全国賃貸住宅新聞

公開日:2016年12月12日

第95回 大家さん視点「管理会社の見分け方」

第95回 大家さん視点「管理会社の見分け方」
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リーシングのウェブ戦略をチェック

帳票・フォーマットにも会社のノウハウのレベルが表れる

管理会社のチェックポイント

今回は、大家さんの立場で賃貸管理会社を見てみようと思う。私も大家さんからどういう管理会社を選んだらいいですか、と質問を受けることがよくある。その視点から自社を見つめ直すことも有益だ。不動産投資の成功のカギは「良い物件を購入するもしくは建てる」といったことと同じくらい「良い管理会社を選ぶ」ことが重要である。アメリカでは、「収益不動産を買うということは、プロパティ・マネジメントを買うということに等しい」という言葉があるそうだ。不動産を管理・運営する業務がどのようなものであるかを確認いただきたい。

 

「入居募集に関する業務」、「入居中の管理業務」、「解約・退去時の業務」、「メンテナンス業務」、「賃料の回収・督促と送金」、「契約の更新(再契約)業務」、「空室対策の提案業務」、また「計数管理」……と、実に多岐にわたっており、「経験と知識」と「実行力」及び「提案力」、そして、多岐にわたる業務を各部署のスタッフで連携しあって行うという面で「組織のマネジメント能力」が試される仕事なのである。質のいい会社なら入居者募集もスムーズだし、入居者とのトラブルなどリスクもかなりの部分ヘッジしてもらえる。

では、まず、その管理・運営能力をどう見分けたらいいのだろうか。

①リーシング力
まず、最も大切なリーシング力を見分けること。それも、これからはますますWeb戦略が重要になるので、Web上での表現がうまいかどうか、Web戦略をどう考えているかがポイントになるだろう。たとえば、物件の写真や動画をまめに撮って大量にアップしているかどうか。写真を撮るのにもかなりの手数と時間がかかるので、それをこまめにやっているかどうかでその会社の姿勢がわかる(写真の撮り方のセンス、というのも結構重要だ)。

 

また、募集広告・募集図面などを製作している人の意識が感じられるかどうかも、チェックポイントだ。業界ではまずB4サイズの募集図面をつくることが多い。他物件の募集図面を見せてもらい、誤字・脱字があるかないか、パッと見た目のセンスはどうか、図やイラストの使い方がうまいかどうかなどをチェックする。そうしたセンスにあまりこだわりがない会社は、Web対策も下手だろうし、そもそも入居者に受け入れられないのではないだろうか。

アパート・マンション経営のターゲットは20代から30代中盤まで。そういう層にアピールする感覚が大切だ。Web戦略で入居が左右される時代になってきたので、会社の大小は関係ない時代ともいえる。要は、センス次第なのである。

 

②ノウハウは帳票に表れる
前述したように、管理会社の業務は多岐にわたる。それらをカバーする管理・運営能力、つまり知識と経験と実行力及び提案力があるかどうかは、「帳票類」に表れる。その会社で使用している様々な帳票、たとえば契約書、支払明細の帳票、入居者への通知文、あるいは様々な計数管理のフォーマットを見せてもらうと、その会社の質、レベルが簡単にわかることが多い。たとえA4判1枚の帳票であっても、ノウハウのかたまりだ。業務を遂行していく中でどんどん改善されていくものが帳票・フォーマット類であり、ノウハウを共有して社員みんなで使おうという意識の表れでもある。帳票は、それを見ればノウハウがあるかないかがよくわかる、バロメーターなのである。

 

③管理内容が明確か
その会社に任せれば、どういう管理をしてくれるかが具体的に明確になっているかどうかも重要だ。私は全国のいろいろな管理会社のコンサルティングもしているが、意外に管理契約書や管理内容の中味がはっきりしていない会社が多いことに驚かされる。どこまでの管理、マネジメントをするかが曖昧なまま管理契約をしている会社が少なくないのだ。いったん管理委託契約を結んだら、通常はかなりの長期間にわたって運営・管理を任せることになる。契約時点ではあまり気にならないかもしれないが、トラブル時の対処方法、費用負担の分担、火災など事故や事件があったときの処理と責任分担などから、契約解除まで、詳細に明示した契約書をつくっている会社がいい会社だといえるのである。

 

④管理・運営リポートがあるか
管理会社から毎月の賃料の振り込みと同時に、振込(支払い)明細書が発行されるはずだが、それ以外に管理・運営に関する定期的なリポートがあるかどうかもチェックポイントである。巡回時の報告はもちろん、もし入居者からクレームがあれば、その内容、対処をどのように行ったかなどを報告するリポートだ。どんなクレームや修繕があったかは、貴重な情報である。

 

そのデータが蓄積されてクレームの履歴がまとまれば、リフォーム提案など将来にわたって安定した賃料収入を維持するための基礎資料にすることもできるし、そもそも記録を残しておかないと、人間は忘れる動物であり記憶が曖昧になってしまう。その他、賃貸経営に関する提案リポートがあれば尚素晴らしい。しかし、このリポートを書くという作業は、それほど得意だという人(会社)はあまりいない。現実には、現場仕事でバタバタしているというのが実態だ。

避けたい会社

オーナーの利益より自社の利益を優先する会社を見かけることがある。次にあげるような会社は、避けるのが無難であろう。

①入居者に無理やりに物品を販売する
入居者に対して、嫌がっているのにいろいろなものを売りつけたりして、お金を取っている会社は疑問である。もちろん入居者が喜ぶことであれば、長く住んでもらうためにいいことだが、そうでないのなら、オーナーの利益を損なっているということになる。

②他の仲介業者を後回し
管理会社が自社仲介店を構えている場合、他の仲介業者でもより早く入居者を決められるのに、そこへは積極的に情報を開示せず、優先的に自社仲介店舗に仲介手数料を落とそうとする行為がある。自社で早く決められるのならまったく問題はないが、長期に空室があっても他業者に情報を開示しないようではオーナーの利益に反する。

③ベンダーへの不当な要求
リフォームやメンテナンスのベンダー(協力業者)に対し、過度な接待や不当なバック・マージンを強要する会社もなかにはある。それらの分は、コストに乗ってオーナーの負担となるのである。

④「売りたい、建てさせたい」に偏向
ディベロッパーや建設会社が、自ら販売あるいは建設した物件を、自ら査定する評価賃料で借り上げる所謂サブリース(一括借り上げ)をしているケースが多いのは、よく知られている。その中には、「売りたい、建てさせたい」に偏向し、そのために少々無理をした高い保証額をつける会社もあり、売るため、建てさせんがための家賃(空室)保証になってしまっている場合もあるので気をつけたい。「少々の無理」が「企業努力」か、真に「無理な保証」かの判断は難しいところだが。

サブリースは魅力的なシステムであり、確かなニーズがある。弊社も行っている。しかし、たとえ30年契約を結んだとしても、借り上げの契約書には「市場賃料との連動で1年もしくは2年ごとに保証(借り上げ)賃料の見直しをします」との一文が盛り込まれている。

 

30年間の長期間のリスクなど、オーナー以外には誰も負うことはできない。保証という「仕組み」だけを盲信して、思わぬ火傷(やけど)をしないようにしていただきたいものである。要は、「物件の力」に自信が持てるかどうかだ。

会社の雰囲気

最後に、「組織のマネジメント能力」であるが、簡単にいうと「会社の雰囲気がいいか」ということになると思う。どの業種でも同じだと思うが、会社の人間関係や組織の動きの良さはとても重要である。どう見分けるかというと、会社を訪問して、働いているスタッフの様子を見るといい。楽しそうに明るく働いていればまず大丈夫だ。逆にお客さんが来ても挨拶もしないで暗い会社は要注意だ。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2016.12.12 掲載)


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