「相談デスク」
このコーナーはベーシックサポート会員様から実際に当社へご相談いただいた内容を、解決策の一例として公開していく企画です。
定期借家契約における「期間満了通知」の方法は
普通借家契約と違い、単純に期間満了によって契約が終了する定期借家契約。しかし、契約期間が一年以上となる場合には、借主に対して「期間満了の通知」を行なう必要があり、これが無い場合には、貸主は借家人に対して契約の終了を主張できません。 では、その「期間満了の通知」はどのように行なうべきなのでしょうか。
相談ダイジェスト
- 定期借家契約の終了についてお伺いしたい。
- 【相談 1】期間満了の通知が遅れた場合、どうなりますか?
- 【相談 2】期間満了の通知は、たとえば電話だけではだめですか?
専門家の回答
通知方法は書面でなくとも可。ただし、通知が遅れればそのぶん契約終了の主張も後ろ倒し。
定期借家契約は、2000年3月1日より施行された「契約で定めた期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する賃貸借契約」です。
その最大の特長は、名前の通り「定められた契約期間の満了によって契約が終了する」という点にあります。従来型の賃貸借契約では、貸主は正当事由(その建物を別の目的で使用する理由など)なしに更新を拒絶できませんでしたが、定期借家契約の登場によって、期間満了を以て契約の終了を主張できるようになりました。
ただし、定期借家契約は、その契約を定期借家契約たらしめるために、従来の賃貸借契約とは異なる手続きを必要とします。
その手続きとは、
<1>定期借家契約は、公正証書等の『書面』によって契約しなければならない。
<2>定期借家契約は、その締結前に、「この契約には更新がなく、期間の満了により終了する」ことを、書面を交付して説明しなければならない。
<3>定期借家契約は、契約期間が1年以上の場合、期間満了の1年~6ヶ月前までに、借り主に対して契約が終了することを通知しなければならない。
以上の3つです。
期間満了の通知が遅れた場合、契約終了は後ろ倒し。
今回の相談で問題になっているのは、<3>の期間満了の通知についてです。
この通知は、1年未満の契約であれば不要ですが、契約期間が1年以上になる場合には、上述の通り期間満了の1年前~半年前までに通知しなければなりません。
この通知をうっかり忘れてしまうと、借主に対して主張できる契約終了日がそのまま後ろ倒しとなる可能性があります。
たとえば、何らかの理由で借主が契約の終了を拒んでおり、当該契約の終了通知が”うっかり”によって3ヶ月遅れてしまった場合、たとえ契約書記載の期間満了日が到来しても、借主は終了通知が遅れた3ヶ月ぶん後ろまで、契約の継続を主張できてしまうのです。
(もちろん、借主が契約の延長を希望しなければ既定の契約満了日で契約を終了して構いません。また、万一延長となった場合でも、延長された契約期間分の家賃は発生します)
例で考えてみましょう。
とある契約の期間満了日が2016年7月31日だった場合、期間満了の通知は(2015年8月1日から)2016年1月31日までに行なわなくてはなりません。
もし通知が3ヶ月遅れの4月30日になってしまったとしたら、賃借人もまた契約終了までに3ヶ月間の猶予を得ることになります。
賃借人は本来の7月31日ではなく、10月31日までの契約期間延長を主張できてしまうのです。
期間満了通知は、書面でなく「メール」でも可。
では、その通知方法はどうでしょうか。
皆さんの中には、『1年前~6ヶ月前まで』という限定された期間にいちいち手紙を送るのは面倒だから、電話で済ませてしまいたいという方もいらっしゃるかもしれません。
借地借家法第38条を見てみると、期間満了通知について「通知」との記載はありますが、「書面で」との記載はありません。
つまり、必ず書面で行う必要はないということです。電話などでの通知であっても立派な「通知」として認められます。
しかし、電話などの「口頭」の場合、揉めた際には言った言わない問題となり、間違いなく言った(つまり「通知」した)と証明することは困難になるため、実務上は書面で行う方が望ましいと言えます。
もうひとつお勧めするのが「メール」という手段です。送信履歴が残るため、普通郵便で書面を送るよりも「通知した」という証拠能力は高いと言えます。
開封確認通知を設定して開封を確認することができれば、手軽でありながら書面よりも望ましい期間満了通知となります。