全国賃貸住宅新聞

公開日:2014年10月27日

第70回 労働生産性を上げるために-4

第70回 労働生産性を上げるために-4
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5分間書評プレゼン、伝える力強化

前回に続き、「労働生産性を上げる」ために、基本となるビジネススキルについて述べたいと思います。我々は、日頃いろいろな「表現活動」をしています。その対象はクライアント(オーナー)や入居者、また社内の同僚、退去リフォームを発注しているベンダー、仲介を依頼する業者、保険会社等々です。それらに対して、企画提案書や説明文、通知文やメール、また帳票などを作成したりします。そして「話す」ことはもちろん、たとえば作成したワードやエクセルのデータに「ファイル名を付ける」ことも「表現」のひとつでしょう。これらの表現活動をレベルアップするために必要なことは、①「書くこと」、②「読書の量と質」、③「プレゼンテーションスキル」ではないかとおもいます。そして、表現において最も求められることは、「ロジカル(論理的)であること」、「誰にも分かり易いこと」の二つです。

 

まず、「書くこと」ですが、たとえば何かあるテーマで原稿を書く必要があった場合、まず、テーマに沿ったネタを拾いだします。ネタがいくつかたまったところで、それをどういう順番で展開すれば納得できる論理になるかを考えます。紙に書いていってもいいし、ワード上に書いていっても良いでしょう。紙の良さは、パッと一覧できることにあります。ワード上だと文章の上下の入れ替えが楽で良いですね。全体のストーリーが見えたところで、書き出します。書いている途中で、「良いネタ」を思いついて思わず追加することが多いですが、往々にしてそのネタがあることで論理が曲がってしまうことが多いので要注意です。とにかく分かり易く、論理的であるかが大事です。そのあとで、オリジナリティを追求しましょう。

 

個人的な体験ですが、浪人時代の代々木ゼミナール名古屋校での「小論文ゼミ」が大変役にたちました(笑)。学生時代の他のどんな授業より実務に役立っていると思います。そこで教わったことは、あくまで「論理」を見ているということ。文章は論理的でなくてはならない、オリジナリティや内容が斬新であることも、もちろん素晴らしいことですが、それよりも「ロジカル(論理的)」であることが求められている。この「論理的思考」、つまり「ロジカルシンキング」は、仕事をする上でも最も重要な技能のひとつだと思うのです。「書くこと」でその訓練をすることができるのです。論理がおかしな説明を聴いて、商品を買う人などいません。

 

アメリカ在住の日本人の方が言っておられた話ですが、日本では「読書感想文」を書かせるが、アメリカでは小学生の頃から「レポート」をかかせている。情緒的な感想分を書かせるのではなく、「分析と対処」を考えさせるのだ。この違いは大きいのではないか、とのことでした。井上ひさしさんのエッセイにも同じようなことが書いてあるのを読んだことがありますが、プロの小説家でも難しいような表現を国語の授業で求めているので、日本人は作文ぎらいになるのだ、と批判されていました。作文は本来、「論理的な思考を訓練」するものです。そして、書く訓練をするうちにロジカルシンキングが身に付きます。一般の人に理解できる文章を書くことが大事です。ビジネスで使う文章ならなおさらです。まったくの第三者が読んでも分かるものを書きましょう。

 

次に、「読書の量と質」ですが、表現(「表現」を「アウトプット」に置き換えることもできます)をよりレベルアップするためには、「インプット」がなければなりません。インプットには「読書」が最も効率が良いといえるでしょう。前にもこの連載で書きましたが、本ほど安いものはありません。我々は、自身で経験できることには限界があります。もちろんそれが一番大事なことなのですが、読書がそれを何倍にも補ってくれます。著者の何年もの経験をたった千数百円程度で、代理体験できて取得することができるのです。たくさん読書をすべきです。

 

読書の仕方にもコツがあります。蛍光ペンや赤ペンを必ず持ちながら読みます。そして、重要だと思う箇所や印象的な部分にラインを引くのです。また、本の余白に直接メモを書き込んだりします。よって、本は絶対に借りてはいけません。必ず自分で買うのです。1回通して読んだら、今度は、自分が印を付けた部分を中心に読みます。今度は短い時間で読み進めることができ、かつ重要な部分を振り返ることで中身を理解でき、新たな気づきが多くなります。また、良い文章に接することで、論理的思考が身に付くことも言うまでもありません。

 

そして、3つ目は「プレゼンテーションスキル」です。プレゼンテーションには、「ロジカルにかつ分かり易く話す力」、大事なポイントに絞って、平易な短い言葉で話す「要約する力」、「抽象的でなく具体的な言葉で話す力」、「結論をまとめる力」、そして、笑顔や自信に満ちた表情や身振り手振り等の「良い印象を与える力」が必要となってきます。また、これらは、先の①「書くこと」や②の「読書」をすることとも密接な関係があります。プレゼンテーションスキル、というと何かセミナーの講師をするような特別な場面でのものと思われるかもしれませんが、もちろんそれも含みますが、もっと広義なものです。一人のクライアントにクロージングをかけているとき、また社内のスタッフに業務の仕方を伝授しているとき、そして電話でクレームを言ってきている入居者に対処するときなども含むのです。私は、たった一人に、納得してもらえるように話すスキルと、それこそ200人を前に講演するようなスキルとは、基本的には同じものではないかと考えています。

 

10年以上前、CPM(米国不動産管理士)資格を発行しているIREM(全米不動産管理協会)の研修を受けたことがあります。CPM公式研修の講師になるために必須とされているトレーニングでした。シカゴ郊外の陸の孤島のホテルに1週間、缶詰にされて大変きつい研修でした。毎日午前と午後、15分間づつ研修講師役のプレゼンをするのです。Mark(私、藤澤のこと)はプレゼンでこういう点は良いが、こういう改善点がある、と先生や受講者仲間でお互いに指摘しあうのです。

 

プレゼンについて大変勉強になった研修でしたが、数年経ってから新たな驚きがありました。その時の同期の受講生たちの何人かが順番にIREMの会長になっていくのです。実は、全員が講師になるために受講していたのではなかったのです。将来トップになりそうな幹部のリーダーシップ養成研修でもあったのです。アメリカでは、リーダーたるもの、プレゼン力がなければならないという信念があるのです。言われてみれば当然ですよね。

▲5分間書評プレゼンの様子

弊社では、プレゼン力を高めるために、毎週朝礼の時間を使って、「5分間書評プレゼン」というものを行なっています。自分で選んだビジネス書の内容を口頭だけで解説するのです。どういう点に自分は感動したか、影響を受けたかを、たった5分間で話します。聴いている人が、その本を読んでみたいなあ、と強く思ったら成功です。大体250ページくらいあるものを5分にまとめるのは大変です。余分なものを削って削っていかないと、タイムアウトで尻切れトンボになってしまいます。

 

また、スタッフが外部のセミナーを受講してきたら、その内容を要約して今度は30分程度で、社内の皆にプレゼンするということもやっています。アウトプットを前提にインプットをしているので、吸収がしっかりできますね。いま聴いているセミナーの内容は社に戻って、今度は自分が話さなくてはいけないという緊張感があるのがいいのです。また、社内の人間も移動時間もかかる外部のセミナーに行かなくても、聴くことができるので、一石二鳥と言えます。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2014.10.27掲載)


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