全国賃貸住宅新聞

公開日:2017年1月11日

第96回 高橋みなみに学ぶ「リーダー論」

第96回 高橋みなみに学ぶ「リーダー論」
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組織の本質をついたマネジメント力に感嘆

■全国大会に出演してもらう

昨年、2016年の1年間で一番印象に残ったことは何かと問われれば、それは「高橋みなみ」の話を聞いたことである。私はAKB48のファンでもなんでもない(息子と一度だけ東京ドーム公演に行ったことはあるが(笑))。

 

彼女には、昨年12月に弊社オーナーズエージェントの全国大会にゲストで来ていただいた。そのときに一緒にパネルディスカッションをやって、彼女の「リーダー論」に触れることができ、いたく感銘を受けた次第である。

参加者の方も「アイドルと思って軽く見ていたが、感動した、すごい」「うちの会社にも来てもらって講演してほしい」「あれで25歳か、いろんな経験、苦労をしたんだろうなあ」と一様に高評価、というか驚きをもって彼女を迎えた。私自身も、「タカミナにうちの会社に入ってほしい(笑)」と思ったものだ。

 

彼女は1年ほど前、AKB48を「卒業」する直前に「リーダー論」という本を出したのだが、なんと12万部を突破したというのだから、ただのアイドル本としての評価ではないことは確かだろう。2005年の12月8日にAKB48としての最初のステージがスタートし、早々に初代の「キャプテン」という地位を与えられ、10年後には300人のメンバーのリーダー(「総監督」)を務めた。指揮をする秋元康氏が「AKB48とは、高橋みなみのことである」という名言を吐いたことは有名だが、たかがアイドルグループのリーダーと侮ってはいけないと思う。芸能人という個性派ぞろいのメンバーをまとめていくのは、至難の業ではないだろうか。彼女がいたからこそ、AKB48の成功はあったのではないか。

▲ 参加者からも大好評だったパネルディスカッション

■総選挙でのエピソード

パネルディスカッションで私がうなったのは、例の「総選挙」の導入のくだりだ。今でこそ、有名になった、毎年恒例のファンの支持によってメンバー全員の「順位」を決めるあれだ。誰が一番になってセンターポジションを確保するのか、「神セブン」と言われる上位7人に選ばれるのか、というAKB48最大のイベントだが、当初、このイベントの導入にはメンバー間では大反対で大ブーイングが起きたらしい。皆頑張っているのに、それにシビアな「順位」を付けるという手法は、当事者としては受け入れがたいことだった。高橋みなみ自身も当然反対だったらしい。最終的に自分自身が納得するまで3年かかったとのことだ。

 

しかし、皆がブーイングを言っているなかで、リーダーたる自分までが皆と一緒になって、文句を言っていたら大変なことになる。だから、反対の気持ちをのみ込んで、「きっとその先に良いことがあるんだよ」と言って、皆を励まし続けたというのだ。これはもうマネージャーのかがみではないか。会社の方針、上の方針を経営層の感覚で理解できる人は少ない。人は変化を根本的に嫌う。そのなかで、組織が崩壊しないためには、マネージャーが防波堤になって、皆をまとめるのだ。これができる人はなかなかいないのではないか。

下の世代には萎縮しないよう自らの位置を下げて相手に合わせる

■一人一人との関係づくり

また、人はどうしても「群れ」たがり、小さなグループを作ってしまう。そして、なんとなく相性が悪いな、と敬遠してしまう人を作ってしまう。ちょっとしたきっかけで、相手を誤解してしまったり、確かに悪い面が出てしまうこともあるだろう。そういうとき、彼女は「相手の懐に飛び込む」という。そして、その人のことを誤解しているグループに紹介して、間を取り持つそうだ。基本的に「私は人が好きですから」とさらっという。これなども、実際には、なかなかできないことではないか。

 

組織の基本は「コミュニケーション」にある。どんなに人数がいようと、組織の基本は「一対多」ではなく、「一対一」の集合体だという。一人一人との関係が基本にあるのだと。メンバーはもちろん、新しく入ったマネージャーやスタッフの名前もいち早く覚え、出身は、得意なこと、学生時代の部活等々、しっかり頭にいれるという。相手の「名前を呼ぶ」ことも人間関係の基本だろう。そして、挨拶。「おはようございます」、そして「ありがとう」を口癖にするとよいと。一人一人との信頼関係がなければ、リーダーは務まらないのだ。果たして、我々はこれがしっかりできているだろうか。

 

また一人一人との関係性を築くためには、肩書がじゃまになることがあるという。「キャプテン」「総監督」という人に、入ったばかりのメンバーは声をかける勇気など持てないだろう。そこで、壁を低くして付き合うようにしているらしい。楽屋ではなるべくヘラヘラしているとのこと。自分と同世代の人には、乱暴な口をきいたり、叱ったりしても、言い返せる間柄なので言ってもいいが、ちょっと年齢が下の世代に同じように言ってしまったら、もう相手は想像以上に心が折れてしまって立ち直れなくなる。だから、絶対「上から目線」の態度は取らないと。自分の位置を下げて、相手の位置まで下がって話すようにしているとのことだ。

 

これなど、耳の痛い話ではないか。我々は、社長だ、部長だ、課長だ、と言って会議で上から目線で話をしてはいないだろうか。下のものが委縮して意見が言えない雰囲気をつくってはいないだろうか。

■叱るときはフォロー役をつける

また、「叱る」ことの重要性とやり方についても話があった。一人フォロー役を作っておいて、自分が叱ったあとフォローしてもらうようにしているとのこと。「セットで叱る」ようにしているらしい。これも深い話で、往々にして、人は一人で叱って、叱ってばかりもなんだから、叱ると同時に褒めたりして、叱るより褒めるほうが多くて相手が勘違い、なんていうのもよくある話だ。ブレてはいけないので、自分は叱り役に徹するとのこと。

■「言葉」の大切さを知る

総選挙のときでもそうだが、彼女たちのプレゼン能力はとても高い。言葉がとてもしっかりしていて、相手に伝わる話し方をする。「太文字になる言葉をイメージ」しているとのことだが、ひそかに「名言集」なども読んで勉強しているらしい。また「うれしい」とか「くやしい」とか、見ていれば誰でもわかる言葉は発しないように気をつけているらしい。無駄な感情の言葉ではなく、画面に見えない、なぜうれしいか、なぜくやしいかを述べるようにすることで、スピーチの中身がぐっとよくなると。

 

経験で鍛えられているのだろうが、「言葉」が持つ意味、強さ、重要性を芸能界にいる人は実感しているのだろう。そして、リーダーは言葉を持たなくてはいけない。皆を鼓舞して、同じ方向を向いて進ませる言葉を。

 

パネルディスカッションの前に彼女と打ち合わせをしたが、私を真っ直ぐ見て、誠意を感じる話し方をする方だ。だてではない、というのが私の彼女に会った印象だった。

最後に、彼女の「リーダー論」を読んで、CPM仲間の不動産コンサルタント猪俣淳さんは、4回泣いたそうだ(笑)。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.1.9 掲載)


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