全国賃貸住宅新聞

公開日:2019年2月11日

第121回 人手不足をむかえて 合理化の手段

第121回  人手不足をむかえて 合理化の手段
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機械化や外部委託化で生産性向上

社員に任せる仕事の取捨選択が重要

重複作業を排除

空前の「人手不足」である。有効求人倍率は1.62倍(表)と40数年ぶりの高水準、大卒の求人倍率は1.88倍で7年連続上昇。採用の現場では、なかなか良い人材を採れなくなっているが当然だ。この20年間に20代の若者は3分の1減っている。女性やシニア世代、また外国人の採用に積極的になることが求められる時代だ。こうしたなかで、会社としていかに対応するか。それは「人」の労働生産性を上げるしかない。そして、「人」を使わないで、業務を行うことだ。

▲有効求人倍率の推移(新卒・パートを除く)

 

そのためには、まず1「2度以上、同じことをしない」ことを徹底したい。入居者の名前や物件名を何回も入力してはいないだろうか。賃貸管理ソフトに入れて、かつエクセルにも入れてはいないだろうか。7年ほど前に、サンフランシスコにある400名ほど社員がいる管理会社を訪問した時のことだ。副社長の方が言った言葉にハッとしたものだ。「私はヤーディに紐付かないアプリにはまったく興味がない」と強い口調で言ったのだ。ヤーディとはアメリカでよく使われている賃貸管理ソフトのことだ。いろんなサービス・アプリの情報があるが、ヤーディと情報の連携が出来ないものを使うつもりはない、と言い切ったのだ。これはつまり「2度以上の入力行為は絶対にしない」と言っているに等しい。この時以来、弊社も「ワンライティング化」に努めてようやく2年前に完成した。

契約書の綴り機導入

次に、2「機械にやらせる」だ。弊社には、「契印機」なるものがある。契約書を自動で綴るものだ。40万円ぐらいするので高価なものだが、コスパは抜群にいい。契約書作成を「袋とじ」でやると、一つ作るのに2分くらいかかってしまうが、契印機だと3秒で完成である。人件費を考えれば安いものだ。その他、「紙折り機」も用意してある。クライアントへ郵送するときの書類を折る作業が馬鹿にならないので、機械にやらせている。

 

3は「コンピュータにやらせる」だ。弊社では、不動産オーナーへの提案書もスマホアプリで簡単に作成しているし、退去リフォームのベンダー(業者)との進捗管理もシステム上で行っている。解約が出るとベンダーの担当の携帯にショートメールが自動で飛ぶ仕組みだ。また、仲介業者からの物件の空室確認も今は外部のシステムを使って電話上でコンピュータが答えるようになっている。これなどは契約すればすぐ使えるものだ。

フリー人材を活用

4はBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)だが、これはアウトソーシング(外注)のことだ。私はいま弊社のスタッフにどんどん外部に「丸投げ」していいと言っている。仮に年収400万円のスタッフがいたとする。その人がやっている業務を、そのままベンダーに任せて、そのコストが400万円だったら、それは「丸投げ」するべきだ。そのベンダーはその業務には慣れているだろうから、ミスも少なく質も高いことだろう。

そして、一番肝心なことは、業務がなくなった年収400万円のスタッフは、別の付加価値の高い仕事をして、年間で400万円以上稼げばいいのである。これがまさに「労働生産性を上げる」ことではないか。ベンダーに400万円払うのは少し勿体ないと思うかもしれない。しかし、本当に勿体ないのは400万円以上稼げる可能性のある「人材」、つまり「人件費」が勿体ないのである。

 

ベンダーに任せるだけでなく、②「専門的な外部スタッフ」の登用も有益だ。業務を全部社内のスタッフでやろうとせず、優秀な外部の人材に手伝ってもらうのだ。「直接雇用」せず、「業務委託契約」で済ませるのだ。定期的なミーティングのみで会社に来てもらわなくてもいい仕事だったりすると、フリーの方だけでなく、本業でどこかに勤務している方でも対応できる。世の中は「副業の承諾」に流れている。本人にとっても新たな収益源として有効だろう。また、弊社では、③「クラウドソーシング」も多用している。ネットを通じた作業依頼のことだが、ロゴマークを考案したり、商標を考えたり、イラストを作成するのには「ランサーズ」を使うことが多い。簡単な作業系なら「シュフティ」だ。また、スタッフへの④「研修」受講も、教育をアウトソーシングしているといえるだろう。「E-ラーニング」も手軽に自分の空いた時間でできるから便利だ。

 

BPOは、BPOしたほうがいいものと、内製化したほうがいいものとの判断も大事だ。営業をBPOするところは少ないと思う。弊社では、デザインやマーケティング部門、システムプログラマー等は内製化する傾向が強い。

 

5番目は「テレワーク」だ。テレワークには「在宅勤務」と「モバイル・ワーク」と「サテライト・オフィス」の3つの意味があるが、弊社では在宅勤務をすでに行っている。妊娠出産した女子社員が、自宅で仕事をしている。よく働いてくれて助かっている。 「モバイルワーク」はオフィス以外の場所で仕事をすることを認めることだ。営業はもちろん現場管理等、外に出るスタッフには全員ノートパソコンやポケットWi-Fiを持ってもらい、いちいち会社に戻って来なくても移動の途中にどこか喫茶店にでも入って仕事をしてもらっている。直帰も当然可だ。

 

「サテライト・オフィス」もやりたいと思っている。弊社は本社が新宿だが、アンケートを取ってみたのだが、自宅の近くにサテライト・オフィスがあればそこで働きたいか、という問になんと全員がイエスであった。やはり、通勤ラッシュは皆嫌なのだろう。6「労働条件を改善」は、採用を有利にするため、また離職を防ぐために有効だ。年間休日、有給取得、残業時間、振替休日の取りやすさ等、働き方改革がカギだ。

 

最後に、イギリスの歴史学者C・N・パーキンソンは「パーキンソンの法則」の中で、「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」と述べている。つまり、仕事の中身を管理していないと、勤務時間いっぱいを使って仕事をするようになるのだ。それも悪意なく。本人は忙しい、と思っているのだが、やらなくていいことまでやっていることが多いのだ。

(筆:藤澤雅義/全国賃貸住宅新聞2019.2.11掲載)


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