300組の半数が「ネットで物件見つけた」
ITリテラシー高度に。WEB契約にも抵抗見せず。
「21C. 住環境研究会」で調査
先月につづいて賃貸住宅の入居者アンケート調査である「入居者ニーズと意識調査」の結果についての解説をしたい。今回で第7回目だが、これは、3年毎に「21C.住環境研究会」と「リクルート住まいカンパニー」社とが共同で行っている調査で、今回は参加企業の賃貸入居者1225組に答えてもらった。
まず、問7だが、これは前回も聞いているのだが、「契約した部屋は、ネットで来店前に既に見た物件か」という問である。40.7%の人が、来店前に調べて知っていた物件にそのまま契約した、と答えている。以前は、不動産仲介店の営業担当に部屋を探してもらっていたものが、いまは、自分で見つけた上で来店している人が多い。ちなみに、弊社で2014年に、弊社管理物件の入居者300組に聞いたところ、ちょうど50%の人が、今住んでいる物件は、ネットで自分で見つけた物件だ、と答えてくれた。こういう時代なのだ。仲介店を数店舗経営しているある地方の会社の人に聞いたが、営業トークで一番効果的なのは、「流石、お目が高い!良い物件を探し出しましたね」というものだそうだ。
問15−1は、部屋探しのときに、ネットで口コミ情報を見たか?という問である。「見て、部屋探しの参考にした」が15.2%、「見たが、特に気にしなかった/情報が出てこなかった」が28.7%、合わせて43.9%の人が、「評判」を検索したというのだ。思ったより多いな、という印象だ。今は、ネットに思ったことを書き込む人が多い。ちょっと嫌なことがあった等、ネガティブな情報を物件や不動産業者についてネットに晒すのだ。全国の「事故物件」を集約した「大島てる」も有名だ。弊社管理物件で最近「事故」があったのだが、数日後にはしっかり大島てるに登録されていた。そういう時代である。
問21は、「物件を見に行く前に、ストリートビューで確認したか?」というものだ。これは、「一人で物件を見に行った」人に聞いている。35.3%の人がストリートビューで確認している。意外に少ないようにも感じる結果だ。次の問とも関係すると思うが、物件を特定できないので、調べられなかったことも影響していないか。私は、もっと内見前にグーグルマップで調べているように思ったが。いまは、何処にいくのでも、スマホでそのロードマップを確認できる時代だ。問22は「物件を見ずに契約した人」を対象にしたものだ。少し多くなって38.1%の人がストリートビューで確認している。
問24は、「ネットで部屋探しをするときに、住所の詳細がわからない(◯丁目までしか記載がない)ことについて、どう考えるか」という問である。いわゆる枝番がないことへの不満度を聞いている。「やや不満である」が27.6%,「不満である」が22.0%、合わせて49.6%の人が不満と答えている。これは仲介業者の人にとっては、つらい結果ではないだろうか。管理会社であれば、枝番等の詳細を掲載するのは問題ない。しかし、「先付け」仲介業者にとっては、「物件を特定」されることは、物件を「抜かれる」ことに繋がるのでできないのだ。事前に一人で見に行かれたら、他の仲介業者の看板が出ているかもしれないし、管理会社の管理プレートがあるかもしれない。いらぬ情報をユーザーに知らせたくないという商売上の定めがあるのだ。これは、はっきり言ってユーザー目線にたっていない、と指摘されても仕方がないだろう。ネット社会における仲介業者の構造的な問題、といえる。
問40は、「WEB上で賃貸借契約を結ぶことは可能か?」という問だ。合わせて55.2%の人が利用して構わないと答えている。
先月と今回のこれらの結果をみると、ざっくりと言って、約半分くらいの人のITリテラシーが非常に高い、という印象だ。部屋探しをする人の中の、半分の人は、気に入った物件をネットで探しだし、物件名検索をかけてもっと詳細な情報を求め、口コミ評判をチェックして、ストリートビューも確認、そして内見も一人で行くことも厭わない、契約もWEB上で構わないと答えている。こういう層が確実に増えてきているのだ。仲介戦略も大きな転換点を迎えたのではないか。業者側のネット上での展開次第では、これらの層はもっと増えることになるだろう。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.7.11 掲載)