物件内の事故で入居者がケガ。見舞金はいくらが妥当?
入居者が“室内階段の突起物”でケガ
今回、管理会社から寄せられた相談は、入居者が室内でケガをした際、「オーナーが入居者に見舞金を送るとしたら金額はいくらが妥当か」というものでした。
話によると、入居者は室内にある階段の突起物に足を引っかけて転倒し、骨折してしまったとのこと。オーナー側は物件に問題はなかったとしたうえで、ケガをした入居者が気の毒なので、せめて見舞金を送りたいと話しているそうです。
さて、この場合、見舞金の額やオーナーの責任についてどのように考えればいいでしょうか。
【相談ダイジェスト】 |
専門家の回答
見舞金の額はオーナーの気持ち次第
今回のご相談では、室内階段の突起物が物件側の問題かどうかで入居者への対応は変わってくることが考えられます。仮に、相談者の見立て通り物件側に問題がなかった場合、見舞金の贈呈はオーナーの厚意となります。
そのため、見舞金の額自体もオーナーの気持ち次第ということに。あくまで参考程度ですが、一般的な目安を挙げるならば1~3万円が常識的な額と言えます。オーナーの意向をよく確かめたうえで、金額について結論を出していきましょう。
物件瑕疵と認められるなら損害賠償の恐れも
ところで、室内階段の突起物をオーナーが「問題ない」と判断していたとしても、入居者が「これは物件の『瑕疵』である」と主張して損害賠償請求(治療費や通院費、仕事を休んだ際の休業補償、慰謝料など)をしてきた場合は、貸主として対応が必要になる点は注意が必要です。
瑕疵とは、「その物が通常有すべき安全性を欠いている」ことをいいます。今回のケースで見ると、突起物の高さ、大きさ、形状、階段のどの場所にあるのか、などにより瑕疵の判断がされることになります。そして、もし瑕疵であると認められた場合、オーナーには「工作物責任」による損害賠償義務が生じる恐れがあります。(民法717条1項)
民法717 条1 項(工作物責任) 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 |
とはいえ、室内階段の突起物は、入居者が普段生活している専有部にあることから、その位置を常日ごろから把握できたことが考えられます。そのため、入居者から賠償請求がされたとしても、「瑕疵があったとは言えない」あるいは「過失相殺により賠償額を減額すべき」と判断される可能性も考えられます。
しかしながら、事故原因が物件の瑕疵であるかどうかの判断はケースバイケースです。瑕疵と認められた場合には、オーナーに上記の工作物責任が生じ、入居者に対して損害賠償の支払い義務が発生するリスクがあることについては、あらかじめオーナーに伝えておくべきでしょう。
施設賠償責任保険なら万一の際も安心
ちなみに、もし事故原因が物件の瑕疵と認められ、損害賠償が必要になった場合でも、オーナーが「施設賠償責任保険」に加入していれば保険適用の対象になる可能性があります。
施設賠償責任保険とは、施設や建物に生じた不具合で他人の身体・財産に損害を与えた場合、その損害を補償してくれる保険のことをいいます。建物・施設内で起きる事故リスクに備えることができ、入居者だけでなく、通行人や車両への被害など幅広い範囲で補償を受けられます。
また、施設賠償責任保険は保険料が安い点も魅力のひとつです。商品によっては、年間たった1万円で1億円の補償限度額を設定できるものもあり、高いコストパフォーマンスを誇ります。
保険に加入していれば、万一の際でも事故対応をスムーズに進められます。もしオーナーが入っていない場合は加入を提案してみてもいいかもしれません。
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