全国賃貸住宅新聞

公開日:2016年1月11日

第84回 プロパティマネジメントで切り開く未来

第84回 プロパティマネジメントで切り開く未来
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「6つの感性」で生き残る「ハイ・コンセプト」に学ぶ

精神性の価値を認めることの重要性高まる

急激な進化

新年の原稿として、今回は少し賃貸の現場からは離れるかもしれないが、今後の日本のビジネスパーソンが生き残るために考えなければいけないと思うことを述べたいと思う。日頃あまり感じてはいないが、もの凄いスピードで技術は進化し、我々の生活は変化しようとしている。

 

たとえば、AI(人工知能/Artificial Intelligence )は意外に身近なところにあるのだ。iphoneのsiriや、Amazonのレコメンド機能、Facebookのタグ付け機能などもそれにあたるし、ソフトバンクが人工知能を持つヒト型ロボット「Pepper」を売り出したりもしている。自動車の自動運転もあと10年くらいではあたりまえになるらしい。レイ・カーツワイルによると、人類は「指数関数的」に進化するとのことで、今から30年くらいの技術的進化は今まで人類が経験したことのないような急激なものになるという。想像がつかない部分もあるが、いまから10年くらい先でもかなり今とは違うんだろうなあ、と漠然と思う。

 

我々の賃貸管理業界はいうに及ばず、あらゆる分野でビジネスモデルの変更を強いられるのではないか。タクシー運転手や長距離運転手の廃業はまず確実か。ドローンによって、配送のシステムも変わるだろうし、AIによって弁護士も多くは必要なくなるとか。ロボットで代行できる単純作業は当然必要なくなる。単なる入力作業とか。中途半端な知的労働者は容赦なく排除されるのだ。賃貸管理の現場でもわざわざ人がやらなくても良いことが増えていくのではないか。

生き残るための鍵、「6つの感性」

そういう変化の中にあって、我々は何を鍛えて何を選択すればいいのか。その答えがこの本の中にあると私は考える。前回の連載でも触れたが、ダニエル・ピンク著の「ハイ・コンセプト」(「新しいこと」を考えだす人の時代)(大前研一訳)である。私が読んだ本の中でも、是非読者にも読んで欲しいと強く思うものだ。これは現代のビジネスパーソンの必読書だとおもう。この本の中で、6つの「感性」に大きく左右される時代がきている、と言っている。それは①デザイン、②物語、③調和、④共感、⑤遊び、⑥生きがい、である。「左脳」だけではなく「右脳」をもっと使おう、というのだ。

 

これからは創造性があり、反復性がないこと、つまり、イノベーション(革新、新しい切り口)とか、クリエイティブ、プロデュース、といったキーワードに代表される能力が必要になっていく時代なのだ。訳者の大前研一氏もまえがきの中でこう述べている。1,「よその国、特に途上国にできることは」避ける。2,「コンピュータやロボットにできること」は避ける。3,「反復性のあること」も避ける、としている。

①「機能」だけでなく「デザイン」。豊かな時代では、手頃な価格で十分な機能が備わった製品を製造するだけではもはや不十分だ。同時に、美しく、ユニークで、美的法則に則ったものでなくてはならない。モノがひしめきあった市場の中で差別化を図るためには、デザインや共感、遊び心などの一見「ソフトな資質」が最も重要なアプローチになる。 アメリカでは、MFA(Master of Fine Arts/美術学修士)が新たなMBA(経営学修士)に代わる価値ある資格となりつつあるらしい。自動車メーカーであるゼネラル・モーターズ(GM)の会長は、我々が手掛けるのは「アート・ビジネス」だ、といった。同じお金を出してモノを買う(借りる)ならデザインの良いものを持つのが気持ちがいい。性能はいまやほとんど変わりがないのだ。賃貸住宅もまさしくそうではないか。設備仕様において、いまは大きな差はないといっていい。

 

②「議論」よりは「物語」。 同じ値段の品質も同じように思えるワインが二つあった。一つは普通のもの、一つにはラベルに物語が書かれていた。兄妹が作るそのワインは、ガンに苦しんで亡くなった母親に敬意を捧げ、売上から1本あたり50セント(約60円)を母親の名で各地のホスピスやガン研究基金に寄付するというものだ。皆様のご協力のおかげで、初回出荷時からいままで75,000ドル(約880万円)の寄付ができました、母に代わって御礼申し上げます。と書かれている。どちらのワインを買うかは明白だ。

 

③「個別」よりも「全体の調和(シンフォニー)」。これは、バラバラの断片を繋ぎ合わせる能力だ。一見、無関係に思える分野に関連性を見出す能力。公判なパターンを見つける能力、誰も考えなかったような要素の組み合わせから新たなものを創造する力のことである。そしてそれは、IQよりも「全体像を捉える力のほうが重要だ」というのだ。

 

④「論理」ではなく「共感」 。共感とは、相手の状況に自分を置き換えて考えられる能力であり、その人の気持ちを直感的に感じ取れる能力である。また、誰かの立場に立ち、その人の視点で考え、その人が感じるように物事を感じることのできる能力でもある。これは本能的なものだ。人間関係の機敏をこれまで以上に深く理解することが求められる仕事は今後も残る。コールセンターでも法律の世界でも「感情読み取り能力」が必要なのだ。アメリカのある医学大学では、「共感力テスト」を開発したとのこと。そのスコアが良い医師は診療行為の実技においても良い成績を残したという。逆に医師免許試験の成績が良いからといって必ずしも共感力テストの結果は良くはなかったそうだ。

 

⑤「まじめ」だけではなく「遊び心」。「笑い」が善玉ウイルスと同じような働きをするらしい。そして、遊び心があると右脳が活性化する。仕事と遊びの融合を企業戦略として名言する会社もある。サウスウエスト航空の綱領には、「何事も楽しんでやらなければ、まず成功しない」 とあるらしい。私もこの考えには大賛成だ。ヨーロッパの大企業では「真剣な遊び」のコンサルタントを招いているところも多いらしい。 ユーモアは「人間の知能の最も高尚な形での表れだ」とも言われている。ユーモアの理解や認識には右脳が重要な役割を担っている。

 

⑥「モノ」よりも「生きがい」。人間のおもな関心事とは、喜びを得ることでも、痛みを避けることでもなく、 自らの人生に意義を見出すことだ。ビジネス界においても、精神性の価値を認め、それを会社の目標に沿った形で取り入れた企業のほうが、そうでない企業に比べて業績が良いとも言われる。お金だけでなく、働く意義を与えてほしいと職場に要望する従業員が徐々に増えている。

 

いままでなんとなく感じていたことだが、うまく表現できずにいたことがこの本には明確に語られている。有り体にいえば、東大を出ても必ずしも仕事で成功するわけではないよね、というような左脳頼りの成功の概念を否定し、右脳の感性も人生には大事だ。そして、ますます技術革新によって、その重要性が高まっているのだ。そういうことだと思う。是非、ご一読願いたい。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.1.11 掲載)


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