物件の敷地内に植えられた植物を撤去するには?
オーナーは問答無用で撤去を要求
今回、管理会社から寄せられた相談は、「物件敷地に入居者が勝手に植えた植物を撤去したいがどうすればいいか」というものでした。オーナーは問答無用で撤去するように言っているそうですが、いくら勝手に植えたからといって、無断で撤去すれば入居者の反感を買うのは必至。余計なトラブルに発展しないとも限りません。
管理会社としては、できれば入居者と話し合って穏便に植物を撤去したいとのことですが、ではどのように入居者との交渉を進めればいいのでしょうか? また、オーナーの要求通り、植物を勝手に抜いても問題ないのでしょうか?
【相談ダイジェスト】
- 物件の敷地内に入居者が勝手に植物を植えてしまった
- オーナーは問答無用で撤去しろと言うが、できれば穏便に解決したい
- 植物撤去について入居者とどのように交渉を進めるべきかと相談
- オーナーの要求通り、植物を勝手に抜くのは問題ないのか
専門家の回答
敷地内ならオーナーの「所有物」。植物撤去に許可は不要
植物撤去についてどのように交渉を進めるべきか、というご相談ですが、結論から言うと、敷地内に勝手に植えられた植物を貸主側が撤去することについて、実は入居者の許可は必要ありません(※)。
というのも、持ち主の所有権が残り続ける放置自転車などと異なり、所有地に植えられた植物は法的に「土地所有者の所有物」になるからです。所有物である以上、所有者はそれを自由に使用し、収益し、または処分することができますので(民法第206条)、貸主側が植物を取り除くのに入居者の了解はそもそも必要ない、となるわけです。
※ただし、庭付き1階物件や共用部の庭部分などで、植物栽培を事前に認めている場合は撤去できません。
しかし一方で、植物が入居者の所有を離れるとなると、所有者となった貸主側は入居者に対して、法的に植物の撤去費用や原状回復費用の請求ができなくなると解釈される点には注意が必要です。自身の持ち物を自身で撤去したのなら、撤去にかかった費用を入居者に負担させられないのも当然のこと。その旨についてはあらかじめオーナーに伝えておけるといいでしょう。
実務上は入居者への撤去要請が無難
ただし、相談者がご心配の通り、法的な根拠があるからと一方的に植物を撤去すれば、やはり入居者感情の悪化は避けられないでしょう。入居者としても、「なんで勝手に引き抜くんだ」「せめて一言くれれば」と思い、さらなるトラブルに発展することも考えられます。
そこで法的な問題はいったん脇に置いて、管理会社としては、入居者に勝手植えをされては困る旨をまず伝え、敷地に植えた植物を植木鉢などに移植してもらうよう要請できるといいでしょう。その際、期限をあらかじめ区切っておき、そのときまでに撤去・移植がされない場合は管理会社側で撤去する旨も伝えておけば、後々のトラブル防止に役立ちます。
また、こうしたトラブルの予防策として、賃貸借契約書に「敷地内で植物を勝手に植える行為」を禁止行為として明記するのも検討したいところ。すぐに実行できますし、同じ問題を起こさないように先手を打つことで、オーナーからの評価を高めることにもつながります。
一方、コストこそかかりますが、敷地内に土がむき出しのところがあれば、砂利や真砂土などで覆ってしまうのもひとつ。地面の露出が減れば、雨の日の泥はねや夏場の雑草対策となり、物件の美観改善に役立ちます。加えて、外観に合わせて化粧砂利などを使えば、物件の印象アップにもつながり、空室対策として活用できるかもしれません。
「禍を転じて福と為す」とも言いますが、今回のトラブルをきっかけとして、ぜひ賃貸経営のプラスになるような提案に挑戦してみてはいかがでしょうか。
※この事例は2023年4月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。
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