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賃貸住宅の「照明不足」。転倒した入居者から損害賠償を請求されたら管理会社はどう対応する?

2021.08.24
  • 相談デスク

    「相談デスク」

    このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。

    敷地内で転倒。治療費を請求する入居者への対処法

    もし、賃貸住宅の敷地内で入居者がケガをしたら、その責任は誰にあるのでしょうか。

    今回、賃貸管理会社から寄せられた相談では、夜中にアプローチを歩いていた入居者が転んで負傷。原因は敷地内の照明不足(照度不足)にあるとして入居者から管理会社に治療費の請求があった、というものでした。

    照明不足については以前からクレームがあったそうですが、こんなとき、管理会社は入居者やオーナーに対してどう対応すればいいのでしょうか。

    相談ダイジェスト

    • 物件の敷地内に照明が少なく、以前から「暗い」とクレームが寄せられていた
    • 夜中にアプローチを歩いていた入居者が転んで負傷。管理会社に治療費の請求が来たが断ろうと考えている
    • 断って問題ないか、入居者から損害賠償請求される可能性はあるかと相談
    • 照明を増やすに当たりオーナーにどう提案すればいいのか?

    専門家の回答

    争点はオーナーの「工作物責任」と入居者の「注意不足」

    《結論》

    • 入居者から損害賠償請求された場合、オーナーの「工作物責任」が問われる恐れがある一方で、照明不足だけがケガの原因なら入居者の注意不足も勘案され、棄却または過失相殺になることも考えられる。
    • その入居者がクレーマーでないのなら、入居者感情に配慮し、治療費の負担やお見舞いなど誠意ある対応を速やかに取った方が賃貸経営にとってプラスになるだろう。

    物件敷地内でケガをした入居者から治療費を求められた今回のケース。相談くださった管理会社は断るつもりとのことですが、そのせいで損害賠償請求に発展する恐れがあることを気にしているようです。

    もし損害賠償請求となった場合、問題となるのは物件の所有者であるオーナーの「工作物責任」です。

    工作物責任とは、土地に設置された建物や階段などの工作物が人に損害を与えた場合、工作物の所有者(または占有者)が責任を負うことになる損害賠償責任のことを言います。

    工作物は建物だけでなく、敷地内のアプローチなど共用部分も含みます。そのため、アプローチの照明不足が「物件の瑕疵」と認められる場合、オーナーの損害賠償責任に繋がる可能性は高いと言えるでしょう。

    とはいえ今回のケースで明確に物件の瑕疵があったかと言うと、そうとも限りません。

    何しろ問題のアプローチは元から暗く、そのことは住んでいる入居者自身も承知していたわけですから、夜になったら足元を手持ち照明(懐中電灯、スマートフォンの照明など)で照らすといった対策は打てたはずです。

    仮に、ほかの入居者がそのような対策で問題なく生活していたとしら、今回のケガの原因は照明不足だけでなく、入居者自身の注意不足(過失)も含まれると言えるでしょう。そのため損害賠償請求をしたとしても、棄却か、あるいは過失相殺が認められ、オーナーが全面的に責任を負う事態にはなりにくいと考えられます。

     

    実際に判例を見ると、照明不足による事故で施設の所有者に100%の過失があるとしたケースはほとんど見当たりません。わずかながら共通する判例でも、照明が不足しているかどうかの判断は場所・状況によって異なるようです。

    たとえば、プラネタリウム内で起きた転倒事故による損害賠償請求(東京地裁:平成25年6月25日)では、きちんと足元灯が設置されており、かつプラネタリウムが本来暗くなる場所であることから、運営会社に瑕疵は認められないとして原告の訴えが棄却されています。

     

    また、道路照明の不足が問題となった歩行者の遊歩道から河川への転落死亡事故の裁判(奈良地裁:平成29年3月23日)でも、照明の不足による道路の瑕疵は認められていません。

    というのも、問題の道路を夜間歩行する際、近隣住民は通常、自ら懐中電灯などの照明器具を携行しており、かつ住民から照明設置の要求もなかったという背景があるからです。

    川沿いの真っ暗な遊歩道に懐中電灯もなしに近付く…、普通ではあまり考えられないことです。

    むしろ歩行者には、自身の身を守るために「照明器具を携行することが社会通念上要求される」ことから、照明器具を持参しなかった歩行者側の過失が問われることになったのです。

    入居者感情に配慮し誠意ある対応を

    上記のように、照明不足を原因とする工作物責任では、必ずしも物件の瑕疵が問われるわけではないようです。しかし、だからといって、相手は入居者であることも忘れてはいけません

    損害賠償請求自体は棄却される可能性があるとはいえ、入居者感情を無視してしまうと早期退去を招き、賃貸経営にとってはマイナスとなるでしょう。ましてや、これまで滞納も迷惑行為もなく住んでくれていた入居者なら、なおさら気を遣いたいところです。

    管理会社としてはオーナーと相談し、入居者の要求に全面的に応じるとまではいかないまでも、お見舞いの品を持ってご挨拶にうかがうなど誠意ある態度を示して事態を穏便に収めるのも管理上のテクニックと言えるのではないでしょうか。問題がこれ以上こじれる前に、速やかに和解の道を見つけていきましょう。

     

    補足となりますが、工作物責任の条文と、工作物責任による損害賠償請求の内容は主に次のとおりです。

    《工作物責任(民法第717条)》

    土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

     

    《損害賠償の内容》

    • 治療費:入院中の着替えなどにかかった雑費や、通院のための交通費などを含む
    • 入通院付添費:医師の指示で当事者の入通院に近親者が付き添った場合の損害賠償
    • 逸失利益:ケガの後遺症がなければ当事者が本来得られたはずの収入
    • 休業損害:当事者が休業により給与・賞与を受け取れなかった場合の損害賠償
    • 慰謝料:入通院慰謝料や後遺障害慰謝料などがある

    「エクステリア照明」で空室対策に転じるのも一手

    照明不足を原因とした損害賠償請求が必ずしも工作物責任となるわけではないことを説明してきましたが、入居者がケガをした以上、敷地内の照明不足は速やかに解決したいところです。

    そこでオーナー提案に当たり、いっそのこと物件を美しくライトアップする「エクステリア照明」を勧めるのもいいかもしれません。「禍を転じて福と為す」なんて諺もありますが、事故対策として空室対策に繋がる解決策を提案できればオーナーにも喜んでもらえるかもしれません。

    エクステリア照明には多くの種類があり、入居者の動線を照らすアプローチライトや、玄関先を照らすポーチライト、お庭を照らすガーデンライトなど設置場所によってさまざま。形状も地面に埋め込むグランドライトや、足元を照らすフットライトなど豊富です。

     

    《エクステリア照明の種類》

    アプローチライト

    敷地出入口から玄関先までの動線部分を照らす。転倒などの事故を防止するほか、防犯対策にも役立つ。

    ポーチライト

    玄関扉の周辺を照らす。各戸に設置することで物件全体の雰囲気を明るくし、鍵の開閉もしやすくなる。

    ガーデンライト

    植木のそばや花壇に設置する。庭をライトアップするだけでなく、暗くなりがちな植栽を明るくして防犯対策にもなる。

    ガレージライト

    ガレージなどの駐車スペースに設置する。夜間の車の出し入れが便利になり、事故防止に役立つ。

    勝手口ライト

    物件の勝手口(裏門)に設置する。人目につきにくい場所にあることが多いので防犯対策に有効。

    エクステリア照明で物件を美しくライトアップできれば、内見時の印象アップに繋がるでしょう。また、賃貸情報サイトに夜間のライトタイプ写真を載せることで、昼間の写真が多いなかで存在感を際立たせることができ、反響獲得で競合に差をつけることも期待できます。

    エクステリア照明は比較的コストもかからない空室対策ですので、ぜひ物件に合う照明を探し、オーナーに提案してみてください。

    ※この事例は2021年8月のものです。ご紹介した考え方は一例であり、トラブル解決のプロセスは案件ごとに異なる旨、ご承知おきください。

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