD(販促費)をプラスして支払うことによって、入居者付けを促進しようというものです。宅建業法上は問題がある図式かもしれませんが、現実には一般的に行われているものです。こういう状況の中で、「先付仲介業者」が「仲介手数料不要」を打ち出しているのが、①の図式になります。オーナー側からAD が支払われるので、入居者側からの仲介手数料を無料にして差別化を図ろうとする動きです。もともと入居者からの仲介手数料1カ月分で商売をしていたのですから、1カ月あれば充分だというわけです。そういう意味では、「ベース」にあるような先付仲介業者が2カ月分以上の売り上げを稼いでいる現在は「バブル」といえるかもしれません。とにかく、空前の空室率の影響でオーナー側からADが多く支払われるようになったことから、入居者側から仲介手数料をもらわなくてもよい、とする先付仲介業者が現れ始めました。これには当然、そもそも「賃貸仲介手数料」を支払う意義がどれだけあるのか、という根源的な問いが入居者側から発せられていることも要因と思われます。ネットで自分で探して、そのままその物件に契約する人が4割以上はいるという現状(首都圏のデータ)において、賃貸仲介手数料の意義が薄れてきているのです。

②、③は「管理会社」が「仲介手数料不要」をうたって直接エンドに働きかけている図式です。「ベース」の図式からすると、「管理会社」から「先付仲介業者」にADを支払っていますが、その分はオーナー側から出ていることになっています。しかし、現実的には、必ずオーナーが余分に払ってもらえるわけでもなく、仕方なく管理会社側が自分の懐からADを「先付仲介業者」に支払っている場合も多いのです。サブリース(空室保証)をしている場合などは、とにかく稼働率を上げることが先決なので、先付仲介業者に自腹を切ってADを支払っているのが現実でしょう。弊社でも昨期の1年間で、自腹を切って先付仲介業者に支払ったADがなんと3,000万円以上もあります。この出費は大変大きなものです。②では、オーナーから2カ月分をいただけるのであれば、入居者側に1カ月分のフリーレントをサービスして入居促進を図ることができます。③では、フリーレントをはずせば、オーナー側の出費はその分少なくてすみます。そして、直接エンドに働きかけることによって、管理会社が自腹を切らなくてもすむ可能性が高くなります。しかし、問題は、直接仲介をあまりしたことがないような管理会社の場合、つまり自前の店舗等を持っていない場合にどうするか、という点です。このあたりは「インターネット」に鍵があるとは思っています。

管理会社は多額のADを払い続けるか自前で仲介を行うか2極化へ

この「オーナー側に付くポジション」には、「管理会社」と「元付仲介業者」の2種類があります。またそれぞれに、「自社決め率」が高い場合と、低い場合があるでしょう。管理戸数の多寡やエリアの特性にもよりますが、その「管理会社」や「元付仲介業者」が自社物件を自前の店舗で決めている率が高い場合と、他の先付仲介業者に仲介を依存している場合とがあります。「自社決め率」が高い「管理会社・元付仲介業者」の場合には、②や③のパターンはまだ少ないかもしれません。まだ管理戸数も少ないからなんとかなっていたり、物件のエリアが集中していたり、「仲介」がそもそも得意だったりするので、わざわざ仲介手数料をゼロにして差別化を図るという発想はまだないかもしれません。しかし、管理戸数が多くて自社店舗だけでは到底決めきれない、またそもそも仲介店舗を持っていないという管理会社にとっては、②や③の図式には実は大変興味があるものだと思います。ただ、管理会社としては、いつも先付仲介業者に決めてもらっているのに、自社で「仲介手数料不要」をうたって展開するのは気がひけるというのも事実。しかし、先付仲介業者も「仲介手数料不要」をうたって展開しているところが徐々に増えてきました。これからは、従来通り多額のADを払い続けて先付仲介業者に依存し続ける管理会社と、なんとか自前でエンドに直接働きかけようとする管理会社に分かれることでしょう。その方法はけして従来からある「1階にある路面店舗での仲介」ではないと私は思っているのですが。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.04.28掲載)


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