全国賃貸住宅新聞

公開日:2019年7月8日

第126回 入居者ニーズアンケート調査の解説

第126回 入居者ニーズアンケート調査の解説
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ウェブ申し込み、利用したいが半数弱

仲介サービスに期待することは条件交渉が1位

私が幹事をさせていただいている「21C.住環境研究会」の、第8回目の「入居者ニーズアンケート調査」の結果が発表された。この勉強会は、もう25年続いているもので首都圏の賃貸管理会社20社強が年に数回集まって勉強している。3年に1回、「リクルート住まいカンパニー」と共同編集でそれぞれ自社の賃貸管理物件の入居者にアンケートを実施、発行しているものだ。毎回、1,000人以上の入居者に実施しているが、今回は1,237人の入居者に聞いたもので、この手のアンケートでは最大級のものと自負している。全部で37問の質問に答えてもらっているのだが、いくつか印象に残る設問を解説したい。

▲図表①

■ WEB利用での申し込み、契約について
部屋探しにおけるネット環境の影響については業界的には関心が高い事柄だが、「お部屋を決めた後に賃貸借契約を結ぶ際に、WEB上でTV電話などを活用して来店せず契約できるとしたら、利用してみたいか?」という問があった(図1)。申し込みや契約ともにWEBでいいとする人が、44.5%もいたのだ。また、申込みはWEBでいいが、契約は対面で行いたいとする人が、32.3%であった。WEBは活用したくないとする人が23.1%であった。入居者がどこまでWEB申し込みや契約の具体的なイメージができていたかはわからないが、約半分の人はWEBでの契約まで全部OKであり、4人に3人は、WEBを利用する説明や行為を肯定していることになる。「WEBで契約」の内容を問の中では触れなかったので、もっと詳しく「TV電話上で対面で行う」とかにすれば、もっと肯定的な意見が多くなったかもしれない。ちなみに今回のアンケートの回答者の平均年齢は30.7歳であった。ITリテラシーは高い世代といえる。

▲図表②

■ ネットで探した物件でそのまま契約
次に、契約した部屋をどう探したのか、という問だ。これは2012年、2015年、2018年と3回目の設問(図2)である。6年前から変わらず、「ネットで見た物件にそのまま契約した」人が約4割いる。「ネットで見た物件を扱っていた不動産会社の他の物件」に契約した人を入れると、今回は75.7%(新規契約の入居者への設問)である。’12年は67.9%、’15年は72.5%であったので、徐々に増えてきているといえる。4分の3はネット経由で知った物件に契約し、逆にいうとまだ4分の1は、ネット経由でなく契約しているともいえる。それは「情報誌やチラシ等紙媒体を見て」、「不動産屋さんに飛び込んで」、「街を歩いていて募集看板を見て」、「友人の紹介で」等であろう。それらもまだ活きているし、今後なくなることもないのであろう。 因みにこのアンケート調査は、首都圏の「管理会社」の物件に契約した入居者を対象に行っている。よって、ネットに掲載する場合も、仲介専門業者にありがちな「店舗への誘導のための広告」としてではなく、本気でその物件に契約してほしいとして掲載している度合いが高い。

▲図表③

■ 仲介手数料の価値
この連載では、私はなんども「賃貸仲介」というものへの意義を問うているし、「仲介手数料」がはたして今後取得できるものなのかどうか懸念を投げかけているが、今回のアンケートでは「仲介手数料の価値」について聞いている。「仲介手数料を支払っても良いと思うサービスはなにか?(図3)」と聞いてみたのだ。1位は、「条件交渉を管理会社や大家さんと実施してくれる」であった。部屋探しのユーザーは、オーナー側への条件交渉を期待しているのだ。家賃をまけて欲しいとか、賃料発生の日を少し送らせて欲しいとか、エアコンが付いていないが、付けてはくれないか等ということだろう。2位は、「契約などの事務手続きをサポートしてくれる」、3位は「気に入った物件の内見手配をしてくれる」と続き、4位でようやく「自分にあった物件を紹介してくれる」とある。これをどう捉えるかだが、本来はこの4位の「物件紹介」がダントツで1位に来るべきなのではないだろうか?賃貸仲介店とは「お部屋探しのためのお店」ではなかったか。しかし、図1、図2の設問からもわかるように、既にネット上で部屋探しはほぼ終わっているし、ネットで契約できるという層が確実に存在する。これらの潮流が今後、我々のビジネスモデルに大きな変化を起こすことになることは間違いないと思う。


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