全国賃貸住宅新聞

公開日:2017年9月11日

第104回  コンサルタントを使いこなす

第104回  コンサルタントを使いこなす
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自社を客観的に指摘してもらうことに意義

人材や情報が足りない部分、新規事業などで導入し時間短縮や失敗の回避につなげる

不得手な分野でサポート依頼

コンサルタントを導入したことはあるだろうか。業務改善や一定の業務のノウハウの取得のためにコンサルティングを依頼するのだ。建設業界などではよくあることだが、不動産とくに賃貸業界ではあまり馴染みがないようだ。形のないサービスにお金を払うことに少々抵抗があるかもしれないが、コンサルタントを導入したことで、結果的に業績があがればいいわけで、費用対効果で判断できることだ。

 

弊社はコンサルティングをしている会社だが、実は、逆にコンサルタントも結構雇っている。不得手な業務、人事労務、財務会計、新規事業等々、人材がいない部門や情報が足らない部門、新規事業でよく分からない分野については、他人にお金を払って教えてもらう。何年も顧問をしてもらっている人も複数いる。ものすごく助かっているというのが実感だ。

労働性向上4つのポイント

話しの前提として、労働生産性向上のためのポイントは大きくわけて4つである(表1)。

①外注化、②IT化、③ナレッジ・マネジメント、④業務フローの改革の4つだ。

「業務フローの改革」は、たとえば、物件担当制にしていた組織を業務担当制に変更する、といったことである。賃貸管理会社であれば、ルーチンの業務をどう合理的にこなしていけるかがとても重要だ。丁寧になりすぎて、どんどん書類が増えていって、業務フローが複雑になっていくというのもよく聞く話しだ。

 

「ナレッジ・マネジメント」は、業務ノウハウ・知識の共有を推進することだ。個々のスタッフの頭の中にある知識・ノウハウを表に出し、皆が何時でも見られるところに置いておかなければならない。マニュアル作成もそれにあたる。ネット上のあるのが一番楽だろう。また、せっかくノウハウを吸収したところで、または長年勤めていた人が会社を辞められてしまっては情報の損失になってしまう。離職率を下げるというのも実はナレッジ・マネジメントである。教育に力をいれてスタッフのスキルをあげることもナレッジ・マネジメントの一種だ。

 

②「IT化」は、文字通りの意味だが、コンピュータにできることは全部コンピュータにやらせるのだ。二重、三重の入力などしていないだろうか。ワンライティングにする必要がある。最近は、スマホを持つのが当たりまえになっている。これをうまく活用することで、かなり合理化できる。このあたりは6月の連載で詳しく書いた。

 

最後に①「外注化」であるが、IT化と同じように、他者(ベンダー)にできることはお金を払ってでも他者にやってもらうのである。内製化すべきところと、外注(アウトソーシング)することをしっかり明確にするのである。他者にお金を払うのがもったいと思ってはいけない。外注コストが、社員の人件費と同じであっても、いやときにはそれ以上かかってしまっても払うべきなのだ。それは、社員という存在は自分の人件費以上の「稼ぎ」を付加価値を創出するのが役目だからだ。他者と同じことしかできないのでは、社員でいる存在理由がない。

 

1日の人件費が仮に1万円としよう。そのスタッフはやっていることを他者が1万円でできるのなら、任せたほうがいい。そして、そのスタッフは1万円以上、3〜4万円以上は最低売り上げる(もしくは価値がある)仕事をしなければならない。

「お金で時間を買う」という意識

さて、「コンサルタントの導入」であるが、これも外注化の一種だ。お金を払ってノウハウを買い取るという意味になる。ある一定の業務を習得するのに2年はかかるとする。それにお金を払うことで、短期で習得できるのなら、費用対効果としては合格となる。コンサルタントは、外注化のメリットの面だけでなく、②のIT化や③ナレッジ・マネジメント、また④業務フローの改革についてもアドバイスしてくれることだ。

 

コンサルタントを導入する意義だが(表2)、①時間の短縮、②失敗を避ける、③他社の事例を知る、④第三者の視点の4つかと思う。ノウハウを買い取る、ということは、「お金で時間を買う」という意味でもある(①)。また、自社でやった場合には失敗をする可能性もあり、それも大きな失敗をする場合もある。それを回避することができる(②)。コンサルタントから他社の詳しい事例なども聞けるので、参考になる(③)。

 

そして、これは一番大事だと思うのだが、自社のことを客観的な視点で指摘をしてくれることだ。個人でもそうだが、自分のことは一番わからない。そして、他人のことはよく見えるものだ。ゴルフをしている方はわかると思うが、他人のスイングについては、いろいろ指摘箇所を思いつき、「改善提案」をしたくなるが、では自分のスイングをよく理解しているかというとそうではない。自分のスイングは直接は観ることはできないからだ。動画に撮ってもらって自分の姿を観るのが上達への秘訣とよく言われる。信頼できるコンサルタントに、自社を客観的に評価をしてもらうことは有意義である。

見極めることが大事

ここで、「コンサルタント導入の注意点」(表3)を述べたいと思う。

まず①独りよがりなコンサルタントは避けたほうがいい。まあ、当たり前のことだが、マイペースで自分の考えを押し付けるような人はボツだ。

 

②実業をどこまで知っているかをみたほうがいい。多くの場合、実業を知らず、他の会社へのコンサルを通じて知り得た事実をただ横展開して指導しているので、そのやり方が新たな会社にあっているかはわからない。その業務についての経験、経歴を聞くと良いだろう。

 

③手間を惜しんではいないか、をよく見よう。コンサルティングは結構手間がかかるものだ。訪問時に事前準備をきちんとしているかを確認したい。少ない訪問時間で効果をあげるためには、事前準備、お互いの宿題等を確認、実行することが大事だ。

 

④自社側の負担を見極める、とはなにか。コンサル契約をして始動した時、コンサルタント側からこういうデータが欲しい、こういう情報を社内で集めておいて欲しいとかの依頼が必ず来るものだが、その業務に疲れてしまったり、実際できなかったりして、お金は払っているのに前に全然進まないというケースがある。

 

私も、ある業務でほとんどお膳立てをして、完成直前まで仕上げてあと最後の実行を指導先がするだけになったのだが、まったく実行されなかったという経験がある。それまでの仕事はまったく無駄になった。

私の反省点としては、最後の簡単な実行すらできない状況と意識であったことを見抜けなかったことだ。お金を余分にもらってでも、最後まで全部私がやればよかったのだ。逆に指導を受ける側としては、自社の状況と能力を冷静に判断して、どこまで自社で負担できるのかを判断することが大事だ。

 

⑤長く継続すべきだ。短期間で簡単に成果は求められない場合が多い。これはと思った人とは長く付き合ったほうがいい。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2017.9.11 掲載)


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