アクションリストは“1冊”にまとめる
前回に続き、「生産性を上げるための手法」についての基本的なビジネススキルについて述べたいとおもいます。我々はビジネスをやる上で、①メモ(記録)を取る、②資料を整理する、③文章(帳票・報告書)を書く(作る)、④人に話す、⑤スケジュール(目標)管理をする、⑥部下をマネジメントする、などの基本的な作業を日頃行っています。これらは、どういう職種に居ようが全ての人が必要とされるスキルです。しかし、実際には、これらのスキルを具体的に誰かに教えてもらったことなどありません。皆、我流なのです。前回は、「メールの処理の仕方」、「仕事の取りかかり方」、「メモの取り方」について述べました。
今回は、まず、「アクションリストのあり方」から解説したいとおもいます。誰しも自分が次にしなくてはならない行動をリスト化する必要があります。それはその行動の項目が10や20では収まらないはずだからです。私の場合、常時100件以上はあります。3つくらいなら、なんとか頭の中に入れておくことはできるでしょうが、誰しも全部書き出せば数十件以上はあるはずです。とにかく、全て書き出すべきです。今日しなくてはいけないことも、今週中の案件も、2ヶ月以内の処理案件も、中長期的な目標もアイデアも全てです。しなくてはならないことが発生した瞬間に、また閃いたときにメモをする必要があります。
通常、メモは付箋やA4の裏紙を半分に切ったA5サイズの紙等に書き留めたりとかしますが、いくつもに分かれてしまい管理がしづらくなります。以前は私もリストを書き込んだ付箋が何枚にもなってしまって、それを今度はクリアファイルに挟んでまとめたりしたものです。通常のメインで使うノート(手帳)に書いてもいいが、携帯性が低くなります。また、付箋や小さな紙に書いていることからも分かるように、リストは手元にあっていつもみられるような状態にしたい。
よって、別の小さいノート(手帳)を使うといいでしょう。隠れたロングラン商品としても有名な「測量野帳」がお勧めです。1冊あたり130円から買えます。表装がハードカバーなので、メモがし易く手頃な大きさです。最近、無印良品からもまったく同じスタイルのもので、色だけが違う(ブラック)「手のひらサイズポケットノート」(180円)が発売されました。ファミリーマートで買えます。この手帳に時系列にアクション(行動項目)をリスト化していくのです。それを毎日見返して確認をする。そうすれば、しなくてはならないことをうっかり「忘れる」ことはないでしょう。
分類をせず(仕事とプライベイトくらいは分けてもいいが)、時系列にただ発生した順、思いついた順に箇条書きに書き連ねてゆく。ことの大小も関係はなく。自分のHW(宿題)、部下に出した指示、個人的な目標、たとえば宅建を取る!とか、閃いたidea等なんでも書いてゆく。人は覚えているつもりでも、意外に忘れてしまうものです。1ヶ月ぶりに何かの拍子に思いついて「アッ、これをやらなくては」となるが、後回しにしたらまた忘却の彼方へ、となります。よって、毎日のように見返すことが大事です。
なお、測量野帳は3種類ありますが、「スケッチブック」がお勧め。方眼ノートです。ノートは方眼タイプがお勧め。左右上下にマス目を基準に整理し易い。測量野帳は、アクションリスト以外にも使うことがあります。手元にメインのノートがない時や、気軽にメモをしたいときに、その場合には、手帳を回転させて、反対側から書いてゆくと良いでしょう。
次に、「相手への使え方」です。「結論からいう」、癖を付けましょう。最後に結論をいう話し方だと、最後までどういう展開に話が進むのかを聞き手がずっと想像しなければならないのです。この先話がどう展開するのか、いろいろな組み合わせのパターンを考えることになります。そして、最後まで聞いて結論が想像と違った場合には、混乱してしまいます。時系列的に起こったことをだらだらと述べていく話し方をしてはいけません。話の内容を頭の中でまとめてから、まず結論を言って、次にその結論の説明を始めれば良いでしょう。短い言葉で説明するようにするように心がけると良いのです。話が長いと集中して聞いていられません。
そのためには、いらない言葉を削る習慣を身につける必要があります。自分が伝えたいことのなかで一番のポイントは何かを掴むことです。分かり易い説明をするためには、物事のポイントを押さえる練習が必要です。本を読むときに、蛍光ペン等を持って、たくさんの文章から重要な部分を選び出す練習をすると良いでしょう。また、400字の内容を30字にまとめる力を鍛えましょう。その為には文章に多く触れ、文章を自分で多く書くことです。「ロジカル(論理的)シンキング」を身につけるためには、文章を多く作ると良いでしょう。
明日、こういう話の展開でクライアントを説得しよう、こう話せば納得するはずだ、と思ったとしましょう。では、その内容を文章にしてみると良いのです。改めて文章にしてみると、自分では良い展開だと思っていた話が、論理的でないことに気づくことが多いでしょう。分かり易い良い文章を書く訓練が、分かり易い話し方ができる近道だとおもいます。また、具体的な数字や言葉を使うとより分かり易くなります。抽象的な言葉を使わない。
また、特にお客さんに対して説明するときに、自分たちだけしか知らない言葉、単語、業界用語を使わないこと。言ったとしても、それを説明することです。また、「主語を抜かす」人が多いですね。主体は誰なのかをはっきりさせなければいけない。それは「誰が」「誰に」対して行ったことなのかを明確にして話すことが大事です。主語を抜かしがちの人は、自分はわかっていても、相手にはこの説明ではわかりづらいのではないか、という想像力が欠けていることになります。
「リアルなできごと」「臨場感を伴った言葉」を使うと分かり易いでしょう。内容が一発で分かる、想像し易いキーワードというものがあります。たとえば、
質問「お客さんはそのベンダーとどう繋がったの?」
答え「当社のAさんが、お客さんにそのベンダーを紹介したのです」
「元々、お客さんが知っていたベンダーなのです」
この二つの言葉は、矛盾しています。しかし、答えている人は、事実をきちんと言っているつもりだし、間違ってはいないのです。質問しているほうは、頭の中が「???」になってしまうが、これは「当社のAさんがそのベンダーをお客さんに紹介したのですが、偶然、お客さんが知っているベンダーだったのです」ということなのです。
これは、「偶然」という言葉を、しっかり入れれば一発でわかった内容です。ものごとの流れの中の「リアルな臨場感を持つ」言葉をうまく使うと良いでしょう。このように説明には「キーワード」となる言葉があります。
「言った言わない問題」というのがあります。確かに伝えました、いや、聞いていない、という押し問答です。確かに一応言ったのでしょう、しかし、相手には伝わっていないし、理解できていないのです。それは結局、表現の仕方が悪いのです。まず、大事なことは3回言いましょう。大事なことをサラッと言ってはいけません。大事なことは強調しなくてはいけません。文章なら、文字の「強調」をしたり、フォントを大きくしたりできます。同じように、話し言葉も強調しなくてはなりません。相手に伝わっていなければ、言っていないのと同じだ、というつもりでいましょう。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.09.22-29 合併号掲載)