相談デスク

公開日:2023年10月6日

入居者間トラブルで退去発生。引っ越し費用の負担請求に貸主は応じるべき?

入居者間トラブルで退去発生。引っ越し費用の負担請求に貸主は応じるべき?
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問題入居者の迷惑行為で退去発生。貸主側にも責任?

夜中にインターホン、ポストにラブレター…

今回、管理会社から寄せられた相談は、「迷惑入居者が原因で退去することとなった入居者から退去費用を請求されたとき、貸主は支払う必要があるのか?」というものでした。

退去予定の被害入居者は法人契約の女性で、隣室の外国人男性から「夜中にインターホンを押されたり、ドアノブを何度も回されたりした」「『会えなくて寂しい』と書かれたラブレターをポストに投函された」など、迷惑行為を繰り返し受けていたとのこと。管理会社にも報告があり、加害男性に注意を行なうなどの対応をしたものの改善されず、ついには警察沙汰に…。結局、被害女性は「ここにはもう住めない」と退去を決めたそうです。

本題はここからで、退去に際して、短期解約に当たるため被害女性に違約金を請求したそうですが、被害女性から「他の入居者のせいで退去しなければならないのに、全て自分が負担するのはおかしい」「迷惑行為に対して十分な対応をしてくれなかった貸主側にも責任がある」と、違約金の免除と引っ越し費用の一部負担を要求されてしまったと言います。この場合、被害女性の要求どおり、貸主側で費用を負担する必要があるのでしょうか。

【相談ダイジェスト】

  • 入居者の外国人男性が女性入居者に迷惑行為。被害女性が退去に追い込まれる
  • 退去にあたり、被害女性から違約金の免除・引っ越し費用の一部負担を要求される
  • オーナーや管理会社で費用を負担する必要があるのかと相談
  • 今後のトラブル防止のため、問題を起こした外国人男性を退去させたいが可能か?

専門家の回答

貸主側に費用負担の責任なし

結論から言うと、貸主側で違約金を免除したり引っ越し費用を負担したりする義務はありません。そもそも加害者は外国人男性であり貸主側は当事者に当たらないため、一連の迷惑行為に対して責任を負う立場にはないと言えるからです。

また、被害女性が退去費用の請求理由に、「迷惑行為に対する対応が不十分だった」を挙げていますが、管理会社にできることは、加害男性の迷惑行為に対して本人に注意をするまでが限界でしょう。さすがに、物理的に本人の行動を制止することはできません。

従って、管理会社が加害男性に注意等の必要な対応を行なっていたのなら、貸主側としての責任を十分に果たしていたことになり、退去費用の負担を求めるのは過大な要求と言えます。

少々、酷な結論に聞こえるかもしれませんが、やはり問題の根本原因は「加害男性」なのであり、退去にかかる違約金や引っ越し費用について被害女性が負担したくないというなら、支払った費用を加害男性へ請求するほかないのです。被害女性としては、「もう金輪際、加害男性とは関わりたくない」という思いでしょうが、だからといって、手近な貸主や管理会社に引っ越し代等の費用の補填を求めるのは筋違いというものでしょう。

とはいえ、この被害女性の「不可抗力的な解約」について、理解や同情を示す貸主もいると思います。法的な義務こそないとはいえ、貸主が希望するのであれば、違約金の減額・免除などの対応を行なうことは問題ありません。

契約違反を理由に問題入居者に退去要請

一方、今回のトラブルの事後対応として、「加害男性を退去させることは可能か?」とのご質問ですが、迷惑行為で退去者まで出ている状況でもあり、契約違反を理由に退去を促すことは可能です。

ほとんどの賃貸借契約書には、下表のような「公序良俗に反する行為をした場合は契約解除とする」旨の文言が含まれています。該当の契約書を確認したうえで、条文を根拠に毅然とした態度で退去を求めましょう。

賃貸借契約書の記載例

第●条(禁止行為・遵守事項)
1.乙は[ 別表1 ]に掲げる行為をしてはなりません。

《別表1:禁止行為》
・その他、公序良俗に反する行為・風紀衛生上、法律上問題となる行為・共同生活の秩序を乱す行為・本物件に損害を与える行為をすること。

話し合いで契約終了日を決める際は、①契約終了日②契約終了日を過ぎても退去しない場合の措置、を明記した覚書を作成し、問題入居者に記名押印させることが大切です。
また、このような事態を避けるために、賃貸借契約書の中に次のような条文を入れておくのもいいでしょう。

賃貸借契約書の記載例

第●条(契約終了の場合の原状回復等)
・本契約終了と同時に乙が本物件を明け渡さないときは、乙は本契約終了の翌日から明渡し完了に到るまで、賃料等の倍額の損害金を甲に支払わなければなりません。

記載例では、通常の賃料の「倍額」を設定していますが、この額は判例でも「不当であるとはいえない」と結論されています。このような「ペナルティ」を設け、問題入居者にあらかじめ伝えておくことで、その後の退去を効果的に進めることが期待できます。

※この事例は2023年10月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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