賃貸管理の可能性に、挑む。
当コラムでは、「賃貸管理ビジネスを成功に導くためのポイント」を、オーナーズエージェントのコンサルタントたちが分かりやすく解説します。
今回のテーマは「社員の専門性の高め方」です。
社員レベルを引き上げ、企業利益を呼び込む土台をつくる
真のプロパティマネージャーになるには…
こんにちは、コンサルタントの高橋です。
賃貸管理会社にとって、不動産オーナーから賃貸経営において一番に頼られるアドバイザーであることこそ理想の姿といえるでしょう。しかし、現実では胸を張って「うちの社員は信頼されている」と言い切れる会社は少ないのではないでしょうか。真のプロパティマネージャーには、PMの基礎知識はもちろん、日常業務での経験だけに留まらない幅広い分野の知識が必要となります。
社員の意識変化と勉強の環境づくり
社内に真のプロパティマネージャーを育てるためには、実施しなければならないことがふたつあります。
ひとつは、社員の成長意欲の醸成。方法はさまざまですが、例えば昨今、DXやBPO(一連業務のアウトソーシング)によって管理の雑多な業務は簡易化されつつある一方、社員には「社員にしかできない業務」が求められるようになっています。その事実、厳しめに言えば、自分で自分の価値を高めなければ会社にとって必要な人材でなくなってしまうという危機感を実感させることは、社員の成長意欲を引き出す刺激策のひとつです。3年後、10年後の自分はどうなっていたいか、上司の助言も交えて考えさせれば、成長への意識も徐々に芽生えてくるはずです。
もうひとつは、教育のための会社の環境づくり。よほど優秀な社員でない限り、わざわざ時間を作って自分の業務範囲外の知識まで習得しようとはならないものです。となれば、強制的にでも勉強をしてもらわなければなりません。時には就業時間を割り当ててでも、会社が「学ぶ環境」を用意すべきでしょう。
とはいえ、当社もまだまだ発展途上。「用意すべき」などと書きはしましたが、まさにいま四苦八苦しながら経験の浅い社員の育成や、業務分担制の弊害である知識の偏りの是正に力を入れているところです。
参考になるか分かりませんが、ここ最近で実施した社内勉強会(下表参照)をいくつかご紹介しましょう。
【最近実施した社内勉強会一覧(テーマ・対象者)】
自分の資産設計を考える勉強会
オーナーの資産設計を語る前に、自身の将来の資産を考える機会を作る勉強会です。具体的には、FPではお馴染みのライフイベント・キャッシュフロー表に予想収入・支出を入力し、未来の資産をシミュレーションさせます。現実を知ることで、特に若手社員は仕事に一層身が入るのではないでしょうか。
私も20代の頃に初めてシミュレーションし、最終的に家計が破綻する計画表をみて絶句してからというもの、貯蓄や投資に対する意識が変わったことを覚えています(笑)
プロパティマネージャー養成講座
ある程度知識のある中堅社員をさらに前線で活躍できる精鋭にするべく実施する実践的な研修です。内容は空室対策・BM業務など基礎的なものから、長期修繕計画・投資分析・売買・相続・税務・土地活用といった一定の専門性を要するところまで。社内から立候補で数名を募り、PM事業部長が実際の生々しい事例をもとに知識や考え方を伝えていきます。
勉強会というよりもはや養成研修であり、タイトル通り実務スキルを身につけたプロパティマネージャーを育成することが目的です。実施にあたっては、まずはどのスキルを習得させるかを可視化してまとめることから始まりますが、全てを網羅する指導役がいなければ、分野ごとに精通したベテラン社員が講師を担当したり、外部講師を招くなどで補います。
社員の知識習得は会社にとって意義ある投資
さりとて、勉強会などインプット中心の教育だけでは当然売上は生まれません。さらに就業時間中に実施するとなると働く時間も削られるうえ、一部業務のBPOなどリソース確保策も検討が必要になります。生産性を考える経営者には売上減・コスト増のマイナス施策とも感じられるかもしれませんが、それでも教育により社員が専門性を高め、オーナーとの会話や提案にプラスの変化が生じれば、会社にもたらされる利益は増え、教育コストは最終的に有益な投資となるはずです。
また、定期的な社内勉強会は講師となる社員がアウトプットし成長できる場でもあります。若手社員がどんどん講師役を担うことで、成長循環モデルも確立できます。真のプロパティマネージャーを育成する道のりは長く険しいものですが、千里の道も一歩から。試しにひとつでも定期的な勉強会を企画してみてはいかがでしょうか。