共有ファイルの管理は担当付け分類を明確化
添付資料や電話番号登録の保存はこまめに実施
前回に続き、生産性を上げるために、どういうことに気を付けたらいいか、どういうテクニックがあるかを述べたい。
会議のあり方
会社ではよく「会議」をする。そこでは、問題点に対する改善案が決定され、実行に移す「担当」が決められる。大事なことは、会議終了前には必ず決定事項を確認し「宿題の担当」を確認することだ。そして、次回の会議には、まず前回に決まったことの「復習」と「宿題」が行われているかの確認を行うのだ。これをルーティンとして実行することによって、せっかく時間をかけて決めたことを皆が忘れてしまったり、宿題をやってこなくても誰も気づかない、ということを防げるのだ。また、宿題をやってこなかったら皆の前で恥をかくという雰囲気を作ることもできる。会議というものは往々にして、時間だけはかかって、内容のないものになるものだ。
社内用語の定義
会社には、その会社、また業界特有の使用頻度の高い用語がある。我々の業界であれば、たとえば「稼働率(空室率)」、「解約率」、「申込み率」、「成約率」、「長期空室」などだ。これらの定義を明確にして、帳票などには、それを記しておくほうがよい。なぜならどう定義したかを忘れてしまうからだ。「稼働率」はうちの会社なら「賃貸借契約の発生戸数」÷「営業戸数」である。営業戸数とは、オーナーが貸し止めにしている物件は除くが、募集中も含め弊社で管理している物件の全戸数である。新築や新規受託でまだ完成や引き渡しをされていない物件は除くが、退去リフォーム中だからといって当然除くことはしない。
情報管理
共有ファイルのカテゴリーとその名称、運用ルールを明確にしよう。皆が使う共有ファイルのカテゴリー分けとその名称は、スタッフが各々勝手にやってはいけない。決められた担当しかやっていけないことにしよう。情報にスピーディにたどり着くためには、分類方法が勝手に変化してはいけないのだ。川下のカテゴリーまで変えてはいけないとはしないが、何代までOKとかのルールをつくろう。
また、ファイル名の付け方だが、ファイル名には「20181210_◯◯◯◯」と、頭に日付を半角でいれるのが弊社での統一ルールだ。これで時系列にファイルが並ぶことになる。ファイルを探す時間を短縮できる。また、この◯◯◯◯に入る名称の付け方にもセンスが必要だ。他人に渡ったときに、何のことかわからない名称では困る。短い言葉で要約した名称を付けてほしい。よく「最新」という言葉を付加する人がいるが、どの時点での最新かわからない(笑)。
マニュアルを作る意義
マニュアルを作るということは、業務を「体系化」し、「言語化」することだ。そのことによって、業務が「定型化」すなわち「テンプレート化」するのである。業務の80%は定型化できると言われている。マニュアル作りを侮ってはいけない。マニュアルは、ノウハウや情報を共有できるのは無論、なにより、業務の「標準」を定めることができる。この「標準」を決めるというのがとても大事なことなのだ。標準が決まれば、「イレギュラー対応」がわかる。逆に、標準が決まっていないと、今やっていることがイレギュラーなことだという自覚がないままに行ってしまうのだ。個人のアイデアも大事だが、無秩序な創意工夫は混乱を招くだけだ。また、実は一番の利点は、マニュアル作成過程で、業務をより深く理解し、検証することができることだ。マニュアルを作る過程で、もっとこうしたらいいのではないか等、必ず業務改善の提案が生まれるものだ。
ノート・メモのとり方
我々は仕事中には、メモをとる。ノートや手帳に書き記す。紙の媒体に書き記す習慣がずっと続いてきたが、そろそろそういったアナログに頼る時代は終わったのではないか。私はメインのノートは、エバーノート等のオンラインノートが圧倒的に便利であると思う。デジタルの良いところは、まず一番は①膨大なノート上での検索が簡単である。次に②ページの限界がない。③PCとスマホで同期ができる。④入力が早く、字が綺麗である。といったところである。
個人的なテクニック
メールで届いた添付資料はマメに分類、保存しよう。添付のファイル資料をマメに分類、保存しないと、後からどこにいったかわからなくなるのだ。また、携帯にかかってきた電話はマメに番号登録をすると良い。そして、誰の紹介とか、どういうきっかけで知り合ったかも一緒に登録すると良い。名前に連続して記入するのだ。名前だけだと思い出せない。また、他のスタッフのやり方を単純に真似てみるのも手だ。素直にパクるのだ。先輩や同僚がやっている方法を四の五の言わずにとりあえず真似てみたらどうだろう。彼らも何度かいろいろ試しているうちにその方法にたどり着いたのだ。そのことに敬意を表して、真似させていただくのだ。そのまま真似たほうがショートカットできるというものだ。
知的生産の場を持つ
結論から言うと、「自宅に書斎コーナーを持て」である。自分専用の部屋でなくてもいい。押入れの中でも、みかん箱一つ(ちょっと古いか)でもいい。自分だけの空間、そこでは自分だけの知的活動を行う「場」を持つのだ。「生産性を上げるテクニック」というテーマにはそぐわないと思うかもしれないが、「仕事ができる」人に共通していることは、「教養(雑学を含め)」度が高いというこことだ。知識がなくてもコミュニケーション能力が高ければ仕事が上手くゆくことも当然多いし、学歴と仕事の相関関係は意外なほどなかったりするが、しかし、「ある程度の情報量」と「見識」はどうしても問われるのだ。そこでは、読書をし、じっくりと業務改善等について思考し、また文章化する。文字化することによって思考がまとまるものだ。そして、物事の思考には多様なものがあることに気づく。
人の考えはいろいろなのだ。はたして、一人になって、じっくり考える時間を持っているだろうか。仕事の出来がいまひとつの人の共通点は、知識の絶対量が足らない、そして、物事に対する深み、つまり見識が足らないということだ。これは学歴ではない、本を読んでいるか、人の話しを普段からよく聞いて咀嚼しているか、がポイントだと思う。たとえば、「マニュアルを作ろう。業務を体系化して言語化しよう」と上司から言われたとする。この言葉の意味がわからず、むやみに拒否反応を示してしまう人がいる。「マニュアル」という単語の意味、や「体系化」、「言語化」という言葉が理解できなかったのだろう。視野が狭いので、自分がわからないことは「拒否」なのだ。
生産性を上げるためには、スタッフ間の共通認識、広い意味での共通言語というものも持たなければ上手くいかないのも事実だ。
宅建
我々の業界では大事な資格試験がある。「宅建」である。勉強の仕方にもテクニックがある。私は「逆回転勉強法」と言っているが、まず、模擬試験から挑戦するのだ。テキストを読む前に実際の試験問題にあたるのが一番いい。なぜなら、どういう類の試験が出るのか理解して、わからない部分からテキストをあたるのだ。最終目的は試験問題に正解することなのだから、より多くの試験問題にあたるほうが合理的である。
それから、我々はなかなか机に向かう習慣がないものだ。それで、まず帰宅したら、着替えもしないで、まっすぐに机に向かうのだ。そして、30分以上、とりあえず机の上で勉強してみよう。そうすると、勉強する場というか雰囲気が生まれる。精神的にも余裕がでる。そこで、食事をして風呂に入っても、勉強の場に戻れる。普通は、帰宅してほっとして、ついテレビ観て、風呂に入って食事したら、「もういいか明日勉強しよう」、となるのである。
(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2018.12.10掲載)